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 大進展!? 愛と波乱のスキー旅行 〜 美紀編 Part.2 〜

                         震天 さん

 美紀とは幼馴染で長い付き合いだ。
 幼少の頃はそりゃ一緒に風呂に入ったこともあったような、なかったような……。
 でも、これだけ成長してしまうと、お互い、恥じらいもある。
 ……こうして見ると、美紀もやっぱり……。

  美紀  : ……涼君? なぁに、見てるのかなぁ〜?

 笑顔で聞いて来るんだが、目が笑っていない。

  涼   : え……? あ、いや、これは!
  美紀  : このド変態!

 気付いた時には美紀の脚が目の前まで来ていて、当然避ける事などできない。
 思いっきり、顔面にクリーンヒットだ。

  涼   : ぐはっ!
  美紀  : 全く……乙女の柔肌をじろじろ見るなんて。
  明鐘  : みぃちゃん、容赦ないね。兄さん、大丈夫かな?
  西守歌 : 美紀様!
  美紀  : やっぱり、ちょっとやりすぎだったかな?
  笑穂  : だが、手加減はしたのだろ? なら、良しとしようじゃないか。
  あやめ : そういう問題ですか?
  西守歌 : そうです! そういう問題はありません!

 ……意外だ。
 というより、こいつが俺のことを心配してこんなこと言うなんて、思いもしなかった。

  西守歌 : 私の魅力を最大限アピールするチャンスでしたのに〜!

 前言撤回!
 やっぱり、こいつは俺の敵だ。



  涼   : あぁ〜……効いたぁ……。

 美紀の蹴り、あんなに強かったのか。

  百合佳 : どうしたの、涼君?
  涼   : え? あ〜……えっと……。
  百合佳 : 大丈夫、私は涼君の事責めたりしないし。
  涼   : いや、俺は悪くないはずなんですけどねぇ……。
  百合佳 : それで、本当にどうしたの? お風呂で何かあった?
  涼   : 西守歌がまた暴走した。
  百合佳 : うふっ、いつものことじゃない♪
  涼   : いつもの事と済ませてしまっていいのかな?

 あれを日常として受け止める事のできる人間が一体どれほどいるんだろう?
 ま、俺の目の前にその一人がいるんだが……。

  百合佳 : 涼君。あまり西守歌ちゃんのこと、悪く言っちゃダメだよ?
  涼   : ……百合佳さんのその寛大な包容力があいつにも欠片でもあればな……。
  百合佳 : 買い被りすぎよ。あ、でも、春希さんと結婚できたっていうのは、やっ
        ぱり自慢できる事かな?
  涼   : 大いに自慢しても良いと……。
  百合佳 : ? 涼君?
  涼   : ……ハルも罪作りだよな。

 美紀、やっぱりまだ引き摺ってるのかな?
 ハルに認めてもらいたいがために声優を目指したんだもんな。
 そんな短期間で……。

  美紀  : ……涼?
  涼   : ? 美紀?
  美紀  : ……あ。
  涼   : ?

 美紀の表情が一瞬強張った。
 美紀の視線は俺に……いや、俺のすぐ近くに向けられていた。
 だが、すぐに美紀は元通りに振舞う。

  美紀  : 二人とも、こんな所にいたんだ。ほら、涼。あれ、やるわよ。
  涼   : あれ?
  美紀  : 温泉といえば、風呂上りの卓球よ。定番じゃない。
  涼   : お前の事だから、風呂上りのコーヒー牛乳かと思った。
  美紀  : う〜ん、私はどっちかって言うとフルーツ牛乳派かな。
  涼   : ま、それはいいけど、もうすぐ飯だろ?
  美紀  : だからじゃない♪ たくさん食べれるように、少しでもお腹減らしてお
        きたいのよ。
  涼   : そっか。
  美紀  : あ、百合佳さん。ハルさんも誘ってみてくれますか? たぶん、やらな
        いだろうけど……。
  百合佳 : そうね。じゃ、ダメもとで誘ってみるね。後で行くから、先に行ってて。

 百合佳さんがその場から離れていく。
 ……ハルがどこにいるのかわかるのか。
 さすがはハルと結婚できた人だよな。

  美紀  : 百合佳さん相手だと、やっぱり自信無くしちゃうわよね。
  涼   : 言うほどご大層な自信、あるのか?
  美紀  : あんたをたぶらかした。
  涼   : ……自慢できない自信だな。
  美紀  : まったくね。
  涼   : ……おい。

 そうまではっきり言われると今度は俺が自信を無くしそうだ。

  美紀  : 冗談。あんたの幼馴染続けているのは自慢よ。
  涼   : ……お前、なんか変だぞ?
  美紀  : あんたのせいよ。
  涼   : ……は?

 なんで俺のせいなんだ?
 ま、美紀がおかしいのは事実だ。
 いつものノリがない。

  美紀  : とにかく、卓球はやるわよ。
  涼   : あぁ。



  西守歌 : 私の勝ちですわね。
  笑穂  : なかなか難しいものだな。だが、そこまで本気でやる必要もないだろ?
        遊びなんだし。
  西守歌 : そうはいきません。
  涼   : ……あれはなにを張り切っているんだ?
  美紀  : 勝ち抜き戦をやって、全員勝ち抜いたら部屋割りをその人が決める、
        って言う勝負してるの。
  涼   : ふぅん……って、なにっ!?

 それは何でもできる西守歌にはとてつもなく有利じゃないか!
 今、お嬢が負けたという事は……。

  西守歌 : これで2連勝ですわ。
  涼   : 既に二人抜きしてるし……。
  明鐘  : 負けちゃった……。
  美紀  : ま、鐘ちゃんじゃ勝てないわよね。
  明鐘  : そんなにきっぱり言わなくても……。
  あやめ : でも、21-0でしたよね?
  明鐘  : ふえ〜ん……! にいさ〜ん!
  涼   : 明鐘、お前が弱いわけじゃない。相手が西守歌じゃ仕方ないさ。

 男の俺が腕力で勝てないんだ。
 運動能力自体高いと見るべきだろう。
 だったら、こいつに勝てるやつは限られるだろう。

  あやめ : 次は私ですね。
  笑穂  : 勝てそうなのか?
  あやめ : 私はお姉ちゃんと違って運動には自信ありますから♪
  百合佳 : そんな事言う口はこれかな?
  涼   : 百合佳さん……?
  あやめ : いふのふぁに?

 百合佳さんがあやめちゃんの口を引っ張ってる。
 ……姉妹の間ではこう言うことが普通に行われているのか?

  百合佳 : どうせ私は運動は苦手ですよ〜だ!

 百合佳さんが手を離すと、あやめちゃんは即座に頬をさする。

  あやめ : うぅ〜……お姉ちゃんの鬼! こうなったら、意地でも勝ち抜いて、
        マスターとお姉ちゃんを別々の部屋にしてやる!
  百合佳 : あ、あやめ? 本気で怒っちゃった?
  あやめ : 勝負です! 益田さん!
  西守歌 : いいでしょう。全力を持って迎え撃ってあげましょう。益田家の全権力
        を使ってでも!
  涼   : そんなくだらない事にいちいち使うな!

 こうして、西守歌とあやめちゃんの白熱したバトルが始まった。

  美紀  : どっちが勝つと思う?
  明鐘  : う〜ん……あやめちゃんには悪いけど……。
  涼   : 確かに、難しいだろうな。
  百合佳 : でも、西守歌ちゃんは別に運動部に入ってるわけじゃないんでしょ?
        それなら、あやめにも分があると思うな。

 今現在の状況を見る限り、一進一退の攻防といったところか。
 ……どうやったら、西守歌を負けさせることができるんだろう?

  涼   : ……。
  美紀  : 何か策はあった?
  涼   : 皆無だな。
  笑穂  : 案外、お前が彼女の応援をしたら崩れるんじゃないか?
  明鐘  : 逆に張り切りそう。
  涼   : 俺にとっては自殺行為だな。
  笑穂  : 誰も普通に応援しろとは言っていない。お前らしからぬ応援をすれば、
        という話だ。

 理屈はわからんでもない。
 大抵の人間は普段のイメージとかけ離れた事をされると正直ひく。
 それを狙えと言う事なんだろうが……。

  涼   : 俺がやりたくない。
  百合佳 : 残念。涼君のそういうところも見たかったのに。
  美紀  : 思いっきり笑ってあげるけど?
  涼   : それでもやらん。……あ、決着ついたな。

 西守歌を負けさせる算段を考えていると、その間に勝敗が決してしまった。
 勝ったのは……。

  西守歌 : 惜しかったですわね。
  あやめ : うぅ〜……。

 西守歌のようだ。
 これで西守歌は3連勝。
 続いては百合佳さんが勝負をしたが、話にならずに轟沈。
 俺も粘りはしたが、結局は負けてしまった。
 と言う事は……。

  美紀  : 私が最後の砦だね。
  涼   : 頼りにしてるぞ。
  美紀  : ほっほう。それはつまり何か報酬がつくと?
  涼   : 勝てる自信は?
  美紀  : モチ。
  涼   : なら、なんでも言う事聞いてやる。ただし、1つだけな。
  美紀  : それはまた魅力的な報酬ね。んじゃ、一つ張り切っていきますか。

 美紀が卓球台を挟んで、西守歌と対峙する。

  西守歌 : これで私が美紀様を倒せば、部屋割りの決定権は私のもの。涼様との
        熱い夜が約束されるのですわ♪

 勝手にするな、そんな約束。

  美紀  : ま、未来予想図を立てるのは勝手だけど、その前に一つ良い?
  西守歌 : はい?
  美紀  : もう夕食まで時間もないし、もしここで私が勝ったら、また皆と勝ち
        抜き戦をしなきゃいけないでしょ? だから……。
  西守歌 : この試合、勝ったほうが部屋割りの決定権を得る、と?
  美紀  : でもそれじゃ、せっかく勝ち抜いた西守歌ちゃんには何のメリットも
        ないでしょ? そこで、西守歌ちゃんが勝ったら、無条件で涼との一
        夜を二人だけ、しかも、邪魔が入らないようにする、って言うのはど
        う?
  涼   : はぁっ!?

 美紀の奴、なに勝手な事……!

  西守歌 : では、私がもし涼様とあんな関係を持つような事になっても、
        誰も邪魔が入らないと言う事ですわね!?
  美紀  : ……あんたの頭の中でどういう関係を浮かべたのか知らないけど、
        そういうことね。
  涼   : ちょ、ちょっと待て、美紀! 俺を取引の道具にするつもりか!?
  美紀  : なに人聞きの悪い事言ってんのよ。そうなったら、あんたが逃げれば
        良いだけの話でしょ?
  涼   : そりゃそうだけど……。
  西守歌 : くふふふふ……♪

 ……そうなったら、あいつから逃げ切れる自信がない。
 こんな素敵に笑っているこいつから……。

  美紀  : もしかして私が負けると思ってる?
  涼   : ……いや、美紀を信じるよ。
  美紀  : よろしい。こっちも話がついたから、早く始めましょ。
  西守歌 : わかりました。では、行きますわよ!

 そうして、壮絶なバトルの末、勝ったのは……!



  美紀  : いやぁ、死闘の後の食事はまた格別ですなぁ!
  西守歌 : 私ともあろうものが、まさかあんなところでミスするなんて……。

 この会話からわかるとおり、勝ったのは美紀だ。
 美紀は喜色満面の笑みで、西守歌はかなりへこんだように飯を食っている。

  明鐘  : でも、みぃちゃんすごかったね。兄さんやあやめちゃんでも倒せなか
        った西守歌ちゃんを倒しちゃうんだもん。
  笑穂  : まったくだ。
  美紀  : いやぁ、そこまで褒められると照れますなぁ♪
  涼   : ……。

 これだけ運動神経が良いのに、なんでスキーは下手なんだ、こいつ?

  百合佳 : それで、美紀ちゃん。部屋割りはどうするの?
  美紀  : 既に決定済みですよ。えっと、鐘ちゃん、百合佳さん、ハルさんで
        2001号室、笑りん、西守歌ちゃん、あやめちゃんで2003号室。
  西守歌 : 仕方ありませんわね。こうなったら、2002号室と2003号室を
        繋げて……。
  あやめ : そこまでしますか、普通?
  涼   : 普通じゃないんだよ、こいつは。

 その場にいた全員が頷いた。
 ……西守歌も含めて。

  あやめ : 自覚はあるんですね。
  西守歌 : 何しろ私、心臓に毛が生えてますから。
  笑穂  : 自分で言うものではないだろう。
  美紀  : 涼。わかってると思うけど、あんたは私と同じ部屋。報酬も貰わない
        といけないし。
  涼   : 望みは何だ?
  美紀  : それは後でのお楽しみ。



 食事も終わり、みんながそれぞれ割り当てられた部屋へ引き返す。
 俺と美紀も例外ではない。

  涼   : はぁ〜……なんだかんだで結構疲れたな。
  美紀  : ……涼。
  涼   : ん?

 美紀が俺の顔を見つめている。
 心なしか、目が少し潤んでいる。
 そして、その表情のまま、俺に近づいてくる。

  涼   : み、美紀……?
  美紀  : じっとしてて。

 美紀が俺のすぐ目の前までやってくると、ほのかに石鹸の匂いがした。
 それだけで、なんだか身体から力が抜けるような気がした。
 俺がそんな風になっているのを知ってかしらずか、美紀が俺の胸に体重を預けると、その
ままベッドに倒れこむ。
 ……やばい……理性が、なくなりそう……。

  美紀  : 涼……。
  涼   : ……。

 美紀の顔がどんどん近づいてくる。
 だが、その直後、俺の身体がうつ伏せにされた。

  涼   : ? み、美紀……?
  美紀  : 報酬の前に……さっきの続きよ!
  涼   : いたたたたたたっ!

 なんでだか良くわからんが、コブラ固めをかけられた。
 何度かベッドを叩いてギブアップをしているのにもかかわらず、しばらくかけられ続けた。

  涼   : ……。
  美紀  : 大丈夫、涼君?
  涼   : ……死にそう……。
  美紀  : 溜まりに溜まった覗きへの怒りの結晶、そんなに喜んでくれるなんて♪
  涼   : 喜んでねぇ……。

 マジで腰が逆に曲がりそうだった。

  美紀  : で、そろそろ報酬を貰いたんだけど。
  涼   : 今の俺に何が出来ると思うんだ?

 今の俺はダメージがでかすぎて起き上がる事すらできないんだぞ?

  美紀  : そのままじっとしてて。
  涼   : ?

 気付けば、美紀の顔がすぐそばにあって、唇に柔らかい感触があった。
 それから数秒後、美紀がゆっくりと離れていく。

  涼   : ……美紀。
  美紀  : あんたが前に私にした事よ。忘れたとは言わせないわよ。
  涼   : ……忘れるかよ。

 あの後のことは結構辛かったけど、今はお互いが前進するいいきっかけになったと思って
いる。

  美紀  : あんたのことは嫌いじゃない。でも、まだ本気で好きになれるかわか
        らない。
  涼   : やっぱり、まだハルのこと?
  美紀  : うぅん。実を言うと、もう整理はついてるの。でも、不安要素はまだ
        あるのよ。
  涼   : ?

 俺は腰が痛いのも忘れて、起き上がる。

  美紀  : あんたのことよ。
  涼   : 俺?
  美紀  : あんたって、時々百合佳さんと仲良さそうに話してるでしょ?
  涼   : 実際、悪くないしな。
  美紀  : あんたの心の中には、まだ百合佳さんがいて、私をその代わりにしよ
        うとしてるんじゃないか、って。
  涼   : ……お前、バカか?
  美紀  : なっ!?
  涼   : なんで俺がそんなことするんだよ。俺はお前が好きなんだ。お前は誰
        の代わりでもないんだよ。
  美紀  : ……。

 大切な人は代わりが利かない。
 それは痛いほど知っている。

  美紀  : 信じて、いいの?
  涼   : 俺はそこまでバカに見えるか?
  美紀  : ……そっか。じゃあ、証拠見せてくれる?
  涼   : 証拠?
  美紀  : そう……証拠。

 美紀がもう一度俺を押し倒してくる。
 さっきのあれをもう一度やるのか、とか思わないでもないけど、今度はそういうわけでは
ないようだ。
 ……後、誰かが邪魔しに来るんじゃないかという不安もあったが、そういうこともなかっ
た。



 朝、目が覚めたら美紀の顔がすぐ近くにあった。

  美紀  : おはよう、涼。
  涼   : ……おはよう。寝てないのか?
  美紀  : ちゃんと寝たわよ。あんたより早く目が覚めただけ。
  涼   : そっか……。

 美紀と話してると、夕べの事を思い出してきた。
 そのことを思い出すと少し恥かしい。

  美紀  : さ、早く着替えよ。西守歌ちゃん達が来ないうちに。
  涼   : あ、あぁ……。

 ……ま、美紀が気にしてないようだし、普段通りに振舞うか。



 チェックアウトを済ませ、来た時と同じように西守歌の自家用機で帰る。

  笑穂  : 随分と機嫌が良いじゃないか、守屋。
  美紀  : そう?
  明鐘  : 兄さんと何かあった?
  美紀  : ま、友達以上恋人未満の関係から少し進んだ、って感じかな?
  西守歌 : 涼様、少しお話が……。
  涼   : 一夫多妻制にするとか言い出すなよ。
  西守歌 : ……どうしてわかったのでしょうか……?

 ……本気でやるつもりか?

  美紀  : 西守歌ちゃん。
  西守歌 : はい?
  美紀  : 私の涼をたぶらかしたらただじゃおかないからね♪
  西守歌 : そういう堂々とした宣戦布告をされますと……。

 ……諦めてくれるのか?
 それとも……。

  西守歌 : たぶらかしたくなりますわ♪ 涼様〜!
  涼   : お前はなにを聞いていたんだ!?

 美紀との関係が進んでも、周りの騒ぎはまだまだ荒れそうだ。


                                              美紀編 Fin.


Yes!! 朝チュンっ!!!(笑
……え、違いますか?
や、Φなる・あぷろ〜ちが良い子のゲームだとしても、
少女漫画には当たり前のように出てくるのオッケーですよ!?(ぉ
(ゲーム業界は自主規制が厳しいのでダメらしいですけど)
幼なじみ、良いですねぇ……。
私にもそんな娘さんがいないかなぁ……。(マタソレカ

ちょっとした焼き餅は、おとこのことしては嬉しいモノです。
あまりすごいのは困りもの……なのかどうかの実体験はありませんが。(苦笑

<<Comment by けもりん>>


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