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二人の歌姫

                    震天 さん


 辺りが白銀に染まる寒い冬が去り、だんだん暖かくなってきました。

 去年の夏の直前から来た私やシアちゃんは人間界での春は初めてです。

 そして、幼いころから想いを寄せていた方と結ばれるという夢も現実となりました。



「ふあぁ〜……」



 私の隣であくびをしているのが私の想い人であり、恋人の稟さま。

 今日は近くの公園ではなく、少し大きい公園でデートをしています。



「寝不足、ですか?」

「いや。春だからだ。春眠暁を覚えず。まったくその通りだ」

「そういえば、ぽかぽかと気持ちいいですからね」

「あぁ。こんな日にひなたぼっこをしながら昼寝をしたら最高に気持ちいいぞ」

「それじゃ、稟さま。こちらへ」



 稟さまの手を取り、芝生の方へ行き、座って自分の膝を勧めます。



「稟さま。よろしければ、お使いください」

「それじゃ、お言葉に甘えて」



 稟さまが私の膝の上に頭を乗せ、ゆっくりと横になります。

 少し前でしたら、こういったことにはまだ抵抗がありましたが、今では極自然に出来てしまいます。



「もう少ししたらまた学校か……」

「学校はお嫌いですか?」

「好きか嫌いで言われたら、好きだし嫌いだ」

「くすっ。どっちですか?」

「学校に行くこと自体は楽しいと思うけど、授業がな……」

「それは、学校ですから」

「うん。それに」

「?」

「ネリネを独り占めできる時間が減ってしまう」

「!」



 ……稟さまはずるいです。

 こんなに自然に、私を幸せにしてくれる。

 ほんの些細な一言。

 当たり前な日常。

 他の人からすればたいしたことのないのかもしれませんが、私がそれらを幸せと感じることが出来る。

 特別なことは……望まないといえば嘘になりますけど。



「……稟さま」

「ん〜?」

「今があるって、幸せなことですね」

「……そうだな。今がないと、幸せって感じられないからな」

「はい。今をくれたリコちゃんに感謝しないといけませんね。そして、今につなげてくれた稟さまにも」

「それじゃ、いっぱい幸せになろう。そうすれば、リコリスも喜んでくれる」

「はい」



 リコちゃん、見えていますか?

 感じていますか?

 私とあなたの心に広がる、この幸せを。



「……ネリネ。歌ってくれないか?」

「えっと、ここで、ですか?」

「うん、ネリネとリコリス。二人の歌が聞きたいんだ」

「……はい。喜んで」



 稟さまの髪を優しくなでながら、歌う。

 この歌はリコちゃんの全て。

 その全てが今、私の中にある。

 だから歌う。

 私達の想いを乗せて。

                                                  Fin.


甘々ですね♪
稟の「ネリネを独り占めできる時間が減ってしまう」なる台詞がもう……。

ネリネとリコリスは二人分。
シアとキキョウのように出てきたりとか出来ない分、
ちゃんと二人分幸せになって欲しいものです。
……や、まて。
ということはリンは二人を一人占めか……。ゆるすまじ。(ぇ

<<Comment by けもりん>>


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