Φなる・あぷろーち SS

【まえがき】
今回のこのSSはゲームとはほとんど関係ないお話ですが、設定はほぼそのまま。
ツッコミどころを多くしてみたので、ツッコミながら読んでみてください。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、どうぞ。

 Φなる・あどべんちゃー 

                         震天 さん


 とある世界、とある国。

 プラーヴィという国にはそれはそれは美しいお姫様、明鐘姫がいました。

 彼女は極普通のまっすぐな青年、涼に好意を抱いており、城のみんなに隠れて密かに会いに行っていました。

 ところがある日、突如現れた悪の大魔王、春希が姫をさらってしまいました。

 困り果てた王様は偶然街に来た一行に姫の救出を依頼しました。

 その一行とは!



「お金と権力で全て解決! Φなる・レッド! 益田西守歌!」

「元気が取り柄、勢い任せで固め技! Φなる・イエロー! 守屋美紀!」

「特長は特にない。Φなる・ブルー。陸奥笑穂」

「みんなを和ませる抱擁力。Φなる・ホワイト。芽生百合佳」

「おっちょこちょいがチャームポイント? Φなる・ピンク! 芽生あやめ!」

「私達5人揃って――」

「「「「「あぷろーち戦隊! Φなる・レンジャー!」」」」」



 ドッカーン!



 決めポーズを決めた5人の後ろにカラフルな爆煙が立ち昇る。



「って、待てーい!」



 そこへ、涼が突っ込みに入った。



「なんでしょう?」



 西守歌は首を傾げた。



「何さも当然のように戦隊モノやってるんだ!? これは一応アドベンチャー!
 冒険物! ファンタジー! その辺理解してやれ!」

「涼。ちょっと細かいわよ」

「いきなりこの話の趣旨を曲げるなといってるんだ!」

「それもそうですわね。では、テイク2!」







 とある世界、とある国。

 プラーヴィという国――



「って、そこからか!?」



 ――その一行とは!



「金と権力は使わねば損、がモットー。勇者、西守歌!」

「色気より食い気。それは元気の証。武闘家、美紀!」

「頑固者の魔法使い、笑穂」

「みんなをやさしく回復。僧侶、百合佳」

「百発百中狙います! アーチャー、あやめ!」

「私達――」

「「「「「Φなる・冒険団!」」」」」



 彼女達だった!

 数々の武勇伝を持つ彼女たちに、王様は安心して姫の救出を依頼しました。

 そして、涼はどうしてもついて行くと言い張り、西守歌はやむなく、連れて行くことにしました。



「では、涼様は村人A、ということで」

「村人Aってなんだよ!? 俺の職業は村人なのか!?」



 こうして、村人を加えたΦなる・冒険団は明鐘姫を救うべく、大魔王春希のいる魔王城へと向かいました。



「って、無視するなー!」

「諦めろ、水原。この話では、私達が主役らしいからな」

「大丈夫。きっと涼君にも見せ場はあるよ」

「というか、あるといいですね」

「うぅ〜……ゲームでは俺、主人公なのに……」







で、魔王城。



「って、はやっ!?」



衝撃の事実!

実は、魔王城はお隣だった!



「……なんじゃそりゃ」

「よく来たな」



で、大魔王、春希様ご登場。



「いきなりラスボスかよ!?」



長い刀を携え、どこからともなく姿を現す。



「あなたは……サーヴァント?」

「……違う」



 それは最近アニメ化した某PCゲームに出てくる英霊です。



「お前たちが、あの名高いΦなる・冒険団か」



 春希は何事もなかったかのように話を戻した。



「あら。大魔王様のお耳に入っているとは、光栄ですわ」

「それで、お前たちの目的は、これか?」



 そういって、春希は縄で縛っている明鐘を引っ張り、西守歌達に見せ付ける。



「! あ、明鐘ーっ!」

「兄さーん!」



 ブッブー!



「え?」

「鐘ちゃん。気持ちはよくわかるけど、今はそれ禁止ね」

「あ、そっか。この世界では兄さんとは兄弟じゃないもんね」

「というわけで、水原から。テイク2」



 春希は縄で縛っている明鐘を引っ張り、西守歌達に見せ付ける。



「! あ、明鐘ーっ!」

「涼ー!」

「こいつを助け出したくば、この俺を倒してみるんだな」



 春希は明鐘を玉座の前に座らせると西守歌達と対峙する。

 凄まじい魔力を放つ春希のオーラはまるで、龍のようだった。



「……さすがハルさん。なんか、戦う前から負けちゃいそう……」

「水原、危ないから下がっていろ」

「明鐘を前に、引き下がることなんて出来るか!」

「……だが、村人は何のスキルも持っていないだろう?」

「!? しまったー!!」



 村人AはNPCで足手まといだった!



「あ、先輩が本気でへこんだ」

「さぁ、みんな。プレッシャーに負けず、勇敢に戦うのです!」

「……で、西守歌ちゃんは何でそんなに離れてるの?」

「まずは仲間から倒れていき、そこで始めて、私のような主役の見せ場になるのですわ」

「それってずるくない!?」

「冒険物の王道パターンですわ!」

「それでも、力を合わせて戦うものだ」

「そうだよ。最初から逃げる勇者はいないよ」



 Φなる・冒険団は仲間割れを始めた。



「……このまま攻撃したら終わりそうな気がするが」

「でも、ハル兄さんしないよね?」

「……真の悪役というものは、実は善人だったりする」

「あ、確かに。ヒーロー物でも主人公たちの決め台詞を最後まで待ってくれるもんね」

「だが、ピンチにならないと戦わないようなので、ピンチにしてやろう」



 大魔王春希の攻撃。

 春希はゆっくり剣を構え、目を閉じた。



「秘剣、ツバメ返し!」



 美紀、笑穂、あやめに会心の一撃。



「「「きゃぁぁぁぁっ!」」」



 美紀、笑穂、あやめは力尽きた。



「今の技は……やっぱり、サーヴァント!?」

「そのネタをそこまで引っ張るな」

「い、一度の攻撃で3人も戦闘不能に……春希さん、本気ね」

「百合佳。その3人の介抱をしてやれ。それで俺は、このお嬢さんと一騎打ちになれる」

「百合佳さん。お願いします」

「……俺、完全に忘れられてる……」



 涼は所詮、村人だった。



「なにを!? だったら、俺も本気だ! 明鐘のピンチになったら、俺は無敵になるんだ!」

「頑張って、兄さん♪」



 ブッブー!



「涼様。残念ですが、それは初期の段階では考えられていたことは事実なんですが、
 今回、その設定はありません」

「な、なにー!?」

「ですがご安心を。それに変わる素晴らしい設定がございますわ♪
 ここで、一瞬だけ復活した美紀様。よろしくお願いします」

「うっしゃぁぁぁっ!」



 美紀の攻撃。

 美紀はコブラツイストを繰り出した。



「ぐあぁぁぁぁぁーっ! ……がくっ!」



 涼は9999のダメージを受けた。

 涼は力尽きた。



「あぁっ!? 涼様!? ……春希様、よくも……よくも涼様を!」

「いや、今攻撃したの、美紀だろ?」

「涼様。力尽きた人はしゃべっちゃいけません」

「はい、すみません」



 ばた!

 涼は改めて戦闘不能になった。



「……とりあえず、俺が涼を倒した。そういう設定でいいんだな?」

「はい」

「明鐘もそのつもりでやれ」

「う、うん……」

「では……ほう、それ程その男が大切か?」

「涼様と私は……深い愛で結ばれているのです!」

「えぇー!?」



 明鐘は精神に3000のダメージを受けた。



「ちょっと待てー!」

「ですから涼様。力尽きた方は……」

「今はちょっと置いとけ。それより、俺がいつお前と深い愛で結ばれたよ!?」

「それは、ここに至るまでの間に、あらゆる艱難辛苦を乗り越え、
 いつしか二人は愛し合うようになったのです!」

「あらゆるってな……ここはスタート地点の隣だろうがー!」

「細かいことは気にしないお約束ですわ」

「もういい! こうなったら、設定なんか知るか! 明鐘は俺が助けるんだー!」



 涼は春希に特攻していく。



「うおぉぉぉぉぉっ!」

「愚か者め。今一度、我が秘剣を……!」

「涼様、危ない!」



 西守歌はバズーカをどこからともなく取り出し、発射する。

 放たれた弾はまっすぐ、涼に向かっていき、そして……。



 ドッカーン!



「はうあぁぁぁぁっ!?」

「兄さん!?」



 涼は即死した。



「ふぅ……危うく涼様が逝ってしまうところでしたわ」

「西守歌ちゃんがトドメさしても一緒だと思うけど……?」



 西守歌は春希の前に立ち、冷たい目で春希を睨んだ。



「春希様……私を本気させてしまったようですわね」

「涼君、ほら、ツッコミ入れないと」

「……もう、何もいう気が起きん」



 西守歌は剣を持たず、目の前でそれを構える格好をする。

 そして、西守歌の手に風が集まりだし、辺りに嵐のような風を巻き起こす。



「西守歌ちゃん、まさか……!」

「私の剣、受け切れますか!? アサシンのサーヴァント!」

「違うと言っている」

「……なぁ、あれ……いいのか?」

「仕方ないよ。誰かさんの気まぐれだし」



 西守歌の手に黄金の剣が姿を現した。



「むっ!?」

「エクス……カリバー!」



 振り下ろされた剣から黄金の魔力が放たれ、春希に向かっていく。



「ふん、甘い!」



 しかし、春希の一振りがそれをかき消した。



「あぁっ!?」

「か、かき消した!?」

「そんな……」

「ふっ。そこまで驚くことはないだろう」

「そんな……春希様! これで倒されていただく予定でしたでしょ!?」

「って、そっちかよ!?」

「あぁ。そんな設定があったな。だが、俺はそんな設定を認めるわけにはいかない」

「なぜです!?」

「なぜなら……俺が完璧すぎる人間だからだ」

「……は?」

「第一、一発限りの大技を喰らって倒されるなど、そんなもの、面白みの欠片もない。
 俺を倒したければ、もっと予想外なことをして見せろ」



 つまり、セイバーさんの必殺技を使うことは、春希の予想内の出来事だった。



「……そうですか。では、仕方がありません。こちらも奥の手を使うことにしましょう」



 そういって、西守歌は百合佳の元に歩いていき、百合佳を立たせた。



「本当なら、黒服の人達を大勢呼び寄せ、人海戦術で倒すとか、
 ミサイルを持ち出したり、戦車を持ってきたり、方法は色々ありますが……
 あまり長くしてはあれなので、これで決めます!」



 西守歌は百合佳を羽交い絞めにし、百合佳の首元に剣を突きつける。



「え、ちょ、西守歌……ちゃん?」

「ごめんなさい、百合佳様。こうでもしないと、いつまで経っても決着がつかなそうなので」

「でも、これで春希さん、負けを認めるかな?」

「認めますわよね? 春希様?」

「……百合佳を盾にしてどうする気だ? この世界では俺と百合佳は敵同士」

「設定なんか、この際どうでもいいではないですか」



 なんと!

 西守歌は根底を覆してしまいかねないことを口走った!



「さ、春希様。降伏を」

「……仕方ないな」

「春希さん……」

「俺にはまだまだ百合佳が必要だ。今失うわけにはいかん。負けを認める」

「ありがとうございます。涼様! 私やりましたわ! 愛の力で!」

「どこに愛があった!? 仲間を盾にして何が愛だ!? って言うかな、お前本当に勇者か!?」

「どこからどう見ても勇者じゃないですか! エクスカリバーだって持ってます!」



 ……。



「……あの、今の間はなんでしょう?」

「勇者にふさわしくないっていうことじゃないかな?」

「そんな!? 私の何がいけないというのですか!?」

「主に、性格?」

「性格なんか目に見えません!」

「とにかく、これで明鐘の救出が出来る! 明鐘〜!」



 涼は明鐘の元に走っていき、明鐘の縄を解く。



「兄さん……うぅん。涼!」

「明鐘……無事だったか?」

「うん……来てくれるって、信じてた」

「……ほとんど、何も出来なかったけどな」

「うぅん。来てくれただけで、嬉しいの」

「明鐘……」

「涼……」

「「ひしっ!」」



 二人は抱き合った。



「はい。そこまで!」



 西守歌が二人の間に割って入ってきた。



「な、なにするんだ!?」

「残念ですが、お二人が結ばれることはないのです」

「ど、どうして!?」

「お二人は……血を分けた本当の兄妹なのです!」

「な、なんだってー!?」

「な、何かの間違いでしょ!?」

「いいえ。設定上、間違いありません」



 ……以上、物凄く説明になっていない説明でした。



「そんなぁ……今度こそ、今度こそ兄さんと結ばれるって期待してたのに……」

「明鐘……」

「ゲーム、ドラマCD、小説、アニメ、ファンディスク。
 全部、兄弟だからって理由で引き裂かれて……」

「……明鐘さん。その気持ち、すごくわかります。ですが、ご安心を。
 涼様は必ず、私が幸せにしますから」

「………………なんで?」

「だって、私と涼様はゲームとアニメを見ていただけばわかる通り、結ばれる運命にあるのです!
 ならば当然、このお話でも私と涼様が結ばれるべきなのです!」

「勝手なこと言うな!」

「そうよ!」



 復活したものの、なかなか話に参加できなかった美紀が割り込んできた。



「それを言うなら、幼稚園のころに『私、涼君のお嫁さんになる〜』って
 両親の前で宣言した私にもその権利があるわ!」

「だったら、水原の直接、付き合ってくれと言われ実際付き合った私にも権利があると思わないか?」

「先輩。私はどうですか? 私との可能性は未知数ですよ?」

「みんなずる〜い! 兄さん。兄さんは私を見捨てたりしないよね?」

「ちょ、ちょっと待て! みんな、この話はゲームとはほぼ関係ない……」



 ……また何かややこしくなりそうなので、このお話はここまで。

 明鐘姫は無事に救出されました。

 めでたしめでたし。



「って、こんな中途半端な終わり方するなー!」

「涼様! お話はまだ終わっていませんわ!」

「勘弁してくれ〜!」

                                   Fin.


ふむ……。どちらかといえば戦隊モノの方が似合いs(ry。

すべての設定が涼をいぢるためにあるような気がします。
……くぅ。羨ましいっ。(ぇ
や、基本的に女の子にいぢられたいなの方です♪(笑

<<Commnt by けもりん>>

無断転載厳禁です。
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