大爆発! 愛と非情の聖夜
震天 さん
年末になると結構イベントが目白押しだったりする。
それは水原家も例外ではない。
例外ではないのだが……問題がある。
「今年は問題だよなぁ……」
教室で俺は頭を抱える。
今まで通りの生活の中でなら、24日はプラーヴィのバイト仲間と友人を誘って
のクリスマスパーティ、25日は家で明鐘と静かに過ごすのが常だ。
だが、今年はそうもいかないような気がする。
「お前の悩みの種は尽きないな、水原」
「少し貰ってくれないか? お嬢」
「それは無理だ」
「じゃあ、美紀は?」
「私だって無理よ。あんたの悩みは私や笑りんには手に余るもん。ハルさんは?」
「ダメだな。ハルの場合、面白半分にうけるだけで問題解決してくれそうもない」
西守歌が来た時、『弄んでやれ』というだけで追い出そうとしてくれなかった。
むしろ、受け入れやがったし。
「ねぇ、今年もパーティやるんでしょ? また呼んでよ」
「もとよりそのつもりだ。お嬢は? 今年は大丈夫なのか?」
「あぁ。もっとも、誰かが裏から手を回してくれたようだが」
「……あいつ、一年経っても成長しないよな」
西守歌が来てもうすぐ一年になる。
俺と美紀とお嬢が3年、西守歌と明鐘が2年、あやめちゃんが今年入学したから
1年。
またこの3人と同じクラスになったところを見ると、結構腐れ縁なのかもしれない。
ちなみに西守歌はやっぱり俺たちと同じ授業を受けるのは無理と判断し、渋々も
との学年に戻る事にした。
「で、やっぱり彼女も呼ぶのか?」
「俺はやめてくれといったんだが、百合佳さんが既に招待状を送ったんだ。そう
だ、今のうちに渡しておくよ」
ポケットに入れておいた二つの封筒を渡す。
バイト仲間以外の人がパーティに参加できるための切符だ。
渡しておかないと誘っても入れなくなる。
「随分おしゃれな封筒だな。水原には似合わんな」
「明鐘が作ったんだ」
「でも、これで今年も美味しい物が食べられるよぉ〜♪」
「相変わらず色気より……」
「食い気よ。当然じゃない」
「守屋らしいな」
毎年食いに来てる様な物だしな。
今更って感じでもあるし。
「まぁ、美味しい物はさておいても、今年は一波乱ありそうなのよねぇ……」
「水原。あるつもりで何かしらの対策を立てておいたほうが良いぞ」
「そうするか」
所変わって2年の教室。
「あの、西守歌ちゃん……なにしてるの?」
「なにって、今度のクリスマスパーティの準備です」
「……そうは見えないんだけど……」
どう見ても何かの仕掛けだよ?
私は機械とか詳しくないから何かはわからないんだけど、ちょっと危険な香りが
する。
「ところで明鐘さん。少しお聞きしたい事が」
「なに?」
「パーティのお料理、誰が御作りになるのか決まっているのですか?」
「今のところまだ見たい。出来れば、料理のレパートリーが多い人に頼みたいっ
て、ハル兄さんが言ってたけど」
「でしたら、私にお任せください♪ 古今東西、和洋中の料理はほとんど作れま
すわ」
「ホント、西守歌ちゃんってなんでもできるね」
私と同い年とは思えないな。
他には頭も良いし、運動神経も良いし、本当に理想的な女の子だよね。
「そんな事ありませんわ。私、性格も人間も歪んでますから♪」
「……そんな、得意げに言う事じゃないような……」
「ですが、明鐘さんがそこまで私のことを評価してくださったので、少しだけ情
報を」
「? ……西守歌ちゃん、パーティで何かする気?」
「ええ、少し」
不適に笑う西守歌ちゃんが少しだけ怖かった。
さて、パーティ当日。
本当は準備やらなんやらしなくてはならないのだが、ハル同様追い出されてしま
った。
ハルは当然の如く、いつもの指定席で仕事をしようとしていたところ、百合佳さ
んに追い出された。
『邪魔だから』と。
「ハルも大変だな。店の外でまで仕事をやるなんてさ」
「今が一番忙しい時期だ。パーティが始まればそれどころではなくなる。今のう
ちにやれる事はやっておかないとな」
「で、お嬢はなんでこんなに早く? パーティが始まるまでまだ1時間以上ある
ぞ?」
「なに。家にいてもやる事がないのでな。それに、家にいたらいたで兄貴がうる
さい」
もしかして、まだ納得してないのか?
お嬢の縁談話は一時保留という事で話がついたと聞いていたんだが……。
「兄貴も往生際が悪くてな。まだいくつかの見合い写真を持ってくる」
「……それで?」
「『水原以上の良い男を連れてこないと、うける気は無い』と言って全て却下だ」
「ならいい」
条件に関してはあえて触れないが、お嬢が自分の意思で選んでいるんだ。
押し付けられた結婚を受け入れるのではなく。
「冷たいな、水原。私は今のところ、お前にしか興味はない、と言っているのだ
ぞ?」
「だからスルーしたんだけどな……」
「色々弄んでいるようだな。それでこそ俺の被扶養者だ」
「……頼むから言葉を選んでくれよ、ハル」
ま、選んでるんだろうけどさ、最悪だよ、その選択。
「ところで、お前の可愛い彼女はどうした?」
「お嬢。俺には彼女がいないの知ってて言ってるのか?」
「……未だに認める気は無いか。さすが、意地っ張りに関しては私の上を行くな」
「絶対に譲らない」
「では、言い方を変えよう。押しかけ婚約者はどうした?」
ま、妥当な言い方だな。
「明鐘たちと一緒にパーティの準備してる」
「いいのか?」
「……何が?」
別に準備してる分には何も問題ないだろ?
「準備のどさくさにまぎれて、なにかしでかす算段をしている、とそのお嬢さん
は言いたいのではないか?」
「全く持ってその通りです」
「……な、なに?」
あ、あいつ、まさか……料理に一服持ったり、なにか仕掛けを施したりしてると
か?
そんなことされたらパーティが滅茶苦茶じゃないか!
そうなる前にハルが止めるとは思うけど……。
最悪な場合、自分だけ避難して見物しそうだ。
あまりあてにしないでおこう。
「まぁ、彼女も場を弁えるとは思うが、用心はしておいたほうがいいだろ」
「そうなったら、お前が責任を取れよ」
「なんで俺が!?」
「自分の女の面倒くらい見てやれ」
「違うから……」
パーティの準備が終わった頃、美紀もやってきてプラーヴィに入る。
パーティ開始まではまだ少しあるが、メンバーが揃ったので少し早めに始める。
「まずはバイトのメンバーに言っておく。今年もご苦労だった。これからも続け
る奴も、もう少しで辞める者も、それまでは責任をもって仕事しろ。手抜きは一
切許さん。だが、今日から年末は色々あって忙しい。プラーヴィは今日から年末
までは休みだ。だから、今日くらいは羽目を外せ。来年もまた頼むぞ。では、パ
ーティを開始する」
「メリークリスマス! かんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
ハルのパーティ開始の宣言と、百合佳さんの乾杯でパーティが始まった。
「毎年こんな感じで始まるのか?」
「あぁ。俺や明鐘はもう慣れたし、特に違和感ないけど……」
「まぁ、どうでもいいわよ、そんなこと。それより、今年の料理は一層力が入っ
てるわね〜♪」
「私たちに構わず、先に食べてきたらどうだ? 守屋」
「そう? じゃあ、お先に〜」
美紀が目を輝かせながら料理を取りに行く。
「お嬢はいいのか?」
「もう少ししたら頂くさ。ところで、妹さんはどうした?」
「明鐘ちゃんなら、今裏で西守歌ちゃんと着替えてるわよ」
「着替え? 制服に?」
「うぅん。涼君、きっとビックリすると思うよ」
「?」
まぁ、明鐘は気になるとしても、西守歌はどうでもいいか。
「じゃあ、3人には先に渡して置こう」
持ってきていた袋から3つの包みを取り出す。
「クリスマスプレゼントか?」
「当たり。お嬢、確かベランダでお茶するのが好きだったよな?」
「私の場合、好きと言うよりストレス発散だな」
「まぁ、どっちでも良い。という訳で、ティーカップだ」
「ありがとう」
「で、あやめちゃんにはマフラーなんだけど……」
「良いんですか? ちょうど新しいのが欲しかったところなんです」
「そっか。そりゃ良かった」
「ありがとうございます!」
「涼君、私には?」
「えっと、もらい物で申し訳ないんだけど……フランス料理店のディナーチケッ
ト。ハルと一緒に明日どうかな、と思って」
「うわぁ、ありがとう、涼君。明日、春希さんと行って来る」
女の子にプレゼントとかほとんどした事無かったから、喜んでくれるかどうか不
安だったけど、みんな喜んでくれたようで、良かった。
3人にプレゼントを渡したところで美紀が帰ってきた。
「いやぁ、どれも美味しそうだねぇ」
「いくらなんでも取りすぎじゃないか?」
「皆の分よ。さすがに、こんなには食べないわよ、一度には」
何度かに分けたら食うのかよ。
「あれ、笑りん。それなに?」
「水原から貰ったクリスマスプレゼントだ」
「えぇ〜! 笑りんずる〜い!」
「美紀ちゃん。私たちも貰ってるんだけど……」
「あれ? そうなの? じゃあ、涼。当然、私にもあるのよね?」
「あぁ。お前にはこれがいいと思ってな」
袋から一冊の本を取り出す。
「全国各地の美味いもの百選! これを読めばあなたもグルメマスター!」
「おぉ! こんなに素晴らしいものを!? ……涼」
美紀が俺の背後に回る。
「誰がこんなもの貰って喜ぶかーっ!」
「ぐわぁぁぁっ! ギ、ギブ、ギブッ!」
こいつ、なんでこんな鮮やかにプロレス技をかけれるんだぁっ!?
しばらくしてからようやく解放されたが、頭に酸素が回ってないみたいだ。
頭がくらくらする。
「じょ、冗談に決まってるだろう……」
「あんたの場合、本気でやりそうなのよ」
「……して欲しかったのか?」
「んなわけないでしょ!」
「悪かったよ。お前への本当のプレゼントはこっちだ」
「ありがとう。開けて良い?」
「もう技をかけるなよ」
「うん」
美紀が小さめの箱を開ける。
「イヤリング?」
「お前、そういう小物をつけた事あんまりないだろ? それでそれにしてみた」
「ふぅん……」
しばらくイヤリングとにらめっこをして、イヤリングを手に取り、つけてみる。
「どう?」
「可愛いじゃないか。守屋はもう少しおしゃれをしたほうがもっと可愛くなると
思う」
「そうだね。美紀ちゃん、可愛いからそういうのつけるだけで結構変わるよね」
「いやいやいや、そんなそんな」
大したことではないけど、お嬢の言うとおり、いつもと違って見える。
美紀も喋らなきゃ、そこそこ可愛いのに。
「なぁんか、失礼な事思われたような」
「細かい事だ、気にするな」
首をさすってみる。
まだ少し痛いな。
「あぁ……、西守歌ちゃんのようにはいかないわね」
「あんな風になる気か?」
「あそこまでは行く気はないけど……で、鐘ちゃんは?」
「もうすぐ来るよ」
奥に続く扉を見る。
あの奥には西守歌も一緒にいるんだよな。
物凄く不安だ。
西守歌にたぶらかされてないだろうな?
西守歌に変な事吹き込まれてないか?
もしかして、俺を絞め落とす方法を教えられてるとか?
洗脳されてないか?
「なんだかよくわからないですけど、すごく悩んでるのはわかります」
「あの表情は鐘ちゃんをものすご〜く心配してる時の顔ね」
「明鐘ちゃん、果報者だね」
「噂以上のシスコンぶりだな」
「明鐘ぇぇぇぇぇっ!」
俺が明鐘の名を叫んだ時、店内の照明が全て落ちた。
「は?」
「なに? 停電?」
「でも、特に何か以上があったようには思いませんけど?」
「ハル、なんかわかる?」
「ブレーカーが落ちたわけではなさそうだな。誰か、スイッチを入れろ!」
近くにいた人がスイッチをつける。
「? 店長、電気、つきません」
「なに? ……」
ハルが何か考え込む。
心当たりでもあるのかな?
「全員、店内の中央を空けろ」
「?」
「急げ」
ハルの一声で皆が中央から退く。
もちろん、テーブルなども退けて置く。
「なにか始まるの?」
「さぁな。ただ、退けておかないといけない気がした」
「……それだけ、ですか? マスター」
「それだけだ」
それって、ただの勘だよな?
いくらハルがすごい人間だって言っても、今回ばかりは―
「皆様! お待たせいたしました〜!」
「……」
予知能力……?
やっぱりハルは謎がいっぱいだな。
それより、この声は……あのバカか。
「これより、私、益田西守歌と涼様の御令妹、水原明鐘さんによる歌のライブシ
ョーをお送りします!」
「……は?」
「西守歌ちゃんと……」
「鐘ちゃんの……?」
「ライブ……?」
「二人が歌うんですか?」
「水原、大丈夫か?」
「ショックで意識がどこか遠くに飛んじゃってるわね。お〜い! 戻ってこ〜い!」
「はっ!」
今、なんか色々幻影が見えたような気がするんだが?
……なんだっけ?
そんなことより、明鐘があのバカと歌う?
兄さん、そんなこと聞いてないぞ?
そうこうしているうちに、店内の中央に照明が当てられ、そこからステージが上
がってきた。
「春希さん。うちの店にあんな仕掛けあったの?」
「知らん」
ステージの上には二人の人影があった。
そう、明鐘と西守歌だ。
着ているものは……サンタ?
しかも、ミニスカ……。
「あ、明鐘〜……!」
「うわぁ、鐘ちゃんも結構のってるわね」
「二人とも上手いじゃないか。できた妹さんだな」
「ま、まさか……洗脳された?」
「でも、楽しそうですよ?」
「わかった! 明鐘に変装した黒服の誰かだな!?」
「あんたならそんなの、一発で見破るでしょ」
「そうなんだよ……あれはどこからどう見ても明鐘なんだよ……」
「明鐘さん、地は水原さん譲りですね」
「小さい頃からずっと一緒だったもんね、明鐘ちゃんと涼君」
「来年からはクリスマスも営業して二日間だけあの衣装で行くか」
「それだけはやめて!」
そんなことしてみろ。
明鐘目当ての客が物凄く入ってくるじゃないか!
「そうなったら、涼君も春希さんもサンタ姿よね?」
「……」
「ハル、営業する?」
「面倒だな。撤回する」
残念、ハルのそういう姿も見てみたいような気がするんだけど……。
「特定の客の財布と、お前の可愛い妹の晴れ姿を犠牲にするなら構わんが?」
「俺が間違ってました、すみません」
土下座して謝る。
「鐘ちゃんを盾に取られると即座に負けを認めるのよね」
「妹さんのお願いなら何でも聞いてしまうんだから、当然といえば当然か」
「……」
西守歌と明鐘の歌が終わり、拍手が沸きあがる。
「おい、バカ」
「涼様、酷い。愛を確かめ合った私をバカ呼ばわりされるなんて……」
「今すぐ明鐘の洗脳を解け」
「……冗談も通じない……」
んなものを通していられるか。
この世の何より明鐘が最優先だ。
「兄さん、別に洗脳されたわけじゃないよ、私」
「騙されるな、明鐘! お前の今のセリフも、全てこいつに言わされてるんだ!」
「そうだったの……西守歌ちゃん、いくらなんでも、人を洗脳するのは……」
「あの、明鐘さん? 私を一人にしないで頂きたいのですが……」
「くすっ。わかってる。兄さん、怒らないで聞いてね?」
「内容次第では、こいつを家から追い出すぞ?」
「うん、いいよ」
「あ、明鐘さん!?」
「冗談。あのね、私たち、パーティの準備でクリスマスプレゼントを用意してな
かったの。それで、西守歌ちゃんと相談して、私たちの歌をプレゼントにしよう
と思って」
「明鐘……」
「兄さん。改めて、メリークリスマス」
「メリークリスマス、明鐘」
そうだったのか。
明鐘があのバカの腹黒女みたいになったわけじゃなかったのか。
「あのさ、どうでもいいんだけど、二人だけの世界に旅立たないでくれる?」
「途中から完全に二人の世界だな」
「どうして私とではだめなのでしょうか?」
「明鐘ちゃん相手じゃ分が悪すぎるよね」
当たり前だ。
そりゃ、見た目だけなら西守歌も明鐘並に可愛い。
それは認めよう。
だが、こいつの地を知ってみろ。
可愛さ余って憎さ百倍。
まさに言葉通りだ。
「昔の人は本当にいい言葉を作ったものだ」
「何だか私のことをあまり良く言ってない言葉を思い浮かばれたような気がする
んですが?」
「多分、『可愛さ余って憎さ百倍』当たりを思い浮かべたんじゃないか?」
「……当たり。なかなかわかってきたじゃないか、お嬢」
「なぁに、伊達にお前とずっと近くの席に座ってないさ」
「ところで、早いとこそれ、着替えたら?」
「そうですわね」
西守歌が指を鳴らすと、相変わらずどこに待機していたのか、黒服の人たちが簡
易着替え室を持ってきて、西守歌がその中に入る。
そして、5秒としないうちに出て来た。
しかも、ちゃんと着替えれてるし。
次に、これまたどこから出したかわからないが、扇子を出して、それを明鐘に向
ける。
明鐘が煙に包まれると、これまたちゃんと着替えが終了している。
「……手品師、ですか?」
「これを当たり前としてしまっていいのか?」
「起こった事実を否定してどうする」
「そうだけど……。そうだ、忘れないうちに渡しておくか。と言っても、明鐘に
は渡すものはないんだけど」
「え……鐘ちゃんにはないの?」
「うぅん。ちゃんとあるよ。ね?」
「あぁ。明鐘には、毎年1つだけなんでもお願いを叶えてやるって言うプレゼン
トなんだ」
「相変わらず過保護ね」
「涼様、私にもその―」
「却下」
「……即答ですよ」
「しかも言い切る前」
「どうせ、婚約者として認めてください、って言うんだろ?」
いじけて床にのの字を書いてるところを見るとビンゴか。
他に言う事ないのかよ。
「でも、それじゃ西守歌ちゃんへのプレゼントは? 一人だけ無しはちょっと酷
くない?」
「俺だってそこまでは……おい、西守歌」
「はい?」
「手」
「はい???」
「いいから手を出せ。好きなほうの手でいいぞ」
「なんだか良くわかりませんが……はい」
……なんで都合よく左手を出すかなぁ……。
ま、いいか。
西守歌の左手を取り、ある指にあるものをはめる。
「え……?」
「お前に返すぞ、その呪いのアイテム」
「涼様……」
「呪いのアイテムってどういうこと?」
「爆発する指輪だ」
「ば、爆発……!?」
「しませんよ。でも、涼様。左手の薬指にはめてくださったという事は、少しは
婚約者として―」
「認めてない」
「兄さん……」
婚約者としては認めてないが、少なくても俺は西守歌と一緒にいて面白い。
少しくらいこいつの喜ぶようなことしてやらないとな。
「ま、それの返還だけだが―」
「イッツショータイム!」
「は?」
西守歌が指を鳴らすと、またなにやら仕掛けが動き出した。
……「クリスマスパーティ」と書かれたボードの文字がなんか変わってないか?
「『水原涼、益田西守歌、婚約祝賀会』?」
「兄さん、そうだったの!?」
「俺が知るか!? って、おい、なに勝手な事―」
「あら、勝手ではございませんでしょう?」
西守歌が左手を俺に見せる。
正確には左手の薬指にはめられた指輪をだ。
「くっ!」
「まさか、涼様のほうからこのようなことを。私、幸せで胸が張り裂けそうです
わ♪」
「やっぱそれ、還せ!」
「そうはいきません。これは元々私がおじい様から譲り受けた物。返すという言
葉は適切ではないかと」
「だったら、もう一度俺に預けろ!」
「い・や・で・す♪」
「だったら、力ずくで!」
「いやん♪ 涼様ったら、大胆ですわね♪」
このあと、例の仕掛けによって現れた祝賀会を実行させないための指輪の争
奪戦になったのは言うまでもなく、俺と西守歌だけパーティと全く関係ない追い
かけっこをした。
どうにか阻止できたが、次の日にはまた別のことをやらかした。
やっぱり、こいつに滅多な事をするものじゃないと実感した今年のクリスマスだ
った。
Fin.
サンタさんはミニスカに限りますよね♪(ぇ
しかも肩が出てるのが良いと思います。(更ぇ
ふむふむ。ようやくΦなる・あぷろ〜ちの流れが見えてきた感じです。
こうやって西守歌の手中に主人公は堕ちてゆくと。(めもめも
Comment by けもりん
無断転載厳禁です。
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