キノの旅 -the Beautiful World-(英題:Kino's Journey)


† アニメ 作品紹介 †
ジャンル登場キャラクタ :声優
アドベンチャー キノ:前田愛
エルメス:相ヶ瀬龍史
師匠:翠準子
原作
時雨沢恵一
脚本
村井さだゆきを
監督
中村隆太郎




 世界は美しくなんかない。そしてそれ故に美しい。
 だから僕は、旅を続ける・・・。
 美しく、愛らしい世界、その全てを見るために、旅を続ける人間キノと言葉を 話す二輪車(モトラド)のエルメス。
 1つの国に滞在する期間は3日間。
 その間に、2人はその国の本当の姿を知ることになる・・・。


† アニメ 作品レビュー †
 ちまたでの評価が非常に高く、何気にDVDでレンタルしたのだが、これは面白い。
 絵柄が童話っぽく、雰囲気がほのぼのとしていそうだが、中々シビアで毒のある風刺ネタが多い。星新一や 筒井康隆のショートショートのように、読み進めることで心に残る何かが必ずある。1話完結の短編として どれも完成度が非常に高い。ストーリーの概要は、主人公キノがモトラドという種類のしゃべる二輪車 エルメスで旅をし、様々な歴史的経緯をもった国々を訪れるというもの。1つの国に滞在するのは3日。 この3日間が1話で語られる。
 機械文明が発達し、機械だけしか存在しない国。多数決の行き過ぎで少数派の粛清がはびこり、生き残りが 1人しかいない国。「世界がもうすぐ滅びる。」と国民全員が信じる国。戦争が全くなくなり、一見平和な 国。法の矛盾、社会の不条理、様々な会話やアクシデントから深い哲学性が感じられる。誰もが親しみ易い テーマばかりだが単純な勧善懲悪ものは一切ない。寓話的でシニカルな逸話と、あっと驚かせるオチが度々待ち 受けているので、毎回非常に期待させられる。そして見事に期待に応えてくれる。
 昔で言えば似たような話に「銀河鉄道999」があるが、あれと決定的に違うのが主人公が強く、常識を わきまえていること。999の鉄郎は弱そうで本当に弱く、後先を全く考えないアホだが、「キノの旅」 主人公の一見華奢な少女キノは滅茶苦茶な強さでピンチらしいピンチは特にない。
 更にキノは「郷に入りては郷に従え。」という格言の意味深な部分を本当によくわきまえている。旅人と して出会った人や国にあまり干渉せず、傍観者として振舞う。作者の伝えたいメッセージもいろいろある だろうが、キノの態度は決して押し付けがましさがない。一見正しいことのように思える常識も、矛盾を はらんでいたり行き過ぎれば害毒になることなどを考察材料として提示していく。誇張して、分かり易く、 面白く、淡々と。
 また、キノは平凡なようでいて自分の身に危険が迫れば躊躇無く銃やナイフで相手を瞬殺。自分が生き延びることを 第一に。このキノの姿勢に対し、奇麗事を並べて批判することほど残酷なことがあろうか。このたくましさが なければ放浪の旅など出来ない。こういった徹底した自己防衛のリアリズムを、非力っぽい少女が貫徹して くれる痛快さも良い。
評価 執筆者 カンガルー【04/08/31掲載】


戻る