Φなる・あぷろーち SS

 大進展!? 愛と波乱のスキー旅行 〜 あやめ編 Part.2 〜

                         震天 さん


 真っ先に目に映ったのはあやめちゃんだった。
 なぜか、と聞かれると困るが、敢えて言うなら……近かったから?
 普通なら、すぐに目を背けたいところだが、俺自身、あやめちゃんのようなタイ
プは初めてだったから、いろんな意味で興味があったのかもしれない。
 なんと言うか、見ていて危なっかしいし、どうしてもすぐに手を差し向けたくな
る。

  あやめ : あ、あの……水原さん?
  涼   : え、あ、ご、ごめんっ!

 いくらなんでもちょっと見すぎだったか。
 あやめちゃんの声が耳に入るまで我を忘れていた。

  西守歌 : 涼様! 私というものがありながら、あやめさんに心を奪われるな
        んて!
  あやめ : ……。
  涼   : お前とそんな関係になった覚えはない!
  笑穂  : 守屋。
  美紀  : なに?
  笑穂  : 私たちは完全に蚊帳の外だな。
  美紀  : 確かにね。まさか、涼が鐘ちゃんに目もくれずにあやめちゃんのほ
        うに行くとはね。
  明鐘  : ……兄妹でそんな関係になっているほうがまずいと思うけど……。
  美紀  : そう? シスコンの涼じゃありえない話じゃないと思うよ?
  笑穂  : そうだな。これだけ美しく、愛らしい妹さんがいるんだ。シスコン
        にならないほうがおかしい。
  明鐘  : そ、そんな……。

 なんか、言いたい放題言われてる気がするんだが?
 しかもお嬢、明鐘を褒めてくれるのは兄としてかなり嬉しいが、最後のは余計だ。

  西守歌 : 涼様が年頃の女の子の身体に興味がおありと仰るのでしたら、私の
        身体を……。
  明鐘  : し、西守歌ちゃん!?
  あやめ : ダメーっ!
涼・西守歌・
 明鐘・美紀・
    笑穂: え……!?
  あやめ : ……あ……あの、私……先に上がります!

 あやめちゃんがそそくさと浴場から出て行く。

  西守歌 : ……明鐘さんではなく、あやめさんからあのようなお言葉を聞くと
        は思いもしませんでした。
  涼   : まぁ、確かにちょっと思いがけない事だけど……。
  美紀  : ところで、涼。
  涼   : ん?
  美紀  : いい加減……こっちを見るなーっ! さっさと出てけー!
  涼   : は、はいっ!
  笑穂  : それと、君は早くこれを元に戻す事。
  西守歌 : 仕方ありませんね。せっかく、「裸のお付き合いで急接近。涼様の
        心をゲット!」作戦は失敗ですわね。

 長いし、そんな変な作戦を練るな。
 それにしても、あやめちゃんがね……。

  涼   : あやめちゃん、か……。



 風呂から上がると、ノートパソコンに向っているハルと百合佳さんがいた。

  春希  : 混浴は楽しめたか?
  涼   : ……なに?

 ハルは一度もこちらを見ていないのに、どうやら俺だと判断したらしい。
 しかも、さっきの現場を見ていないはずなのに、なぜそういう事を聞くんだ?
 ……当たっているだけに、ますます謎が深まる。

  百合佳 : まさか、涼君。お風呂場に知り合いしかいないからって、女湯に……?
  涼   : 行きません! 大体、それやるのは西守歌くらいですよ。
  百合佳 : それもそっか。でも、あやめの様子と春希さんのさっきの発言を照
        らし合わせると、どうしても涼君が皆のところに行った様な感じだ
        ったんだけど?
  涼   : ……一時的に壁がなくなったんですよ。
  百合佳 : まさか。いくらなんでもそんなこと……。
  涼   : あいつが今までにやってきたことをよ〜く思い出してください。
  百合佳 : …………西守歌ちゃんじゃ、有り得る話なんだよね……。

 俺は無言で頷く。
 よくよく考えれば、裏工作、改造、設置。
 全部あいつならやりかねないし、あいつが何かやりましょうか、と聞いてきた時
には既に準備が終わっているという事なんだろうな。
 ……待てよ?
 そういえば、風呂に入る前に、ハルは……。

  涼   : ……ハル。まさか、気付いて……?
  春希  : フッ。何の事だ?

 こういうとぼけかたしている時は大抵「当たり前だ」というのと同意だ。
 知っているなら教えてくれればよかったのに。

  春希  : それなりにヒントは出してやっていた。気付かないお前の自己責任
        だ。他人のせいにするな。
  涼   : 恐れ入りました。

 ハルに確認を取ったあたりで、明鐘達も上がってきた。

  明鐘  : 気持ちよかったね。
  笑穂  : あれだけ広い風呂を貸しきるというのも悪くはないな。
  美紀  : 後は覗きがいなければねぇ?
  涼   : ……全面的に俺が悪いのか?
  西守歌 : まぁまぁ。落ち着いてください、涼様も美紀様も。
  涼・美紀: お前(あんた)が言うな!
  西守歌 : あ、あら?

 こいつ、自分がやらかした事に責任を全く感じていないのか?
 とことんまで黒いな。

  美紀  : ま、それはもういいわ。
  涼   : よくないだろう……。
  美紀  : それより、早くご飯にしましょう♪
  明鐘  : もしかしてみぃちゃん、さっきから機嫌良かったのって……?
  美紀  : 当然! 旅行と言えばいつもと違ったご飯! しかも、こんな豪華
        なホテルと来れば、出てくるご飯の豪勢ぶりも最たる物かと!
  笑穂  : 守屋、私が言うのもなんだが、その食い気を少し色気に回してみた
        らどうだ?
  明鐘  : ……充分、綺麗だと思いますよ、笑穂さん。

 確かに、お嬢はもう少し自分の容姿がトップクラスだという自覚を少し持ったほ
うが良い。

  あやめ : あれ、皆さん、ここに集まってたんですか?
  百合佳 : あやめ、どこに行ってたの?
  あやめ : え? お姉ちゃんとマスターを探しに……。
  百合佳 : ずっとここにいたんだけど……。
  あやめ : え……?
  美紀  : 免疫がないみたいね。
  笑穂  : この年頃になると異性の目というのは随分気になるはずだぞ。
  西守歌 : 笑穂様、ご自分も同じ年頃だという事は忘れていらっしゃいません
        か?
  笑穂  : それもそうだな。

 お嬢らしいな……。
 それと、あやめちゃん、本当におっちょこちょいだったんだ。

  春希  : 全員揃ったな。食事にするぞ。



  美紀  : おぉっ!

 都会の高級レストランよりも一つも二つもランクが上の料理が目の前に広がって
いる。
 海の幸あり、山の幸あり。
 それにしても、なに料理だ、これ?

  西守歌 : このホテルでは和、洋、中のほかに、これらのどの部類にも属さな
        い無国籍料理を扱っているんです。
  百合佳 : 無国籍料理って確か高いんじゃなかったっけ?
  西守歌 : まぁ、一学生が払えるような金額ではないのは確かですわね。
  春希  : では、あなたは払えると?
  西守歌 : 当然ですわ。

 そう言って、西守歌は懐からなにやら黒いカード出す。

  涼   : なんだ、それ?
  西守歌 : ブラックカードです。
  明鐘  : ブラックカード……?
  笑穂  : なんで、君がそんなものを持っているんだ? それこそ、学生が持
        てる様な代物ではないだろう?
  百合佳 : そうなの?
  笑穂  : プラチナカードは知っているな?
  美紀  : うん。ゴールドの上のやつでしょ?
  笑穂  : あぁ。ブラックはそれの更に上の物だ。
  美紀  : ……マジ?
  春希  : ちなみに、いくら上流階級の人間といえど、そうそう持てる物でも
        ない。
  涼   : なんでそんなもの持ってるんだ?
  西守歌 : 言いませんでした? この旅行は私個人の嫌がらせだと。

 そういや、部屋に案内された時にそんな事言っていたような気が……。
 あれって、俺への嫌がらせじゃなかったんだな。

  西守歌 : 涼様へちょっかいを出すだけでしたら、皆様を巻き込んだりいたし
        ませんわ♪
  明鐘  : ちょっかい以上の事なら巻き込む、って聞こえるんだけど……。
  西守歌 : ご理解していただけて嬉しいですわ。

 ……否定しないし……。

  西守歌 : このカード、父の財布から抜き取り……コホン。もとい、預かって
        きた物ですわ。
  涼・
  明鐘・
  笑穂・
  美紀・
  百合佳 : ……(抜き取ってきたんだ……)。
  春希  : さすがは益田家の人間。目的のためなら手段を選ばんか。

 ハル、そこは納得するところじゃないから。
 やっぱり、ハルの感覚も少しずれてるな。

  春希  : 何かいったか?
  涼   : いや……。
  笑穂  : とにかく、この話は終わりにしよう。
  美紀  : うん。それより、早く食べよ♪
  全員  : いただきます。

 やっと食事にありつく。

  美紀  : う〜……ん……おいし〜♪
  涼   : 確かに、美味い……。
  西守歌 : 喜んでいただけて光栄ですわ。……ところで、先ほどからあやめさ
        んがやけに静かなのですが?
  あやめ : ……。
  百合佳 : あやめ?
  あやめ : え……? なに、お姉ちゃん?
  百合佳 : どうしたの? 食べないの?
  あやめ : ううん。食べるよ。うわぁ、美味しそう♪

 少し遅れてあやめちゃんも食べ始める。

  西守歌 : それで、部屋割りの事なんですが、私と涼様―
  涼   : 却下!
  西守歌 : せめて言い切らせてくださいよ、涼様……。
  美紀  : それはいいとしても、結構重要よね、部屋割り。
  明鐘  : 人数は8人で、部屋は3部屋。2部屋は3人で、残りは2人きり……。
  笑穂  : 芽生さんと武笠さんは同じ部屋がいいのでは?
  春希  : そこまで気にする必要はない。お前達が良いと思う部屋割りで良い。
  明鐘  : でも、ハル兄さんはいいの?
  春希  : 百合佳とも話はついている。
  百合佳 : うん。私たちをくっつけちゃうと、後が大変でしょ? だから、よ
        っぽど変な組み合わせでもない限り、私たちのことは気にしなくて
        もいいよ。

 ハルもそれで納得しているようだけど、やっぱりこの二人は同じ部屋がいいんじ
ゃないか?

  美紀  : どうやって決めよっか?
  西守歌 : 私の作ったくじ―
  涼   : 却下。
  西守歌 : どうしてですか〜!?
  涼   : お前が作ったくじという時点で裏があると判断した。運でもなんで
        もないだろうが。
  美紀  : 確かにね。
  明鐘  : でも、くじって良いんじゃない? 兄さんがそんなに西守歌ちゃん
        のくじがいやなら、私が作るけど。
  涼   : そうだな。西守歌に選ばせなければ、加えて西守歌の作ったくじで
        なければそれでいいか。
  西守歌 : 私には選択権はなしですか!?
  涼   : 当たり前だ。俺に選択権を与えようとしなかったくせに。

 権力に物を言わせて結婚を迫るなんて非常識な奴に遠慮なんてしていられるか。

  西守歌 : 酷いですわ、涼様……。
  明鐘  : 出来たよ。じゃあ、兄さんから選んでよ。
  涼   : じゃあ……ここ。
  明鐘  : みぃちゃんは?
  美紀  : じゃあ、そこでいいや。次、鐘ちゃん選んだら?
  明鐘  : う、うん。じゃあ、兄さんの隣。笑穂さん、次どうぞ。
  笑穂  : ありがとう。じゃあ、ここにしよう。
  明鐘  : ハル兄さんと百合佳さんは既に決定済みだから。
  春希  : 気にするなと言ったろう。
  明鐘  : ごめんなさぁい。
  百合佳 : でも、ありがとう、明鐘ちゃん。それじゃあ、最後にあやめ。
  あやめ : うん。こっちでお願いします。

 これで全員選んだな。

  西守歌 : 皆さん、なんだか私への対応が冷たいのですが……。
  明鐘  : だって、西守歌ちゃんに気を使うとくじを摩り替えられそうだし。
  西守歌 : 明鐘さん、私がそんな事をすると思っていたんですか!?
  明鐘  : え、あの……。
  西守歌 : どこで気付かれたんでしょう……?

 ……やる気だったんだ、こいつ。
 無視してよかった……。

  明鐘  : と、とにかく、発表しちゃうね。えっと……まずは、西守歌ちゃん。
  西守歌 : 涼様と同室ですか!?
  明鐘  : ううん。ハル兄さん達と同じ部屋。
  西守歌 : え……春希様と百合佳様の?
  明鐘  : うん。

 ……大ハズレ、か。
 ま、少しくらいは同情してやるか。

  明鐘  : それで、私と笑穂さん、みぃちゃんが同じ部屋。
  美紀  : やった〜! 二人の綺麗な身体の秘密を探るわよ♪
  笑穂  : ……なんか、身の危険を感じるんだが……。
  明鐘  : ……私も……。
  涼   : 頼むから人の妹を変な道に誘い込むなよ……。
  明鐘  : えっと、兄さんとあやめちゃんが同じ部屋だよ。
  涼   : あぁ。よろしく、あやめちゃん。
  あやめ : は、はい!
  美紀  : あやめちゃん。涼になんか変な事されたら大声で叫んでいいからね♪

 そこで俺を危険な人扱いするなよ。
 ま、西守歌以外なら別にいいんだが、相手があやめちゃんでよかった。



 食事が終わり、それぞれが割り当てられた部屋に戻っていく。
 ちなみに、俺達の部屋は真ん中だ。

  涼   : 着いた時には気付かなかったけど、結構広い部屋だな。
  あやめ : スイートルームですから、ある程度予想してたんですけど、これは……。
  涼   : 家の部屋より広いかも……。

 よくテレビでホテルの高級な部屋の紹介をしているのを見るが、それに紹介され
てそうなくらいだだっ広い部屋。
 冗談抜きで、しばらくは生活できそうだな。
 キッチンまであるし……。

  涼   : ホテルで料理を出してくれるのに、なんでわざわざキッチンをつけ
        てるんだ?
  あやめ : お金持ちの贅沢……?
 涼・あやめ: ……。

 そういう無駄な事に使うくらいだったら、経済回復に向うように使えよ。
 ……無駄な事に金かける奴はすぐ近くに、今は隣の部屋にいるんだよな……。
 もとより、あいつの思考回路は理解不能だが……。

 (明鐘) : み、みぃちゃん!?
 涼・あやめ: ?
  涼   : なんだ?
  あやめ : 明鐘さんの声、ですよね?
 (美紀) : 良いじゃない、減るもんじゃないし! ちょっと触るだけなんだか
        ら♪
 (明鐘) : 触る場所が問題なの!

 ……あいつ、明鐘のどこに触ったんだ?

 (美紀) : あ、鐘ちゃんが終わったら笑りんの身体チェックね♪
 (笑穂) : 私にはそういう趣味はないぞ。
 (美紀) : この際笑りんの趣味は関係なし♪ 抵抗する場合は……無理矢理!
 (笑穂) : 守屋! 頼むから冷静に……!
 (美紀) : 問答無用♪
(明鐘・
   笑穂): きゃぁぁぁぁ!
  涼   : ……どうしたら良いと思う?
  あやめ : と、聞かれましても……。

 明鐘のピンチなら行かねばならんのだが、男の俺が入っちゃいけないような気が
する。
 かといって放っておく訳にも……。

  涼   : う〜ん……。
  あやめ : あ、あの……。
  涼   : ん?
  あやめ : 少し、お話しませんか?
  涼   : ……これをBGMに?

 明鐘達がいる部屋の方向を指して聞く。
 やっぱり、放って置いた方が良いのか?

  あやめ : じゃ、じゃあ、こっちで……。
  涼   : あ、うん。

 なんか、緊張してるようだけど、どうしたんだろ?
 俺とあやめちゃんはとりあえずベッドに座る。

  あやめ : ……水原さんは、その……お姉ちゃんのこと……。
  涼   : 百合佳さんのこと?
  あやめ : はい。あの、好きだったんですか?
  涼   : うん。
  あやめ : ……随分、あっさりしてますね。
  涼   : まぁね。ま、ハルと結婚したんなら隠すような事でもないし。

 それに、俺の初恋はもう半年以上前に終わっているんだ。
 今考えてみると、恋と言うより、憧れに近いものだったのかもしれないけど。

  あやめ : 悲しくないんですか?
  涼   : そりゃ、百合佳さんがハルと付き合いたいって言った時はかなり悲
        しかったね。でも、それで良かったんだ。
  あやめ : ……どういうことですか?
  涼   : 俺の百合佳さんへの想いは憧れに近い物だったから、百合佳さんが
        幸せになってくれれば良かったし、もし、百合佳さんの想いが俺の
        少しでも向けられたら、って心のどこかで思っていたかもしれない
        し。

 結局、俺は百合佳さんに自分の気持ちを伝えていない。
 伝えていなくても、百合佳さんは気付いているだろうし、百合佳さんがどう返事
をするのかもわかっていた。
 俺は何もせずに後悔するより、何かをやって後悔する。
 告白して振られる。
 俺からしてみればそれのほうが二人の関係がはっきりしていいんだが、百合佳さ
んはどうだろう?
 百合佳さんのことだから、俺に顔をあわせるのが辛いとか、相手を傷つけてしま
ったと言う後悔が百合佳さんの心に生まれる。
 そんなのは、嫌だった。
 だから、俺は何もしなかった。
 何もしないでいるほうが、みんな、今のままでいられたから。

  あやめ : ……じゃあ、お姉ちゃんが猫をかぶってるって知っていたのは……。
  涼   : ずっと百合佳さんを見てたし、俺にはやたらとお姉さんぶりたがる
        し、わからないほうがおかしいだろ?
  あやめ : ……そうですね。
  涼   : もっとも、全然お姉さんらしくないけど。
  あやめ : ふふ、そうですね。でも、お姉ちゃんの前では言わないほうが良い
        ですよ。こんな風にぷくーってほっぺた膨らませて、怒っちゃいま
        すから。
  涼   : 違いない。

 二人は少し笑った後、黙り込んでしまった。
 ただ単に話題がないのだ。
 ……そういえば、風呂から上がってからあやめちゃんの様子が少し変だったけど
……聞いてみるか。

  涼   : ところで、風呂の後からなんか様子が変だったけど、どうしたの?
  あやめ : え!? あ、あの、それは……その……み、水原さんに……えっと……
        身体を、見られたから……。
  涼   : あ……あれは、その……本当にごめんなさい。

 実質的に俺は何も悪くないはずだ。
 だが、壁がなくなった後、すぐに目を背ける事はできたのに、俺はしなかった。
 これはそれに対する謝罪だ。

  あやめ : いえ、水原さんに身体を見られたこと自体は気にしてないんです。
  涼   : ……は?
  あやめ : ただ、あの……見られたのは私だけではなくて、その……。
  涼   : ……もしかして、男の身体を見たのは初めて、と?

 あやめちゃんが黙って頷く。

  あやめ : それで、一人でいたり、水原さんの顔を見るたびに水原さんの身体
        が脳裏に浮かんできて……。

 ……前は隠してたはずだけどな……。
 どうやら、美紀が言っていた免疫がないと言うのは、この事らしい。
 またしても気まずい空気が流れ出した時、誰かがドアをノックした。

  涼   : はい?
 (百合佳): 涼君、あやめ。ちょっと良い?
  涼   : 百合佳さん?
  あやめ : お姉ちゃん?

 俺とあやめちゃんは顔を見合わせるとドアへ向い、ドアを開ける。

  涼   : どうかしたんですか?
  百合佳 : あのね、私、やっぱりここに泊めて欲しいの。
  あやめ : マスターと何かあったの?
  百合佳 : ううん。春希さんとはなにもないの。ただ、春希さんと西守歌ちゃ
        んが……。

 百合佳さんからハル達の部屋で何が起こっているのか説明された。
 簡単にまとめると、ハルが今回の旅行に無理矢理連れて来られた事に対する文句
が発端となり、今もなお、竜虎が激突しているらしく、百合佳さんは避難して来た
らしい。

  あやめ : そんなに怖いの?
  百合佳 : すっごく。ね、涼君?
  涼   : そうですね。

 どういう状況かわからない人はアニメのΦなる・あぷろーち、第三話「大激突!
 愛と野望の竜虎」を参照のこと。

  百合佳 : という訳で、お邪魔しまーす。

 状況が状況なので、百合佳さんを部屋に招き入れ、少し話をした後、早々に寝る
事にする。



 翌日、豪華な朝食をとった後、チェックアウトを済ませ、西守歌の自家用機で早
々に帰る事にする。
 原因は、昨夜の二人の激突だ。
 また話が拗れない内に俺が西守歌を説得して帰る事にした。

  涼   : 明鐘、どうしたんだ? 眠そうだぞ?
  明鐘  : うん……みぃちゃんが寝かせてくれなくて……。
  美紀  : いやぁ、鐘ちゃんのお肌がなんでそんなにスベスベなのか知りたくて。
        笑りんとは生活内容が離れすぎてるから仕方ないとして。
  涼   : で? 人の妹に何したんだ?
  美紀  : ちょっと触っただけよ。
  笑穂  : 胸を触ったり、揉んだりするのはちょっと触っただけ、に入るのか?

 怒る前に呆れた。
 こいつ、なんでやる事がセクハラじみてるんだ?

  あやめ : 身体が綺麗だったり、可愛い人も大変なんですね。
  涼   : 皆こいつの餌食だな。
  美紀  : あやめちゃんも対象の一人だけど。
  あやめ : え!?
  百合佳 : 大丈夫よ、あやめ。その時は涼君が守ってくれるから。
  あやめ : お姉ちゃんのお墨付きが出ましたよ?
  涼   : よし、これからは美紀と西守歌から守ってあげよう。
  西守歌 : 私も入るんですか!?
  涼   : というより、お前が一番危険人物だ。
  西守歌 : それは涼様にだけです!
  涼   : 堂々と言うことか!?

 まったく、なに考えているんだ、こいつは……。
 これからもこいつからの嫌がらせは続くんだろうな、と思いつつ、これから新し
い展開が待っていると思うと少し嬉しくも思う。
 ……もし、あやめちゃんと結婚までいくとなると、ハルは本格的に兄さんになる
わけだし、百合佳さんもお姉さんか……。
 ……ま、その辺はまたの機会に考えるとしよう。



                                              あやめ編 Fin.


うぶっ娘バンザイっ。
巧くだまくらかして……。(ぉぃぉぃ
これからしっかりと、しかも色々と教え込んでいくわけですね。
……許すまじ、涼。

え? 私だったら?
うぶっ娘はうぶのままいただくのが、正しい姿ですよっ!(ぇ
<<Commnt by けもりん>>


無断転載厳禁です。
show index