夏も終わり、今は秋

制服も長袖になってまたバーベナ学園の雰囲気が変わりました

特に葉が散り始めた木々や夕暮れの訪れの早さが季節の移り変わりを感じさせてくれます

でも、今年は少し違います

季節の移り変わりのように、私達にも変化がありました

想いを素直に伝えられる関係に…

小さな変化のある変化の無い日常…

私達の幸せの形…

でも、今日は特にびっくりする変化がありました…

 

 

私の1日

楓 ストーリー

written by ruiford

 

 

 

その出来事は朝、突然起こりました

朝6時半に起きます

それが私の日課となっています

朝早く起きて、稟くんとリムちゃんのお弁当を作ります

今日もそのつもりでした…

「お、楓おはよう」

「楓、おはよう」

「……りん……く…ん?」

リビングに入ると稟くんがエプロンをつけて立っています…

リムちゃんも同じように…

え…?

どう…して…?

ゆ、夢でしょうか…?

私は目の前の出来事が信じられなくて頬をつねる

「ダメだな、楓は。朝はおはよう、だぞ?」

「あ…おはよう…ございます……」

いたいです…

夢じゃないです…

「じゃあ座っててくれよ」

少し寝ぼけていたようでよくわかりませんでしたけど…

ようやく私の頭が回り始めてくれました

@稟くんがエプロンをつけてる

Aキッチンに立ってる

B朝ごはんが何故かもう並べられてる

これらから推測できるのは…

私が一番して欲しくない事で…

「り、稟くんっ!! な、何してるんですかっ!!?」

「ひ・み・つ♪」

稟くんは私の方を振り向いてニカッと笑いました

「稟、気持ち悪い」

「こ、こらプリムラっ!?」

失礼ですけど……私も少し思ってしまいました…

ごめんなさい、稟くん…

「そ、それよりもそれは私の仕事ですっ!!」

稟くんのお世話は私の全てなのに!

私の1日は稟くんのお世話に始まって稟くんのお世話に終わるのに!!

「私から生きがいを取らないでくださいっ! 私が全部しますから!」

私は必死に叫びます

仕事を失う事は私にとって傍にいるなと同じ意味なんです!

「俺は別に何もしてないぞ?」

「え?」

稟くんは平然と言います

何もしてない…?

「私が……作った」

「リムちゃん?」

え、リムちゃんが?

「片付け…出来なかったから…稟起こした」

じゃ、じゃあこの朝ごはんは…

「偉いだろ。プリムラが全部作ったんだぞ」

お味噌汁…ご飯…玉子焼き…

いつも私が作ってる朝ごはんです…

リムちゃん…こんなに上達してたんですね…

「で、でもそれなら私を起こしてくれれば…」

「稟、起こしたかったから…。それより…楓、食べる」

冷静な表情のままリムちゃんはいつもの席に座ります

「ほら、せっかくプリムラが作ってくれたんだ。早く食べようぜ」

「は、はい……」

でも…

稟くんのお世話出来なかった事が悲しいです…

 

 

 

 

確かにリムちゃんのご飯は美味しかったです

稟くん好みの味になってるのは私のせいですね

リムちゃんは褒めてあげるととっても可愛らしい笑顔を見せてくれました

ほんとにリムちゃんが家族で嬉しいです

 

 

 

「じゃあ行くか」

ご飯も食べ終わって、みんな準備が出来たので学校に行きます

「楓、お弁当」

「今日はごめんね、リムちゃん」

リムちゃんにお弁当まで作られちゃいました…

今日はまだ何もお仕事をしてません…

だからか何だか落ち着きません…

「楓、行くぞっ」

「あっ、はい!」

慌てて稟くんとリムちゃんを追いかけます

そして私達は3人で学園に行きます

 

 

 

 

 

学園についても私は何だか落ち着きません

もう3時間目が始まる時間ですが、変わりません…

どうしよう…

「楓、どうしたの!?」

「え…どうかしましたか?」

席に座ってぼーっとしていたら急に麻弓ちゃんに声をかけられます

「手! 震えてるじゃない!?」

「あ…」

本当です…

気付きませんでした…

「楓、寒いのか?」

でも、稟くんを見て思い当たります

「稟くんのせいです…」

「え!? お、俺何かしたか?」

「ほほぅ♪ 昨日はお盛んだったようで♪」

麻弓ちゃんがニヤリとズズイとカメラ片手に稟くんに詰め寄ってます

何か…とてつもない誤解が生まれてしまったようです…

でも…稟くんと私の事ですし…

べ、別にいいです…よね……

恥ずかしいですけど…

「ま、まさか稟様と楓様が…」

「神界は一夫多妻制…神界は一夫多妻制………。まだ終わってないもん終わってないもん……っ!」

「稟、銀河の彼方まで飛んでみるかい?」

「ま、待て樹! 誤解だっ!!」

稟くんは必死で否定していますが、周りが逃がしてくれなさそうです…

そ、そろそろ言った方がいいですよね…

稟くんに危害が加わる前に…

「稟くんがお世話をさせてくれないからです…」

「え…!?」×クラス全員

クラスの喧騒が一瞬で止まります

みんな私に注目してます…

「今朝、稟くんがお世話させてくれなかったからです、きっと」

「ふむふむ。楓は土見君成分…略して稟分が取れないと禁断症状が出るほど躾けられてると♪」

「そ、そんなアホな…」

いいえっ!

そのとおりですっ!

私は稟くんのお世話が出来ないと死んじゃう生き物なんですから

「羨ましい限りだね、稟」

「血涙流しながら笑うのを止めてくれ、樹…」

何とか騒動は不発で終わってくれたようです…

 

 

 

時間が進むのは早いものでもうお昼です

「え〜!? 今日はリムちゃんお手製なの!?」

「ああ」

「頑張った…」

何故か稟くんが誇らしげにしているのがおもしろいです♪

いつものように屋上にみんなで集まります

ランチタイムです

いつもなら楽しみな時間ですが、今日はそうでもありません…

稟くんが喜んでくれるかな…とか

美味しいって言ってくれるかなって楽しみにしてるのですが、今日は私がお弁当を作ったのでは無いので…

「味見していい?」

「あっ、私もっ!」

みんなでリムちゃんのお弁当をつついてます

でも、朝ご飯よりも形が崩れてる気がしてますけど…

時間が無かったのでしょうか…?

「おいし〜っ♪」

「羨ましいです…」

「リムちゃんやるわね」

「いや〜っ、プリムラちゃんの弁当が食えるなんて!!」

みんな美味しいって褒めてくれます

何だか教えた私も嬉しくなっちゃいます

「楓。楓も食べる」

え?

リムちゃんはごく自然に私に早く食べるように催促します

「わ、わかりました」

私にも感想が欲しいのでしょうか…?

おかずを一つお箸にとって口に運びます

その様子を稟くんとリムちゃんがジッと見つめています

…もぐ

……え…?

この………味…あの時の…っ

「………っ…稟…くん…」

私は稟くんの方に振り向く

そこには苦笑してる稟くんがいます

「やっぱ…ダメか?」

「…ダメですっ!!」

必死で声を出します…

驚きでうまく口がうごきません…

周りは何事かとびっくりして私達を見つめてます

「……いや…もう忘れてると思ったのにな…」

「忘れるわけ…ありません…っ!」

涙がぽろぽろと溢れてきます…

また稟くんの嘘をただ信じてしまったから…

それが悲しくて…

でも、嬉しくて…

すっごく嬉しくて…

「ど、どういうこと? 土見君」

「いや〜…いっつも家の事全部やってくれるからさ…たまには俺も手伝おうと思って…」

「これ、私作ってない」

「えっ!? え? どういうことリムちゃん!?」

「これ、稟が作った。私が作ったの朝ごはんだけ…」

 

「「「「え、ええ〜〜〜っ!!?」」」」

 

この味を忘れるわけがありません…

稟くんが……

たった1回だけ…

私のために作ってくれた時の味……

昔、私が風邪で熱を出したときに作ってくれた…

手にいっぱい怪我しながら…

慣れないのに…

一生懸命作ってくれた…

忘れるわけが…無いです…

あんなに嬉しかったんですから…

「楓、うまいか?」

稟くんは微笑んで優しく訊ねます

「……とっても……美味しい…です……。こんなに…美味しいの……初めてです………」

涙が止まらない…

稟くんが…私の為に作ってくれたお弁当なんですから…

美味しくないわけがないです…

「昔は楓が風邪引いたりしてもシアや亜沙先輩に頼れなかったんだよ…。だから一回だけ俺が飯を作ってやったんだ……」

稟くんは遠い空を見つめます…

………

……

 

 

 

どうする…

楓が熱出すなんて事故の時以来だぞ……

俺は飯作れないけど…

そうも言ってられないよな…

何とか頑張って作ってやるか…

……

………

…………

 

コンコンッ…

 

「楓、起きてるか?」

「ごほっ…稟…くん……」

辛そうだな…

「飯、作ったぞ」

「え!? り、稟くんがっ…!? ごほっ…!」

「無理すんな。病人は素直にあまえとけ」

俺は楓の背を摩ってやる

「で、でもっ!?」

「………病気をされたままなのは迷惑だ。だから、早く治してくれ」

「…………はい」

楓はすごく悲しそうな顔をしたが、仕方ない…

こうでも言わないと楓は自分を責め続ける…

「ほら…」

俺は適度に冷まして楓の口に運んでやる

「稟くん……傷だらけです……」

あ!?

しまった…指に絆創膏張ったままだった…

「き、気にすんな。それより、ほらっ」

ちょっと無理矢理気味だけど食べさせる

「……おいしい…」

「よかった…」

はぁ〜……緊張したって…

不味すぎたらどうしようかと思った…

「……ふっ…うう…」

「楓!?」

楓は急に泣き出した

や、やっぱり不味かったか…!?

「ごめんなさい……私……」

「ごめん、やっぱ不味かったか…」

「ううん! そんな……こと…無い…です…。美味しくて……すっごく美味しくて……」

 

 

……

………

…………

「そのときはホントにどうしようと思ったよ…」

稟くんが全部を言い切る頃には私もようやく落ち着く事が出来ました

「そんな過去があったんだ…」

「うう〜……カエちゃん…羨ましすぎッス〜!! 私も風邪を引くっ!!」

「し、シアちゃん……」

リンさんが必死で止めていますがシアちゃんは今にも水を被りに行きそうな勢いです…

「やっぱ、たまには恋人として何かをしてあげたかったと言うわけだ」

「あ、ありがとうございます…。でも、もうしないで下さいね。私は稟くんのお世話が出来ないと死んじゃう生き物なんです」

嬉しかった…

本当に嬉しかった…

でも、まだダメです

まだ…

稟くんのお世話が出来るというポジションを離れたくないですから…

だから…

「愛しています。だけど、お世話はちゃんとさせてください。稟くん♪」

「………いつか無理矢理にでも俺がしてやる」

「ダメですっ。稟くんに家事はさせてあげません♪」

今日は…

本当にいい日でした…

ありがとう稟くん…

ずっと傍にいさせてください♪

 

 

 

 

夕暮れの教室…

外の葉は全く無い…

冬の季節…

「ふっふ〜ん♪ いいものが見れたのですよ〜♪♪」

でも〜

これは流石にかわいそうなので、素直に机の中に入れておいてあげるのですよ

もう、楓ったら…

日記を落とすなんてもっての他なのですよっ

でも、ま…

日記の中は稟くん、稟くんって…

ほんと嬉しそうに書いちゃって…

じゃ、からかえるネタが出来たことだし

帰るとするのですよっ♪

いつにもない上機嫌で麻弓=タイムは木枯らし吹く空の下を帰っていった

 

 

 

〜fin〜

 

 

後書き

ライ:楓SSですが……やばい…徐々に書けなくなってきてる…

オリジナルにするとうまくいかなくなるっていうヤバイ状態です…

どうしよう…

って事で内容の後書きに…

最後の最後で一転させてやりました(笑)

これでタイトルの意味がわかりましたよね?

楓の日記より抜粋って言う話にしたかったのでこういう形をとらせてもらいました

稟くんの楓に対する想いをかけてたら成功ってことで…

時間軸は日記内は秋の出来事(和解した後)。

そして、最後はその後の冬の放課後となってます

わかりにくい技法ですいません

でも読んで下さった方々、ありがとうございました