SHUFFLE! SS
メイドvs幼馴染 ── セージの料理
震天 さん
「セージにお願いしよう」
「さっすが稟さま♪」
「そ、そんな……稟くん……」
満面の笑みのセージに対し、楓はこの世の終わりを目の当たりにしてしまったように青ざめてしまっている。
しまった、先に理由言っておけばよかったか?
今の楓はなにやらかすかわからないし……。
「……私、逝きます……」
「お、おい、楓? 今、なんか不吉な文字使わなかったか?」
「安心してください……。稟くんに迷惑を掛けないよう、私一人で、お母さんの元へ逝きます!」
と、いつから持っていたのかは知らんが、楓は包丁を自分の首に突きつける。
「逝かんで良い! 良いから落ち着け話し聞けー!」
「えっと、この場合、死因は料理だったりするのですか?」
「というより、お兄ちゃんのお世話が出来なくなった、が原因だと思う」
「そこの傍観者二人も冷静に解説してないで楓を止めてくれ!」
「ああ、そうでした! 二人とも、動かないでくださいね!」
セージがわずかな助走と共に俺達に突っ込んでくる。
ま、まさか……!
「セ、セージ! ち、ちょっとタ――」
「電光石火! サンダーーーーキーーーーック! 微弱!」
本人が言った通り、確かにサンダーキックはそれほどの威力はなく、楓が持っていた包丁を上の方に弾き飛ばし、
「あ……」
楓の小さな驚きと共に、上に飛んでいった包丁がそのまま落下して……。
とすっ☆
「……」
「…………」
「………………」
俺の眼前約1cmの所を通過し、床に刺さった。
「……え、え〜っと……結果オーライ、って事で」
「もう少し穏便な止め方はなかったんですか?」
「あたし、なんでもサンダーキックで解決しちゃうので♪」
そんな満面の笑みで胸張って言われたら思わず頷きそうになっちゃうじゃないですかい!
「せ、せめて説得とか何とかしようと思わないんですか?」
「でもあの場合は有無を言わさずに、まずは凶器をどうにかするべきだと思いましたので」
……一応、そこまで考えていたんだ……。
ま、方法はどうあれ、楓が止まったんだから、やっぱり結果オーライ、か?
「楓、怪我はないか?」
「はい……でも、私、もう生きている意味が……」
だから、泣くなって。
大体、料理を任せないだけでそんな大事に発展するんですか!?
とりあえず、楓を説得しよう。
大丈夫、俺には神界と魔界のプリンセス(もう、王様達じゃダメだな。これ重要!)がついてるんだ!
特にネリネ!
「いいか、楓? 俺は別に楓の料理を否定したわけじゃないんだぞ?」
「え……? そう、なんですか?」
「あぁ。楓の料理がすごく美味いのは確かだ。俺がちゃんと保証する。
でも、セージの料理も負けないくらい美味いし、久しぶりに食べたいと思った。
それに、セージが料理をやってくれれば、楓だってその分休めるだろ?」
「でも、私は稟くんのお世話を……」
「俺のためにやってくれたことで身体を壊されたら、俺はきっと後悔する。楓はそんな俺を見たいのか?」
「そ、そんなことは!」
「じゃあ、わかってくれ」
俺は楓をちゃんと落ち着かせるため、優しく楓の頭を撫でてやった。
楓は気持ちよさそうに目を細め、落ち着いてくれた。
でも、やっぱりどこか寂しそうだった。
それと同時に、背後からなんとも言えない視線を感じ、振り返ってみると、セージとプリムラが俺をじーっとみていた。
正確に言うと、楓の頭を撫でている俺の手を。
「楓お姉ちゃん、羨ましい……」
「あたしもなでなでしてもらいたい……」
……普通、俺に聞こえるように言うか?
しかも、そんなに羨ましがるようなことか、これ?
「稟くんがそういうのでしたら。でも、やっぱり、お料理ができないのは……」
「うっ……」
……これはやっぱり、どちらか一人に任せようとしたのが失敗だろうな。
なら、二人の負担をもう少し減らし、なおかつ、二人の要望を受け入れるには……。
「セージ、ごめん!」
「え? あ、あの……いきなり謝られても、何がなんだかわかっちゃったりしますが、
せめて明確な理由を言ってから謝っていただけますか?」
「ま、まあ、そうなんだが、先に謝っておいた方がいいかな〜、と。
セージ、悪いんだけど、料理は楓と二人で、ってことにしてくれないか?」
「稟くん……」
「まぁ、稟さまならそういうと思っていました。あたしは構いませんよ、楓様と一緒で。
それに、楓様と一緒に料理することで、あたしも稟さまの好みを知ることができますし」
「そ、そうか。楓もそれでいいか?」
「は、はい! セージさん、ありがとうございます!」
良かった……。
何とか丸く収めることができた。
それもこれも、神王様と魔王様にお祈りしたのを撤回して、シアとネリネに祈ったのが効いたんだ、間違いない。
「それで、稟さま。代わりと言ってはなんなんですけど……」
セージが恥ずかしそうにもじもじしながら上目遣いで俺を見上げる。
「ん? なんだ? 何でも言っても良いぞ」
「で、では! 稟さま、あたしの頭を撫でてください!」
「へ?」
なんか、勇気を振り絞って告白します! っていう雰囲気だったから何を言うかと思えば……。
「それくらい、お安い御用さ」
ま、こんな簡単なことなら、いくらでも喜んでやるさ。
「えへへ♪ やっぱり、稟さまのなでなで、気持ち良いです」
「そ、そうか?」
「はい♪ あ、そうだ! 稟さま、あたしが作った料理が美味しかったら、なでなでしてください!」
「え?」
「そうです! それ名案です! それ決定しました♪」
なんか、勝手に決定してしまったが、まあ、別にとって食われるわけじゃないし、構わないが……。
「セージさんだけはずるいです! 稟くん、私にもお願いします!」
「え、あ、あぁ……」
楓の真剣さに反射的に頷いてしまう。
ま、断る理由はどこにもないけどね。
そういや、ネリネも頭撫でられるの好きだったよな……。
「う〜……」
「……どうした、プリムラ?」
「……私も、料理する」
「は?」
「私も料理作って、お兄ちゃんになでなでしてもらう!」
「そ、そうか……が、がんばれ、よ?」
これは、応援すべき……だよな?
プリムラは両手を握り締め、その決意を表していた。
……料理を作る人間が3人か……。
量がかなり増えそうな気がする……。
「ところで、皆さん」
「ん?」
「はい?」
「なに?」
「お時間、よろしいんですか?」
「「「え゛……?」」」
セージの言葉で一斉に時計を見る俺たち。
時計の針が示していた時間は、8時ちょっと前……。
「って、なにー!?」
「い、いつの間に!?」
俺が起きたときなんかまだ5時半だったのに、何でもうこんなギリギリなんだよ!
うわっ、朝飯食ってる暇なさそう……。
ネリネが迎えに来てくれてもよかったのに……って、そういや今日は日直で先に行くって言ってたな。
「後悔してる場合じゃない。急いで支度して行かないと!」
「えぇっ!? あ、朝ご飯どうするんですか!?」
「あぁ〜……んじゃ、悪いけど、そのまま弁当箱に詰めてくれ。学校で食うから」
「は、はい……」
少し悲しそうな顔をするセージだが、今は本当にヤバイ。
俺は心の中で手を合わせて謝り、急いで支度を終らせ、楓とプリムラが出てくるのを待って、全速力で学校に向かった。
もし、セージが時間を気にしてくれなかったら、確実に遅刻していた。
俺はもう一度、心の中でセージの手を合わせて、感謝した。
……まあ、今回の騒動の発端もセージだったけど。
Fin.
……いや、二人の王女様に祈るのもどうかと思ってみたり。
届いてしまったら、きっと二人とも押しかけてきて阿鼻叫喚図が出来上がるんじゃ……。(笑
ネリネも悪魔っ娘なあかネリネなわけですし♪
ところでネリネが紅いってことは、プリムラも悪魔っ娘風味になるのでしょうか。
……や、対抗意識メラメラのプリムラには、十分尻尾が見えそうですけど。(ぉ
<<Comment by けもりん>>
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