「みっくん、ともちゃん、ばいばーい」
「うん、ことりも朝倉君もばいばい」
校門の前で二人に手を振る。
「んで、今日はどうする?」
「今日はたまにはあそこ行こっか」
「?・・・ああ、あそこね」
学校を背に二人で桜の舞う並木道を歩く。
そしていつもと違う曲がり角。
「こっち曲がるのも久しぶりだね」
「そうだなあ・・・暦先生の結婚式以来かなあ」
「うー・・・あの時は迷惑かけてごめんね」
「バカ。俺としては頼ってほしいものなんだぞ」
「そうなの?」
「もちろん」
「えへへー、そっか」
ことりが俺の腕に自分の腕を絡める。
「お、おい」
「いいじゃん、いつもやってることなんだし♪」
「まあな」
そして思い出のあの場所へ。
19の名曲シリーズパート2SS
「伝えたい音」
-Da carpo featuring
19 series volume.2.-
written
by woody
last
updated 2004/04/06
やわらかい風が大きな桜の枝葉を揺らす。。
桜の舞う風はいつだって優しい。
「ふぃー・・・気持ちいいねぇ・・・」
「そうだな・・・」
そして、一番大きな桜の木の下に立つ。
「大きいよね」
「そうだな。この島の神様だからな・・・」
「え?」
「あ、いや、なんでもない」
ことりは一度俺の顔を見た後また上を見上げた。
ここらへんは桜以外の木は見当たらずただ桜色に染まっている。
「ねえ、純一君」
「ん?」
「なんかここに来たら歌いたくなっちゃった・・・歌ってもいい?」
俺は笑顔で返す。
「もちろん。ことりの歌声はいつでも聞きたいぐらいだ」
「えー・・・さすがにそれは喉疲れちゃうよー」
「いや、ホントにそうしろなんて言ってないから・・・」
「あはは、ジョークっすよ、じょ・お・く♪」
「はは・・・」
思わず苦笑い。
「なんの歌にしようかなー」
ことりは上を見上げ考える仕草をする。
「ねえ、朝倉君はなんかリクエストない?」
「リクエストぉ?」
突然話を振られてちょっとビックリする。
「うーん・・・」
「さあさあ、なんなりと!」
「うーん・・・」
「さあさあさあ!」
「特にない」
「ありり・・・」
ことりがコケる。
「なんかいいかげんに考えてない?」
「そういわれてもなぁ・・・俺あんまり音楽詳しくないんだよ」
「うーん・・・そっかぁ」
ことりは顎に手をやりしばらく考えた後、
「じゃあ適当なのでいいよね?」
「おう」
そうしてことりは姿勢を整え、歌いだした。
どこかで聞いたことあるようなメロディー。
いつのまにか俺は目を閉じていた。
「♪灯した火を消さないように・・・」
ことりが最後のフレーズであろう部分を歌い終える。
ことりが歌を歌い終えた後も、ずっと目を閉じたまま余韻に浸っていた。
「っておーい、純一くーん」
「ははっ、起きてるよ」
「むう、ホントかなあ?」
「ホントだって」
「じー・・・」
「ホントだよ。聞き入ってるとなんか気づかないうちに瞼が落ちるんだ」
「やっぱそれって子守唄ってことじゃないの?」
「違うって」
「でも前に寝た事あるじゃん」
「うっ、まあな」
「やっぱりー!」
「ちゃんと聞いてたって」
突然ことりが笑い出した。
「・・・ふふっ」
「あれ?」
「起きてた事ぐらいわかるよ」
「・・・ったく」
「えへへー、ちょっとしたイタズラでした」
「ま、いい歌聞かせてもらったからいいけどな」
「うん」
「なんかさ」
「え?」
「ことりの歌って聞いててすごく心が安まるっつーかなんつーか・・・」
「・・・癒し系?」
「かもな」
笑いながら答える。
「いいね、それー」
「なにが?」
「私はあなただけの癒し系ー!!みたいな」
「なんだそりゃ」
口でツッコミつつ心の中では嬉しかったりする。
「でも私はそうだよ」
「なにが?」
「純一君がそばにいてくれるから私は心が落ち着くんだ」
俺をまっすぐにみつめて言うことり。
「純一君もそう思ってくれるといいなあって思ってたりするんだよ?」
「そんなら大丈夫」
俺はことりをぎゅっと抱きしめる。
「俺もことりがそばにいてくれるから何もかもやっていけるんだぜ?」
「よかった・・・」
ことりの眼にはうっすらと涙がたまっていた。
「えへへ・・・なんか恥ずかしいね」
そういわれて改めて自分が言ったことに照れる。
「・・・かったりぃ」
「えへへっ、次に言うときは録音するから事前に教えてね」
「そ、それだけはカンベン!!暦先生に聞かれたらもうことりの家に行けなくなる!!」
「あはははっ」
かけがえのない存在。
そばにいるだけで幸せと思える存在。
一緒にいてくれてよかった。
そして、これからも一緒にいてほしい。
今はまだ言えないけど・・・。
いつか、言える日が来る。
そうお互いが思っていると信じて。
これからも歩いていく。
そう奇跡を起こす桜に固く誓った。
桜の木を揺らす風はいつまでも俺達を優しくなびいていた。
〜あとがき〜
ダ・カーポ フューチャリング 19(ジューク)シリーズ第2弾。
今回はことり編です。
今回はできるだけ「伝えたい音」の質感というか世界感を出したくて。
それでいてダ・カーポなSSを作ってみたつもりです。
ラブラブなつもりがやっぱりほのぼのになっちゃってたですね。
ちなみにことりが歌った歌は光永亮太の「always」です。
女性でも歌えてそれでいて超いい曲なのです。
戻りまーす