Φなる・あぷろーち SS

 大進展!? 愛と波乱のスキー旅行 〜 笑穂編 Part.2 〜

                         震天 さん

 お嬢とは色々あった仲だが、お嬢の身体をこうマジマジと見る機会なんて皆無だっ
たし……。
 そういうわけではないが、俺はお嬢の身体に釘付けだった。
 なんと言うか……陳腐な言い方しかできないが、綺麗だよな……。

 笑穂  : 水原、そんなに見つめるな。照れる。
 涼   : わ、悪い……。

 そう言われて顔を背ける。
 しかし、なんともいえない違和感があった。

 美紀  : 笑りん……男に身体を見られてそれだけのリアクション?

 そう、普通、年頃の女の子は裸を見られると大騒ぎをするかすぐに自分の身体を隠す。
 しかし、お嬢はそれをしないし、かなり冷静に「見るな」と言っただけだ。
 俺が感じた違和感はそれだ。

 笑穂  : 守屋。私に「水原の変態! スケベ! あんたなんかとは絶交よ!」
       とか言うのを求めていたのか?
 あやめ : 求めるとか言う以前に、それが普通のリアクションだと思いますけど……。
 笑穂  : そう言われてもなぁ……これが地なんだ。
 美紀  : ま、笑りんらしいといえばらしいけど、羞恥心はないの?
 笑穂  : あるに決まっている。だからさっき、「照れる」といったじゃないか。
 明鐘  : なんか、笑穂さんって少しずれてますね。西守歌ちゃんとはまた違った……。
 涼   : お嬢が西守歌みたいだったら、登校拒否になってるぞ。
 西守歌 : ということは、私が転校してきた時、登校拒否にならなかったのは私
       のことを―
 涼   : それはない、絶対にない!

 転校以前に家に押しかけてきただろうが。
 普通は学校に逃げるぞ。

 美紀  : 話戻すけど、万が一涼が変な気を起こしたらどうするの? 襲われてか
       らじゃ遅いよ?
 明鐘  : に、兄さんがそんな事を!?
 あやめ : ふ、不潔です……。
 笑穂  : そこまでしたらさすがの私も引く。
 西守歌 : そしたら、一人孤独になられた涼様を優しく包み込み、涼様の心を掴
       めるのですわ♪
 涼   : ……どこから訂正していいのかはよくわからんが、とにかく、俺は変な気
       を起こさん。最後に関してはもう無視だ。
 西守歌 : ……どうして私だけ相手にされないのでしょうか?

 さっきも言ったが、西守歌を相手にしていると時間が掛かる。
 もう無視する。

 涼   : 温泉に浸かって今日の疲れを取ろうと思ったのに、余計に疲れた。先に
       上がる。
 笑穂  : 水原。
 涼   : なんだ?

 皆には背を向けたまま返事をする。
 当然、顔を皆の方に向けた時点で美紀の関節技か蹴りが飛んでくるから、見ることもで
きないが。

 笑穂  : お前の自称・婚約者の言葉はともかく、私達の言った事は冗談だ。お前
       がそんな見境を無くすような人間でない事くらいわかっている。
 涼   : そりゃ、どうも。
 西守歌 : 私の言葉が本気だとなぜわかったのでしょう?

 ……否定しないし……。



 結局、温泉に入っても疲れは取れないまま、食事時になる

 涼   : なんでこんなに疲れるんだろうな。
 笑穂  : 賑やかな彼女を持つと苦労するな。
 涼   : ……お嬢、皮肉か、それ?
 笑穂  : さぁな。だが、私はお前と一緒にいると楽しめる。この旅行だって、お
       前や守屋がいなければ断っていたかもしれないし。
 涼   : あのバカに脅されてもか?
 笑穂  : それこそ皮肉じゃないか。私がそんな脅しに屈すると思うか? 前にも
       言っただろう? お前ほどではないにしても、私も強情だ。
 涼   : ……俺、そんなに強情か?
 笑穂  : 私をさらっていったのに、よく言うな。

 お嬢の言葉を聞いて俺は苦笑する。
 あれはさらったというのか?

 笑穂  : ……ところで、水原。部屋割りの件なんだが……。
 涼   : ん?
 笑穂  : お前は、誰か一緒になりたい人はいるのか?

 お嬢が少し頬を赤くしているように見える。
 ま、風呂上りだし、皆こんなもんか。

 涼   : そうだな……西守歌でないことは確かだな。
 笑穂  : 相変わらずか。
 涼   : そういうお嬢はいるのか?
 笑穂  : え……!? わ、私は……。
 涼   : ?
 笑穂  : ……察しろ、バカ。

 耳まで真っ赤にしながら小声で言うが、俺の耳にはちゃんと入って来た。
 つまりは……そういうことだ。



 で、食事。

 西守歌 : 早速ですが、部屋割りを決めませんか?

 何か企んでいるのが丸分かりの明るい声で西守歌が仕切りだす。
 どうせ、俺と二人きりの部屋割りにしようとしている、というのがこいつの目的だろう。
 だが、そんなことさせるわけにはいかない。
 俺もお嬢と同じ部屋になりたいし……。

 西守歌 : さっき、くじを作ったんです。同じ色を引き当てた人が同じ部屋とい
       う事にしませんか?
 美紀  : 運次第ってわけね。良いんじゃない?
 明鐘  : 百合佳さんたちもそれでいいかな?
 百合佳 : 私たちのことは気にしないでいいよ。
 西守歌 : それじゃあ、決まり―
 涼   : 待った!
 西守歌 : はい?
 涼   : そのくじ、ちょっと見せろ。

 西守歌がしっかり握り締めているくじを指差して言う。
 それを言われて、西守歌が少しだけ後ずさる。

 西守歌 : いやですわ、涼様。何の変哲もない紙で作ったくじですよ?
 涼   : なら、見せてくれてもいいよな?
 西守歌 : 普通のくじを見て楽しいんですか?
 涼   : お前が作ったくじだ。さぞかし面白いんだろうな。
 西守歌 : くじに面白みを加えてどうするんですか?
 涼   : そうか。それもそうだな。それじゃあ、どういう順番でくじを引かせ
       るつもりだったんだ?
 西守歌 : 涼様、私、後は適当……。
 全員  : ……。

 ……普通、こんなにあっさりと白状するか?

 あやめ : そういう仕掛けがあったんですね。
 美紀  : そりゃ、自分の思い通りにことを運ぼうと思ったら、相手の土俵には上
       がらないのが基本だし、言い出したのが西守歌ちゃんじゃ、疑って当然か。
 西守歌 : あぁん! せっかく巧くいきそうでしたのに〜!

 いかせてたまるか、お前の悪巧みを。

 百合佳 : ねぇ、涼君と同じ部屋になりたい人って、誰?
 西守歌 : はい!
 明鐘  : わ、私もできれば、兄さんと……。
 笑穂  : では、私も立候補する。
 美紀  : 別に二人きりじゃないなら別に構わないけど?
 百合佳 : あやめは?
 あやめ : ……勝ち目が無さそうなので辞退します。
 春希  : なら、立候補したやつらで勝負して決めれば良い。あやめ、お前は俺た
       ちの部屋に来れば良い。
 あやめ : そうします。

 部屋割りが決定したのはハルと百合佳さん、あやめちゃんの3人一部屋のみ。
 後は勝負で決定するらしい。
 ……あれ?
 もしかして、俺の意志は関係なし?



 で、食事も終わり、勝負の場が設けられた。
 それは……!

 笑穂  : ロン!
 西守歌 : えぇっ!?
 美紀  : これで西守歌ちゃんがラスか……。笑りん、強いね。
 笑穂  : 妹さんほどではない。
 明鐘  : なんか、気付いたら上がっちゃうんだよね。

 西守歌、明鐘、お嬢、美紀の4人で行われている麻雀大会。
 なぜかは知らんが、西守歌がいきなり黒服の人を呼んで用意させたものだ。
 ……しかし……。

 あやめ : 女子高生がやる事ですか、これ?
 涼   : 異様な違和感があるよな、やっぱり……。

 女子高生が4人、しかも、すれ違えば必ず目を引く美少女達が麻雀に打ち込んでいる。
 違和感がありすぎる。

 明鐘  : あ、ツモ。
 笑穂  : 早いな……。
 西守歌 : このままでは点数がなくなって負けてしまいます。
 美紀  : 次、笑りんが親よね。

 お嬢が西守歌から点数を全て奪い取れば終局してお嬢が明鐘を抜いて優勝。
 残った部屋割りの決定権はお嬢に渡る。
 俺は必死にお嬢の優勝を願った。

 西守歌 : ここは踏ん張り所ですわ。リーチ!
 明鐘  : わっ、早いね。
 美紀  : 何事も負けてられないしね。私もリーチ!
 明鐘  : それじゃあ……私もリーチ。
 笑穂  : 残るは私だけか、それなら、私もだ。

 ……ほぼ最初から全員がリーチ。
 誰が先に上がるんだろう?

 西守歌 : 違いますね……。
 笑穂  : ロン!
 西守歌 : え……?
 笑穂  : リーチ、一発、ドラ、国士無双。
 涼   : ……勝負あったな。

 誰が見てもお嬢の優勝は明らかだった。
 まさか、最後の最後でこんな役で上がるとは……。

 笑穂  : それじゃあ、守屋。彼女の面倒、頼んだぞ。
 美紀  : うん。西守歌ちゃん、夜通しで遊ぼうね♪
 西守歌 : うぅ〜……涼様とのあま〜い一夜が……。
 明鐘  : あの、私は……?
 笑穂  : 今日だけ借りてもいいか?

 お嬢が俺を指して言っているのだから、当然、俺を借りても良いかと聞いているわけ
だが、指を指すなよ。
 完全に物扱いだし、俺……。

 明鐘  : ちゃんと返してくれますよね?
 笑穂  : というより、ひとりでに帰りそうだ。
 涼   : どういう意味だ? お嬢。
 笑穂  : いろんな意味があるぞ。聞きたいか?
 涼   : もうわかったからいい。
 明鐘  : じゃあ、私は西守歌ちゃんを見張っておくよ。
 西守歌 : 私、そんなに危険人物ですか?
 美紀  : 指鳴らすだけであんなにたくさんの黒服さんを操るんだから、相当
       やばいんじゃない?

 後、薬盛ったり、人を絞め落としたり、脅迫したりする辺りも加えておけ。

 あやめ : 平気でやっちゃうんですよね?
 涼   : 朝飯前のようにな。
 あやめ : じゃあ、危険ですね。

 とにかく、これで残ったメンバーも部屋割りが決定した。
 俺はお嬢と同じ部屋で、二人きりだ。



 涼   : はぁ〜……やっと落ち着ける。
 笑穂  : そんなに溜息ばかりついてると、すぐに老けるぞ?
 涼   : ほっとけ。

 そもそも俺はこんなに溜息をつくタイプじゃない。
 こんなに溜息をつくようになったのは西守歌が来てからだ。
 この旅行だってそうだ。
 あいつが絡むたびに俺は溜息をついている。
 ……俺が早死にしたらあいつのせいにしておこう。

 笑穂  : それで、どうする?
 涼   : なにが?
 笑穂  : 鈍いやつだな。仮にも彼女と同じ部屋になったのだぞ? 少しは間
       違いを起こしてみようと思わんのか?
 涼   : ……。
 笑穂  : どうかしたのか?
 涼   : いや、目眩が……。

 お嬢の発言はたまに心臓に悪い。
 こう言うことを表情を変えずにあっさりと言う。

 涼   : お嬢、普通は彼氏にでもそんな事は言わないと思うぞ?
 笑穂  : それはすまなかったな、ダーリン。

 あぁ……もう一回目眩が……。
 だが、俺はすぐに立ち直り、反撃の言葉を言い放つ。

 涼   : 心配してくれてありがとう、ハニー。
 笑穂  : ……なるほど。確かに目眩がするな。
 涼   : わかってくれて嬉しいよ。
 笑穂  : だが、さっきの発言はまんざら冗談というわけではない。
 涼   : は……?

 俺はお嬢が言った意味をあまり理解できず、間抜けな声を出してしまった。

 笑穂  : まぁ、私はやきもちを妬くほど独占欲が強いわけではない。
       だが、私自身が好きになってしまった奴を放って置くほど薄情な
       人間でもない。彼女や武笠さんの言葉を借りるわけではないが、
       既成事実を作ってしまうのも悪くないと思っている。
       その相手がお前なら、尚更……どうした、水原?

 ベッドに突っ伏している俺にようやく気付いてくれた。
 お嬢らしい発言に加え、お嬢らしからぬ大胆発言を聞いたのだ。
 目眩と理性の崩壊が同時に起こるなんて、反則だよな……。

 涼   : お嬢、つまり……それは……。
 笑穂  : 愛の告白だ。聞いてわからんか?
 涼   : ……物凄くわかりづらいんですけど……。
 笑穂  : 私はあなたの事が好き……この身も心も、全てあなたに捧げたいの。
       だから……いいでしょ? と言えば満足か?
 涼   : はずれてはいないんだが、なんか違う気が……。
 笑穂  : 水原は私の事、嫌いか?
 涼   : そんな事はない!
 笑穂  : そうだな。お前にそういう聞き方は卑怯だな。なら、私のことは好きか?
 涼   : ……ああ。
 笑穂  : 愛してくれるのか?
 涼   : 俺は……お嬢が……。

 お嬢の肩に手を乗せ、俺が言おうとしている事を行動で示そうとする。

 バタン!

涼・笑穂:っ!?

 不意に開いたドアに目を向けると……。

 西守歌 : 涼様〜! 遊びましょう。

 ゲームグッズを手にした西守歌たちだった。

 涼   : な……!
 西守歌 : よくよく考えたら、一緒に遊ぶ事はできますので夜通し遊びまくりま
       しょう!
 美紀  : 私の発言を見事にうまく使われちゃって……。
 明鐘  : 私もいけなかったの。兄さん達とも遊べたらよかったのにね、って言っ
       ちゃったから……。
 涼   : ……。
 笑穂  : ……。

 お嬢と顔を見合わせて同時に吹き出す。

 涼   : どうやら、俺たちには。
 笑穂  : あぁ。まだ早すぎるという事か。
西守歌・
 明鐘・
  美紀 : ?
 涼   : よぉし! 遊び倒すか!
 明鐘  : どうせだったら、あやめちゃんも誘っちゃおうよ。
 美紀  : じゃあ、私呼んで来るよ。
 西守歌 : 笑穂様。最終的に勝ち数の多いほうが部屋を交代するのは……。
 笑穂  : 却下だ。それに、この状況で交代しても意味無いだろう?
 西守歌 : それもそうですわね。

 この後、あやめちゃんも俺たちの部屋に来て、一緒に遊びまくった。



 帰りの飛行機の中。

 百合佳 : 皆ぐっすり寝てるね。
 春希  : 夜にあれだけ騒いでいたんだ。無理もない。
 百合佳 : どんな夢を見てるのかな? 少なくても、涼君と陸奥さんは良い夢を
       見てるよね。

 疲れることの多い旅行ではあったが、お嬢とはまた距離が縮まったような気がする。
 それを考えると、この旅行も悪くはなかったな。
 今度は、お嬢と二人きりで行けるといいな。


                                              笑穂編 Fin.


Yes!! 間違いっ!!!(笑
うーん。そこまで言ってくれると、男冥利に尽きますねぇ……。
調子は古風、でも中身はしっかり恋する乙女。
笑穂ちゃん、良い娘だぁ。
私にもそんな娘が居てくれると良いんですが。(無理

そうそう。私は亜空間殺法の使い手ですので。(ぇ


無断転載厳禁です。
show index