千年女優(英題:Chiyoko Millenial Actoress)
上映時間:87分


† アニメ 作品紹介 †
ジャンル登場キャラクタ :声優
ドラマ
ドキュメンタリー
藤原千代子(少女時代):折笠富美子
藤原千代子(中年期):小山茉美
藤原千代子(老年期):荘司美代子
立花源也:飯塚昭三
井田恭二:小野坂昌也
大滝諄一:鈴置洋孝
鍵の君:山寺宏一
傷の男:津嘉山正種
島尾詠子:津田匠子
原作
今敏
監督
今敏




 記者・立花源也は助手の井田恭二と共に、往年の名女優・藤原千代子の元を訪れる。 30年前に突然銀幕の世界から身を引き、すっかり年老いてしまっていた藤原千代子は、 立花のインタビューに応え、過去に思いを馳せる。
 世の中が第2次世界大戦に突入する最中、女学生だった藤原千代子は思想犯として 官憲に追われていた青年に出会う。自称・絵描きの青年を匿う千代子。怪我を手当てして くれたお礼として、「いつの日か描きかけていた絵画を故郷で書き上げる。見に来て 欲しい。」という約束を交わすが、官憲の厳しい追求のため、青年は直ぐに千代子の元を 去ってしまう。千代子の手には青年が落とした「小さな鍵」が残されていた。
 自分が有名になれば、この初恋の彼にもう一度会えるかもしれない。彼女は女優の道を 選んだ。出演作はどれも好きな人を追い求め、叶うことはない恋愛物語。やがて、自分の 出演作品への回想と彼を追い求めていた現実の日々の回想は重なり合い、やがて溶け合っ ていく・・・。


† アニメ 作品レビュー †
 この作品は芸術性が高いし、アニメならではのアイディアの投入が秀逸。
 かつての名女優だった老婆・千代子が、自分の演技を回想しつつ、愛しい人を 捜し求めた生涯を振り返っていく。回想の中で彼女は戦国時代の姫、旅する女忍者、 満州鉄道の乗客、明治維新、幕末の士族、宇宙飛行士などなど、役柄を様々に 変化させ、舞台も大昔から近未来に向けてめまぐるしく変遷していく。 更に、初恋の人を追い求める過去の自分が役柄にオーバーラップし、虚構と現実を 颯爽と駆け抜ける。インタヴュアーの立花&井田も話に引き込まれたという ことであろうか、回想シーンにちゃっかり登場し、千代子の純真な思いを応援 したりツッこんだりして盛り上げる。こういったアニメの特性を活かしきった アイディアが効果的に取り入れられていてお見事。
 そして物語もいよいよクライマックス!って所で、感動のラストかと思いきや・・・。
 最後の千代子の台詞は、予想外という意味で非常にインパクトがあった。黒澤映画 「蜘蛛巣城」らしきシーンにおいて、老婆(実は年老いた千代子自身?)が千代子に 向かって「お前が憎い、そして愛おしい」と告げる。そして、鍵の君の顔を 全然思い出せなかったりなど、伏線がしっかり張られていたことが後になると 思い至る。女優は女優であるが故に自己を愛せずにはいられない。千代子の最後の 一言が無ければ、確かに素直に感動できていたとは思う。しかしながら、あの一言が 故に、人とはこういうものだろうと達観した作品と言えなくもない。巷では「感動が ぶち壊しだ〜!」との意見もあり、そういった感想も分からないではないが、自分は この意外性も大いに評価したい。
評価 執筆者 カンガルー【04/06/08掲載】


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