Φなる・あぷろーち SS

 大進展!? 愛と波乱のスキー旅行 〜 明鐘編 Part.2 〜

                         震天 さん


 形は違うとはいえ、なんか、既視感(デジャヴ)が……。
 でも、前にこうなった時も思ったけど、明鐘の奴、本当に綺麗な身体だよな……。

  明鐘  : に、兄さん……?
  涼   : え……?
  美紀  : 筋金入りのシスコンだと思うんだけど。
  笑穂  : 仕方ないだろう。女の私が嫉妬するほど綺麗な身体なのだからな。
  あやめ : しかも、自分が見つめていた事すら気付いていないのでは?

 ……なんか、フォローされてるのかされてないのかよくわからんが、この状況は
まずい気が……。

  涼   : お、俺……先に上がるよ。
  明鐘  : う、うん……。
  美紀  : 逃げた。
  笑穂  : 逃げたな。
  あやめ : 逃げましたね。

 この状況で逃げる以外に選択肢があるとでも?

  美紀  : ところで、さっきから随分大人しいけど、大丈夫、西守歌ちゃん?
  西守歌 : 私のことは眼中にないんですね、よよよ……。
  笑穂  : まぁ、それは良いんだが……泣き真似をしながら水原の後をつける
        のはどうかと思うぞ?
  涼   : って、お前はなにを考えているんだ?
  西守歌 : そんなの、涼様をたぶらかす算段に決まってますわ。私の計算とし
        ては涼様の視線を私の裸体に釘付けにして、理性がなくなった涼様
        とあんな事やこんな事を……って、涼様!?

 勝手に自分の世界に入っていく西守歌を放って置いて俺は風呂から上がる事にする。
 もう反論する気が起きん。



 風呂から上がってゲームコーナーに逃げ込んだ俺はただただゲームをするしかな
かった。
 なんせ、なにかしてないと脳裏に浮かんで来るんだよな……あれ(明鐘の身体)が。

  涼   : ……あ。
  西守歌 : ゲームオーバーですわね。
  涼   : のわっ!?

 いつの間に……。

  西守歌 : 涼様、そろそろ夕食の時間ですわ。
  涼   : あ、あぁ……。
  西守歌 : あの……そこまで距離を取らなくてもいいと思うのですが……。
  涼   : 気配を消して近づくな。
  西守歌 : 邪魔をしないようにしただけですのに。
  涼   : ……まぁいい。飯だったな。早く行こうぜ。
  西守歌 : ……よろしいんですか?
  涼   : 何がだ?
  西守歌 : 明鐘さんは妹ですよ。
  涼   : ……腹が減った。さっさと行くぞ。

 西守歌の質問には答えず、西守歌を置いて先に行く。
 ……西守歌に言われなくても、それくらいわかっている。
 わかっているからこそ、俺は逃げるしかなかった。



  美紀  : 遅い!
  涼   : ……はい?

 レストランに入った途端、美紀の怒鳴り声が出迎えてくれた。

  美紀  : あんたねぇ……私にとってこの旅行での最大の楽しみ、なにかわか
        る?
  涼   : スキーじゃなかったのか?

 俺の答えを聞くや否や、俺の浴衣の襟首を掴んで思いっきり前後に揺さぶりなが
らこう叫んだ。

  美紀  : 色気より食い気の私にそんなものが楽しみなわけないだろう!
  涼   : わ、わかったから……ギブ、ギブ!
  美紀  : おっと、つい力が……。

 我に帰ったように襟首を離してくれる。
 しかし、そんな事を堂々とこんな所で力説するなよ……。

  明鐘  : 大丈夫、兄さん?
  涼   : あ、あぁ……ったく、やるならもう少し手加減しろよ。
  美紀  : いやぁ、お腹空くと手加減できないんだよね〜♪
  涼   : 膨れててもしないだろ……。
  美紀  : なんか言った?
  涼   : いえ、別に……。

 いつ覚えたのか、ハルに近いものがある凄みで睨んできた。
 こんな風に睨まれたら何も言い返せないじゃないか。

  笑穂  : まぁまぁ、守屋。これで全員揃ったんだ。お待ちかねの豪勢な食事
        だぞ。
  美紀  : おぉっ! 待ってました♪
  涼   : 注意がそれたな。サンキュ、お嬢。
  笑穂  : 元気な幼馴染を持つと苦労するな。
  涼   : 一夜あれと一緒に過ごすか? 俺の苦労がわかるぞ。
  笑穂  : それもよさそうだな。それはお前の頑張り次第だろうけど。
  涼   : は?

 お嬢は俺の肩を一度だけ叩いて席に向った。
 俺がお嬢を目で追いかけると、後からなにやら薄気味悪い空気を感じたような気
がした。

  明鐘  : どうかしたの、兄さん?
  涼   : ……明鐘、物は相談なんだが……。



 テーブルにつき、料理が来ると美紀の目が輝きだした。
 分かりやすい奴……。

  西守歌 : では、食事をしながら部屋割りの事を決めましょうか♪
  美紀  : 私はどうでも良いから勝手に決めて。先に食べてるね♪
  笑穂  : で、君は水原と同じ部屋になりたいと?
  西守歌 : 当然です! そして、一夜を共に過ごした私と涼様は切っても切れ
        ない絆で結ばれ、そして……!
  涼   : ……って言う部屋割りが一番平和だと思うんだ。
  あやめ : 確かに、身内の人をかためるのは良いですけど、陸奥さんたちは良
        いんですか?
  笑穂  : 私は構わないが。
  美紀  : 笑りんと一緒ならなにも文句ないわよ。
  明鐘  : じゃあ、これで決まりだね。西守歌ちゃん、決まったよ?
  西守歌 : はい? 
  美紀  : 話し合いによる平和的解決で、西守歌ちゃんは私と笑りんと同じ部
        屋になったわよ。
  西守歌 : そんな〜! 私の意見は?
  涼   : そんなもん、全面的に却下だ。お前の意見を取り入れると混乱する
        からな。満場一致でお前を無視する事にした。

 と言っても、ハルは勝手にすればいいと言って話し合いには全然干渉しなかった
し、百合佳さんは最後まで西守歌の意見を少しでも聞いてやるべきだと言っていた
けど。

  笑穂  : しかし、彼女はお前の家族も同然なんじゃないのか?
  涼   : いきなり部屋を繋げたり、絞め落としたり、薬を盛ったり、脅した
        りするような奴は俺の家族にはいない。
  あやめ : 全部当てはまっている以上、水原さんと一緒の部屋にはなれないで
        すね。
  西守歌 : 私の生き方を全面否定された気分です……。
  涼   : したんだよ。

 珍しくへこんでいる西守歌を無視して、食事を続ける。
 案の定、同情を買おうとしたらしいが、誰も相手にしてくれないので、さっさと
自白していつも通りの振る舞いで食事を再開した。



  明鐘  : なんか久しぶりだね。兄さんと二人だけで過ごすのも。

 食事が終わり、部屋に戻った明鐘はベッドに座ってそう呟いた。

  涼   : あのバカが戻ってきて、いきなり部屋を繋げて。また賑やかになっ
        たからな。
  明鐘  : 西守歌ちゃん、全然変わってないよね。
  涼   : あれが改心すれば、少しは可愛げがあるんだろうけど、元々の本性
        を知っていると、なかなかそう思えないよなぁ……。

 ま、一緒にいて面白いのは事実だ。
 何かと騒ぐし、騒ぎを起こすし、バカをやるし、腹黒だし……。

  涼   : ……なぁ。
  明鐘  : なに?
  涼   : あいつの女としての魅力、見た目以外は欠けてると思わないか?

 あいつが普段の状況で優しくしてくれる事はある。
 だが、何かしら後から裏があったと言ってくる。
 つまり、あいつの優しさは計算の上での演技だと思うわけだ。

  明鐘  : ……本気で思ってるの?

 明鐘が少し呆れたような笑顔で聞き返してくる。

  涼   : ……違うのか?
  明鐘  : 演技だと思うんだ、私。
  涼   : 優しさとかが、だろ?
  明鐘  : そうじゃなくて、そうやって悪役のように振舞うっている事が、だ
        よ。
  涼   : 言ってる意味が全然わからんぞ?

 もし、あいつが腹黒じゃなく、それが演技だとしたら、なんで初対面の時にあん
な傍迷惑な事するんだ?
 それがあるから、俺はあいつの事が嫌だったんだ。
 今は、その馬鹿げた事も加減され、笑い事で済ませれるかもしれないけど、前は
そんな事ですまなかったからな。

  明鐘  : 兄さん、意地っ張りでしょ?
  涼   : あぁ。
  明鐘  : 西守歌ちゃんも、同じくらい意地っ張りなんだよ。私も西守歌ちゃ
        んと同じように、兄さんのこと、大好きだから……。
  涼   : 昼間と同じこと言っていいか?
  明鐘  : ?
  涼   : あれが好きな奴に対する態度か?
  明鐘  : だから、それが演技なの。引っ込みがつかなくなってるんだよ。事
        情は知らないけど、あんな出会い方をして、脅してでも結婚しよう
        として、でも気付いてみれば自分が先に好きになってて。
  涼   : ……確かに、ちょっと意地でもそれを突き通したくなるよな……。

 意地っ張りって言うのは変なとこで融通が利かないからな。
 言い換えれば、不器用なんだろう。

  明鐘  : だから、もう少し、本当の西守歌ちゃんを見てあげて。
  涼   : ……わかったよ。でも、なんで明鐘がそんなにあいつの事を気にす
        るんだ?
  明鐘  : お友達だから♪ それに、私達、血が繋がってる兄妹なんだし……。
  涼   : だから、俺を西守歌に譲るのか?
  明鐘  : うぅん。そうじゃないの。確かに私は兄さんが……涼が好きよ。涼
        を愛してる。
  涼   : うん。
  明鐘  : だから、涼を嫌いになりたくないし、嫌われたくない。兄妹で、そ
        んな関係になるのって、おかしいと思うけど……。

 確かに、兄妹は結婚できない。
 兄妹と言う呪縛から抜ける事はできない。
 でも、俺と明鐘の絆は兄妹と言う枠を完全に超えている。
 俺は、明鐘が好きだ。

  明鐘  : 西守歌ちゃん、可愛いし、お料理とか家事も上手だし、私とお友達
        だし。結婚しろとは言わないけど、私と同じ気持ちを持っている以
        上、放って置けないの。
  涼   : ……それは、わかった。でも……。
  明鐘  : 大丈夫。私はずっと涼と一緒にいる。結婚はできなくても、今まで
        通り、ずっと「兄妹」として一緒に暮らせるんだもん。そんな中で、
        誰かが不幸になるのは嫌だから……。

 自分のことより、相手を気遣う明鐘。
 そんな明鐘が愛おしく、抱き寄せてしまう自分がいた。
 明鐘も嫌がることなく、俺の胸に顔を埋める。
 ずっと俺を愛してくれた明鐘を、これからも守り続ける。
 絶対に不幸にさせはしない。



 次の日の朝、俺は朝食が終わると西守歌を呼び出し、二人だけで話をした。
 その内容は、昨日の夜、俺が心の中で立てた誓いだ。

  西守歌 : ……意地っ張りな涼様のことです。そのお気持ちはもう揺るがない
        でしょう。
  涼   : ……悪いな。一度家に戻って、またこっちに戻ってきたのに。
  西守歌 : いえ。おじい様が愛した女性のお孫さんなんですから、お二人には
        当然、幸せになる権利があります。私なんかが入り込む余地はあり
        ませんね。
  涼   : そのことなんだけど……俺がお前を好きになる可能性がなくても、
        今まで通りに生活する事はできないのか?
  西守歌 : できますわ。もとより、私あんな家に帰る気はありません。あの一
        件があって以来、父が頻繁に帰ってくるようになって、鬱陶しい事
        この上ないですわ。
  涼   : ……お前、もうちょっと親を大事にしろよ……。

 と、呟きつつも、俺も西守歌の親父さんは好意的には思えない。
 これからも変わらない日常を送る中で、俺と明鐘は兄妹なりに幸せになる道を探
すさ。



                                              明鐘編 Fin.


妹。妹です。世の中、妹なんですっ!(ぇ
義妹ではなく実妹っ!
……でもまあ、現実にはそんなに可愛く思える妹なんてイナインデスケドネー。

ところで、実は西守歌萌えなSSだったりしますね。
なら、ふられてしまった西守歌は私が引き取ることにしましょう。(ぉ
<<Comment by けもりん>>


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