銀河英雄伝説(英題:Legend of Galactic Heroes)


† アニメ 作品紹介 †
ジャンル登場キャラクタ :声優
SF

ミリタリー
ラインハルト・フォン・ローゼングラム:堀川亮
ジークフリード・キルヒアイス:広中雅志
ヤン・ウェンリー:富山敬
フレデリカ・グリーンヒル:榊原良子
ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ:勝生真沙子
アレクサンドル・ビュコック:富田耕生
ウォルフガング・ミッターマイヤー:森功至
オスカー・フォン・ロイエンタール:若本規夫
パウル・フォン・オーベルシュタイン:塩沢兼人
ユリアン・ミンツ:佐々木望
ワルター・フォン・シェーンコップ:羽佐間道夫
ダスティ・アッテンボロー:井上和彦
ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ:納谷悟朗
ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム:大塚周夫
ナイトハルト・ミュラー:水島裕
アンドリュー・フォーク:古谷徹
アレックス・キャゼルヌ:キートン山田
アンネローゼ・フォン・グリューネワルト:藩恵子
エルフリーデ・フォン・コールラウシュ:富沢美智恵
カーテローゼ・フォン・クロイツェル:三石琴乃
バグダッシュ:神谷明
カール・グスタフ・ケンプ:玄田哲章
ハインリッヒ・ランベルツ:山口勝平
ムライ:青野武
ウルリッヒ・ケスラー:池田秀一
カール・ロベルト・シュタインメッツ:石丸博也
チュン・ウー・チェン:大塚明夫
エミール・フォン・ゼッレ:置鮎龍太郎
オフレッサー:郷里大輔
アドリアン・ルビンスキー:小林清志
カスパー・リンツ:小杉十郎太
オリビエ・ポプラン:古川登志夫
ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ:山寺宏一
原作
田中芳樹
監督
石黒昇




 宇宙暦8世紀、人類は宇宙において3つの勢力にわかれていた。銀河帝国と、 それに反旗を翻す自由惑星同盟、その両者の中間にある貿易国家フェザーン自治領 である。微妙なバランスを保っていた3つの勢力は、帝国に出現した天才戦略家 ラインハルトによって、今崩されようとしていた。彼は2万隻の艦隊を率いて 遠征の途に上ったが、それを迎える同盟軍の中に彼の終生のライバルとなる ヤン・ウェンリーがいた。2人はアスターテにおいて始めてその智謀を競うが ・・・。


† アニメ 作品レビュー †
 非常に壮大でリアリティ溢れるスペース・オペラ。未見の人には、未来版三国志と言えば 伝わり易いかな?
 このアニメ、何が素晴らしいかというと、まず原作の長編小説本編10巻外伝4巻の内容を かなり忠実に映像化していること。大抵の小説のアニメ化だと、製作者が手を抜きたいためか 話をがんがん端折ってしまいがちだが、この作品はそれがほとんどない。非常に多くの登場人物の 面白い掛け合い、激しい議論、深い考察などの会話、独白で視聴時間が埋め尽くされ、終始飽きさせない。 田中芳樹原作の小説はこの銀河英雄伝説のアニメ化成功を皮切りに次々とアニメ化したが、他作品の場合、 退屈な間を挿入したり、原作にないショボいエピソードを盛り込んだりでほとんど失敗していると 思う。製作スタッフが、田中芳樹小説の魅力を余すことなく引き出せている。
 次に素材の良さ。田中芳樹小説の作品はどれも面白いが、この銀河英雄伝説は中でも格別。 後にサヨク思想に毒されていく著者だが、この頃はまだかなりましだった。学生時代に 小説・銀河英雄伝説にはまったものの、今では著者と考えが合わない部分も出てきている。 しかし、未だにこの作品に魅力を感じるのは主人公が自分の正義を常に疑い、考え抜き、 悩みに悩む姿勢にある。帝国側の主人公ラインハルトは強大な権力の階段を上り詰めて いくも、奇麗事の通じない世界で常に葛藤を強いられていく。同盟側の主人公ヤンは、 単なる批判屋に堕せず、与党精神を持ち続け、自他の存在や行動の歴史的意義を 深く考察していく。語りつくせないほどの戦争ドラマ、考察材料が溢れている。 一例を出すと、『最良の専制政治と最悪の民主政治(衆愚政治)、どちらが望ましいのか?』。 全体的にやたら説明口調なアニメになってしまっているがしょうがない。視覚よりも、 言語で楽しく魅せるアニメなのだから。
 最後にドラマ、エンターテイメントとして秀逸な点。戦闘シーンは外交レベルの 駆け引きから始まり、戦略レベル、戦術レベルでの優劣が競われ、勝敗に至るまでの原因と結果が しっかり描写されている。アニメ、映画などを含め、ここまで本格的に戦争を描写された例を私は 知らない。他のミリタリー作品は外交駆け引きのみ、戦術の駆け引きのみにスポットを 当てるが、この作品は戦いの大義、補給、人員、艦隊数、人材、地の利など、戦闘を 有利にするための状況を如何に作るかが虚虚実実を交えて展開され、非常に知的で 面白い。戦闘だけでなく、帝国側では宮廷闘争、新旧派閥争い、謀反、傀儡政権樹立、 暗殺事件などの政治的駆け引き、同盟側では選挙のプロパガンダ合戦、軍クーデター、 査問会などの混乱が次々と発生。それに、宇宙の覇権を経済的に実現しようと目論む フェザーン自治領、宇宙の制覇を宗教で実現しようと画策する地球教徒達など、第3者も 絡んできて、混乱は加速する。歴史では埋もれてしまいがちのキャラにスポットが 当てられ、弁務官事務所にスパイとして潜入する商人のエピソード、皇帝を誘拐して 亡命政権を樹立しようとするヒロイズムに酔いしれた詩人のエピソードなど、 利用されるだけの脇役の嘆息、挫折の描写がメインストーリーに華を添える。著者の 豊富な知識によるところ大だが、話の展開がこれほど広い物語は今後他に出ないんじゃ ないだろうか。
 ヤンの精神論、国家観で突っ込みたい所があったり、ラインハルトが死ぬあたりで ナレーターの余計な一言が多いことがマイナスだが、微々たる粗だ。評価は迷わず Sランク。
評価 執筆者 カンガルー【04/08/08掲載】


戻る