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  メイドvs幼馴染 ── 料理は楓

                    震天 さん



「楓しかいないだろう」

「あ、ありがとうございます!」

「そ、そんなああぁぁっ! 稟さまはあたしの味方だと思っていたのに〜!」

「いや、勝手に味方にされてもあれなんだが、これにはちゃんとした理由がある。
 あるからとりあえず、足の素振りだけはやめてください」



 納得できなかったらそのままサンダーキックが放たれそうなんですが……。

 あれ、傍から見ても痛そうなんだよな……。



「あ、ご心配なく。納得できなかったら、フォーベシイ様を蹴りにいきますので♪」



 それもどうかと思う。

 まあ、おじさんが標的なら別にいっか(←無責任)。



「でも、あまりに酷い理由ならこの場で、ということになりますが、よろしいですか」

「あの、せめて疑問符付けてくださいませんか?」



 ほぼ決定してるように聞こえるから物凄く怖い。



「それで、これでもかって言うくらい納得できる明確な理由を早く言ってください」

「あ、あぁ。二人の料理の腕はよくわかってる。
 だけど、やっぱり楓は俺の好みを理解してるし、そういう点ではやっぱり、な」

「好み、ですか……。こればっかりは確かに、アドバンテージのある楓様が有利ですね。
 納得しました」

「ほっ……」



 よ、良かった〜……。

 特に争うことなく丸く収まったようだ……。



「でも、稟さま。あたしも時間さえあれば稟さまの好みを理解できます。
 そういう長い目で見ても、楓さまが料理担当ですか?」

「あなた、さっき納得したって言いませんでした?」

「言いました。
 ですけど、やっぱり趣味であり、生き甲斐である料理を禁じられるというのは我慢できません!」



 ……納得、してない……よね?

 誰だったでしょうか、メイドはご主人様の言いつけを守る種族といったのは。



「お兄ちゃん、この人……」

「は、はは……さすが、魔王のおじさんの奥さんになるはずだった人だよな……」



 もう納得してようとしてまいと、結局は料理を作りたいと、そういうわけなのね……。



「で、でも、稟くんの決めたことですし……」

「それもそうなんですけどね。
 でもあたしって、ストレス溜まると足癖が途端に悪くなるんですよ♪」

「そのストレスの捌け口として一体誰が選ばれるんでしょうか?」

「それはもちろん、身近な丈夫そうな人、我慢強そうな人、この世からいなくなっても問題ない人、etc」



 前から順番に、2大おじさん、俺、樹……。

 うわ、しっかりと俺リストアップされてるし!



「セージさん、それ、脅しなのではないですか?」

「そんな、あたしが稟さまを脅すわけないじゃないですか〜」



 けらけらとすごく楽しそうに笑うセージ。



「あたしなりのお願いです。
 断られたら、サンダーキックで息の根を止めて、あたしは生きちゃうかもしれませんよ、って言うおまけ付ですけど♪」

「それ、世間一般では脅しっていうの知ってました?」



 あぁ〜、もう、楽しそうなわけだ。

 人間、遠足当日より、その前日の方がテンション高いし、楽しそうだもんな……。



「お兄ちゃん、私思ったんだけど……」

「ん?」

「二人の大好きなことをどちらか一方にだけやらせようとしたのが間違いだったんだと思う」

「……プリムラ、それどこら辺から感じてた?」

「お兄ちゃんからこの騒動の原因を聞いた辺りから」

「……」



 プリムラも、たくましくなったな……。

 いや、誰かに似てきたのか?

 そういや、悪い見本が結構いたりするよな……。

 樹とか麻弓とかおじさん達とか。



「んじゃ、炊事に関しては当番制にするか」

「それが妥当といえば妥当ですね」

「私、稟くんに選ばれたのに……」



 ……確かに、楓に料理を任せようとした手前、何かで差をつけとかないとそれはそれで問題だよな……。



「とりあえず、月、水、金、日、は楓が、火、木、土はセージがそれぞれ料理を作る担当とする」

「でもそれって、楓さまが二日続けて料理作る日があるじゃないですか」

「元々、最初は楓に料理を任せようとしたんだ。それくらいの差があって当然じゃないか?」

「稟くん……♪」

「……わかりました。お料理を作れなくなるよりは万倍マシですからね。
 居候の身なのでこれ以上わがままは言えませんね」



 くいくい……。



 俺の服の袖をプリムラが少し引っ張って、



「結構、わがまま言ってたと思うのは、私だけ……?」



 と言ってきた。

 安心しろ、プリムラ。

 俺も今、そう思っていたところだ。



「でも、今日は月曜日ですから、料理当番は私……」

「とりあえず、朝ごはんはもう作っちゃったので、今朝は見逃してくださいね」

「わかりました。じゃあ、私はお弁当作りますね。稟くん、先に朝食食べていてください」

「う〜ん……いや、楓が弁当作り終わるまで待ってるよ。 朝飯は皆で食べた方が美味いもんな?」

「うん」

「そうですか。では、少し急いで作っちゃいますね」



 楓がてきぱきと弁当の準備を進めていていく。

 とりあえず、嵐は去った、というところか。

 ふああぁぁ〜……安心したらまた眠くなってきた……。



「稟さま、もしかしてまだ眠いですか?」

「ん……? ああ、こんなに早く起きたことないから、ちょっと眠いかな?」

「でしたら、あたし今やることないですし、添い寝して差し上げましょうか♪」

「はあああぁぁぁっ!?」

「「えええぇぇぇっ!?」」



 さらっととんでもないことを仰るな、このお方は。

 時代を超えてきても、セージはセージな訳ね。



「そ、それじゃ、私も稟くんと一緒に寝ます!」

「か、楓!?」

「二人ともずるーい! 私もお兄ちゃんと寝るの!」

「プリムラまで!?」



 ああ〜……あの二人は結局、俺の前言撤回を受け入れてくれなかったって訳だ……。

 なんだかんだで、俺の意見は完全にどこ吹く風、な感じで無視され、決して広くないベッドに4人で一緒に寝ることに。

 まぁ、この2度寝が遅刻に繋がったのは言うまでもなかった。


                                                        Fin.



……掃除とお洗濯係は分担制、お料理係は交代制、そして──添い寝係は三人ともっ!?
ええと、是非とも稟にサンダーキックを。
や、でもサンダーキックもある意味で愛情の印なので、むしろ私に……。(ぇ

ところでセージさんがこっちにってことは──ネリネは紅いネリネなわけですね。
……あかいねりねが一番お好みだったりしますけど♪(マテ

<<Comment by けもりん>>


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