横山光輝三国志


† アニメ画 作品紹介 †
ジャンル登場キャラクタ :声優
歴史 劉備玄徳:中村大樹
曹操孟徳:松本保典
関羽雲長:辻親八
張飛翼徳:藤原啓治
諸葛亮孔明:速水奨
孫策伯符:中原茂
孫権仲謀:飛田展男
超雲子竜:小杉十郎太
貂蝉:折笠愛 呂布奉先:矢尾一樹
周喩公謹:石塚運昇
ナレーション:小川真司
原作
横山光輝
監督
奥田誠治




 西暦180年、宦官や外戚の悪政によって後漢王朝は乱れきり、急速に衰退していった。
 それに呼応して、黄巾族とよばれる太平道教徒が台頭し、略奪を繰り返していた。「黄巾の乱」で ある。この黄巾の乱により、様々な英雄が歴史の表舞台に登場する。漢王朝に黄巾族を鎮圧する 力は既になく、各地の群雄が黄巾党討伐の功を競っていく。曹操、孫堅、董卓、袁紹、何進・・・。 そして、中山靖王の末裔を名乗る劉備の姿もあった。彼の人徳に惹かれた豪傑の関羽、張飛は 劉備と義兄弟の契りを交わし、世を乱す黄巾党の討伐部隊を組織。漢王朝のため、義勇軍として 戦場に身を投じる。


† アニメ 作品レビュー †
 原作は漫画界の大御所、横山光輝原作コミック「三国志」全60巻。三国志の入門書と してこれほど適切な媒体はない。低年齢層にも配慮した分かり易い表現で三国志の要点を しっかり抑えつつ、長大な物語を描ききるという並みの漫画作家には出来ないことをやり 遂げている。今でこそ三国志の研究書は世に溢れているが、資料の少ない連載当時、相当 苦労したことを連載終了後に作者当人ももらしている。横山光輝は小説を読まない層に 歴史の面白さを広めてくれた先駆け的存在だと思うし、現代の日本人を多数、三国志 マニアにしてしまった作家であることは疑いの余地は無いと思う。

 原作は「吉川英治」の小説版三国志などがベースとなっており、その小説は三国志演義が 元になっている。三国志演義は正史ではなく、民間伝承された様々なエピソードを明の 羅漢中がまとめたもの。民間伝承で劉備を善玉、曹操を悪玉に仕立てて人気が出てしまった ため、中国の三国志は劉備が善、曹操が悪という勧善懲悪的人物像が一般的。君子や親を 篤く敬う儒教的な思想背景が色濃い中国人にとって、漢王朝再興に燃える劉備の活躍は 受けが良かったためだろう。吉川英治や横山光輝は善悪二元論を拝し、独自の解釈を加え、 劉備も曹操も人の上に立つ違った魅力を持った人物として味わい深く描いている(ただし、 同一人物が複数回死んでしまったり、同一人物がしばらくして別の顔になってしまったりと いったミスがあるが・・・)。

 アニメ化できたのは残念ながら赤壁の戦い(コミックの26巻)までであったが、キャラ デザインや演出は上手くリファインされ、漫画の雰囲気が良く出ていたと思う。原作の 改変(序盤の桃園の誓い、茶を母に献上するエピソード、劉備が命を救った芙蓉姫(後の 劉備の妻)の登場がカットされ、劉備が序盤に助けた幼女が後に劉備の妻になる エピソードが追加)は納得いかなかったが。原作で連載の都合上省略されてしまった 「官渡の戦い」をやってくれたのは嬉しかった。だが、「官渡の戦い」を諸葛孔明が 見届けるというありえない改変は納得いかなかった。


 巨匠横山先生は、火事で亡くなってしまった・・・。もっといろいろな名作を世に送り 出して欲しかった。関羽を失った劉備のような心境だ。謹んで、ご冥福をお祈り申し上げる。
評価 執筆者 カンガルー【04/07/18掲載】


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