新機動戦記ガンダムW(英題:New Mobile Report Gundam Wing)


† アニメ 作品紹介 †
ジャンル登場キャラクタ :声優
SF
ロボット
ヒイロ・ユイ:緑川光
デュオ・マックスウェル:関俊彦
トロワ・バートン:中原茂
カトル・ラバーバ・ウィナー:折笠愛
張五飛:石野竜三
ドクターJ:稲葉実
プロフェッサーG/サダウル司令:藤本譲
ドクトルS:大滝進矢
H教授:田口昂
老師O:広瀬正志
トレーズ・クシュリナーダ上級特佐:置鮎龍太郎
レディ・アン一級特佐:紗ゆり
ゼクス・マーキス二級特佐/ミリアルド・ピースクラフト:子安武人
ルクレツィア・ノイン上級特尉:横山智佐
メーザー技師:関智一
ヒルデ・シュバイカー:荒木香恵
アレックス/ギンター・セプテム:難波圭一
ミューラー:草尾毅
ノベンタ元帥:藤原啓治
サリィ・ポォ医療情報部少佐/ドーリアン夫人:冬馬由美
デルマイユ侯爵:加藤治
ツバロフ技師長:幹本雄之
ウェリッジ侯爵/カトルの父ウィナー/タウンゼント伯爵:有本欽隆
ドロシー・カタロニア:松井菜桜子
ラシード:中田和宏
アブドル/オットー/ニコル:森川智之
リリーナ・ドーリアン:矢島晶子
ナレーション/ドーリアン外務次官:大塚明夫
原作
矢立肇
富野由悠季
脚本
池田成
隅沢克之
面出明美
千葉克彦
川瀬敏文
監督
池田成




 アフターコロニー(A.C.)001年、人類は新天地・宇宙に進出し、宇宙コロニーの建造を始めた。最初のコロニーが完成 するのに100年もの月日を要し、その間も地上・宇宙では紛争が絶えなかった。宇宙に進出した人々は、地球圏統一連合の支配を 受け、搾取される日々が続いていった。
 A.C.165年、コロニーの住民は連合に対する不満を蓄積させていた。この事態を憂慮し、宇宙では非暴力・非武装主義者の 平和主義者ヒイロ・ユイが代表に選抜される。彼はコロニーや地球の各国に平和を説いて回り、多くの支持者を得るも、A.C.175年、 暗殺されてしまう。彼の死によって生じたコロニー側の混乱と激発は、連合が暴動鎮圧のために組織した武力組織スペシャルズに よって壊滅させられていった。
 A.C.195年、宇宙コロニーに居住する一部の過激派勢力は「オペレーション・メテオ」を発動。地球圏統一連合とその中で 勢力を伸張させている軍事秘密結社OZ(オズ)に対し、5人の少年と5機のモビルスーツ「ガンダム」を地球へ降下させる。 ガンダムは圧倒的な力を発揮し、地上の至る所で破壊活動を開始。その中に、ガンダム「ウィングゼロ」を駆る一人の 少年の姿があった。彼の名は、かつて非暴力・非武装を掲げて平和を説いた男と同じヒイロ・ユイであった。


† アニメ 作品レビュー †
 5人のガンダムパイロットと彼らのライバル的存在であるトレーズ、レディ・アン、ゼクスといった個性豊かな メンツが、合流したり離反したりと、複雑に交錯しつつストーリーが進行ていく。単純な勧善懲悪に収まらない ように、地球圏統一連合→スペシャルズ→OZ(オズ)→ロームフェラー財団→ホワイトファング...と、様々な組織が 台頭と衰退を繰り返す。主人公の属する陣営や搭乗モビルスーツが目まぐるしく変わっていくのも面白い。 予想外の展開が多く散りばめられていたにも関わらず、次回予告でのネタばれも多かったのがやや不満...。

 第一話では、わざわざヒロインの招待状を公衆の面前で破り捨てたり、耳元に『お前を殺す』と囁いてみたりと、 やたらキザな主人公像を印象付けられた。リアルタイム放映時はココで見る気が失せてしまったのだが、 改めて視聴し始めてみると、主人公が単なるカッコつけのキザ男ではなく、自己の揺るぎのない信念を 徹底的に貫く信条だというのが分かり、非常に後悔してしまった。任務遂行の為なら民間人殺害も迷わない。 コロニーを守り抜く為なら搭乗中のガンダムもろとも自爆することもためらわない。任務遂行に 無関係な平和主義者を誤って殺害してしまった贖罪のためなら、遺族一人一人を訪ねて謝罪し、彼らの 罵声や銃口に身を晒すことも厭わない。

 こういった常軌を逸した信念への拘りは、彼の好敵手であるトレーズやゼクスにも見てとれる。 トレーズとゼクスは戦争に美学を見出すことと、平和な世界を求める2面性を持っている。ひたすら敗北し、 守るべき人々から裏切られ、それでも信念を貫き闘い続けるガンダムのパイロット達に対し、トレーズは惜しみなく 敬意を抱く。また、人的被害を一切出さずに戦争できるモビルドールの存在を嫌悪する。戦争から生じる痛み・ 悲しみに臆さず、逃避せず、省みる。その純真過ぎる騎士道精神が故に、『私は敗者になりたい。』などという 突拍子のない台詞がさらりと飛び出す。彼を補佐するレディ・アンは、徹底したマキャベリストとして登場し、 途中から穏健な平和主義も使い分け始め、両極端な二重人格を経て敬愛するトレーズの思想・信条を理解するに 至る。ゼクスは妹・リリーナが目指す完全平和実現のために、あえて戦争を起こす。戦争の悲惨な体験を経れば どんな人間も平和を望む、それ故の戦争であり、自己の保身や勝利に対する拘りは全くない。

 世間知らずなヒロイン・リリーナも同様に常軌を逸した信念があったが、彼女だけはあまり好感が 持てなかった。彼女が掲げる完全平和主義というのは現実を無視し過ぎだし、彼女の場合、防衛力まで全否定した 為に故国を再び滅ぼすことになったので。ただし、作品としては完全平和主義の非現実性をしっかり描写して いたし、戦争の主導権を終始握っていなかった彼女が最終的に世界に平和をもたらす権威としての存在に なったのはなかなか良かったと思う。リリーナは、嫌われ役となって彼女の望んだ平和の糧となったトレーズや ゼクスの真意をどれだけ理解できていただろうか。平和を託された者として、異なる思想を持つ人間に対して 共感とまではいかなくとも、せめて理解して欲しかったところなのだが...。
評価 執筆者 カンガルー【08/03/24掲載】


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