† アニメ 作品紹介 † |
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ジャンル | 登場キャラクタ :声優 | |
コメディ ドラマ |
ギン:江守徹 ハナ:梅垣義明 ミユキ:岡本綾 太田:飯塚昭三 母さん:加藤精三 泰男:石丸博也 老人:槐柳二 ミユキの父:屋良有作 医者:大塚明夫 新郎:小山力也 清子:こおろぎさとみ 胡桃沢:犬山犬子 猫ババ:柴田理恵 タクシー運転手:山寺宏一 |
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原作 | ||
今敏 | ||
監督 | ||
今敏 |
ス ト | リ | |
聖夜、様々な経緯を持つホームレス3人組が、ゴミ山の中から捨てられた赤ん坊を 見つけ出す。3人のうち、女子高生のミユキ、元競輪選手のギンちゃんは警察に 届けようとするが、元ドラッグクィーン(※ここで言うドラッグとは、薬のことでは なく、自分を飾り立てて女装した男性のこと)の歌姫ハナちゃんは頑強に反対。 3人は自分達の手で、この子の母親を探し出すことになる。広い東京中を駆け 回る彼らを、様々なトラブルが待ち構えていた。 |
† アニメ 作品レビュー † |
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1 |
社会の底辺を生きるホームレス3人が主人公という風変わりなアニメ。しかも主役を
はる3人は美男美女や熱血腕白少年などではなく、「オジサン、オカマ、普通の女子高生」
というありえないまでに異色な顔ぶれ。同スタッフ作「パーフェクxト・ブルー」「千年女優」も同様
だが、独特のセンスによる楽しい演出の妙は本作でも健在。アニメの特性を生かしたキャラクタの
滑らかなオーバーアクションは見ていて楽しいし、美麗なまでの背景描写は映像表現として妥協が
見られない。くしゃくしゃの一万円札の福沢諭吉の顔が、話の展開によってさり気なく泣き顔と
して見せたり笑い顔として見せたるシーンなどに代表される、工夫を凝らした映像表現には
ほとほと感心させられる。 「俺たちはタダのホームレスだ!アクション映画の主役じゃねぇ!」ギンちゃんはそうたしなめる ものの、捨て子の名付け親(ゴッドファーザー)となった3人は親探しを始める。その後、 ありえないような不幸の数々に巻き込まれていくが、思わずツッこみたく なるご都合主義的な展開で事件は解決されていく。このご都合主義のバーゲンセール状態を 他の凡作だと非難の的にしてしまうが、この作品では善行を行うホームレス達に対する神様の 思し召しなのか、クリスマスの奇跡なのか、赤ん坊・清子に何かあるのか、そういった神秘的な 作用があるかのように感じさせてくれる。ラッキーとアンラッキーが交互にリズムよく訪れて、 それを3人の流れるような掛け合い漫才が盛り上げてくれて微笑ましい。そして、取り戻せないと 思われていた絆が再び結ばれていき、心温まる。 特に欠点らしい欠点が見当たらない名作で、日本の大衆向けアニメは、ジブリ・オンリーでは ないのだと痛感する。 | |||
評価 | A | 執筆者 | カンガルー【04/07/09掲載】 |
2 |
今敏(こん さとし)原作の映画「東京ゴッドファーザーズ」のDVDを観た。色々な人から
勧められるので機会があれば観てみたいと思っていた。 センスがいい。とてもいい。「さりげなさ」がすごい力を持っている。オープニングの スタッフ紹介は東京の町並みに合わせて店の看板・バスやトラックの胴体・のぼりなどに 入れており、とてもユニーク。テーマはおそらく「家族愛」だが押し付けがましも 説教くさくもない。人物が表情豊かで感情移入しやすいのも特徴。主人公3人の ホームレスの1人、猫好き家出少女には特に感情移入できた。 いく先々で都合のいい展開が起こるが、「らんま1/2」を見慣れていた自分にとっては そういうタッチの笑いを自然に受け止めることができた。主人公達が公衆電話を かけているシーンで通行人の殆ど全員が揃って携帯電話でメールを打っていたり、 電車内でホームレス以外の客が揃ってハンカチで鼻を抑えているさりげなさが見事。 アクションもなく淡々としたストーリーが続き、「俺達はアクションスターじゃねぇ。」 と言い、やっぱりこの映画にアクションはないんだと思わせておいて途端に カーチェイスで命がけの追いかけっこが始まるセンスが面白い。 全体的にグレー調の東京が背景なので暗ぼったいカラー。けれどそれが逆に東京の リアルさをよく出している。オヤジホームレスの声は江守徹だがエンドロールを見るまで 彼のイメージを全く感じさせないほど上手かった。オカマ役の梅垣義明も技術のあるいい 演技をしている。映画やドラマにはとかく「結局アレはどうなったの?」と真相が分からず 割り切れないことが多い作品が目立つが、この作品はそれを感じさせず実に後味のいい 終わり方だった。ラストにいくつもの布石をおき、観客に想像の余地を与えているのも よい。悪いことが起きるのもいいことが起きるのも表裏一体なんだという世の中の 仕組みを気づかせてくれる。 スペシャルトラックに収録されていた鴻上尚史と今敏の対談も面白かった。鴻上尚史の 舞台脚本「トランス」も登場人物が男・女・オカマだった事を思い出させる。登場人物は 美少女でもロボットでもない。小汚いホームレスのオヤジやオカマ。そういった 今までにないシチュエーションでストーリーを作りたかったんだとか。 幸せを感じさせてくれる良作。宣伝をあまりしていなかった為か、これだけ面白い作品なのに 知名度が低いのはもったいない。 | |||
評価 | S | 執筆者 | 飼い主【04/07/26掲載】 |