夜、商店街を歩く。
かったるいのであまり夜に歩かないのだが、なんとなく気分で出てきてしまった。。
音夢も看護学校へ行ったため一人暮らし。
だから孤独を紛らわすために無意識で出てきたのかもしれない。
しばらくなんのあてもなく歩く。
すると、他の店より一段と明るく光る建物。
「コンビニか・・・」
そういえば今週号のマガジン誌をまだ買ってなかったことに気づく。
「たまには入って行くか」
そうして電動ドアをくぐる。
そうしてまずはマガジン誌コーナーで欲しかった漫画雑誌を手に取る。
牛乳なども切れそうだったので飲み物コーナーへ向かう。
そのとき、一人の客が入ってきた。
---普段ならそのまま気にしないで商品棚に視線を戻すはずだった。
だが、その瞬間。
俺はおもわず動きを止めてしまった。
洗い髪した女の子。
年は同じぐらいだと思う。
その娘をみたとたんに、俺の中で何かが変わった。
第3弾ソングイメージングSS
ひと恋のモノガタリ。
-This is also one
of love story.-
written
by woody
last
updated 2004/04/09
ずっと目が離せなかった。
話したことも無ければ会ったことも無い。
だけど彼女の一挙一動が気になった。
そして彼女は会計を済ませ、店を出て行った。
俺はしばらく動く事ができず5分ぐらいして手に持っていたものだけカウンターに通して店を出た。
まだ肌寒い夜風。
すこし仄暗い街灯。
人気のない暗く染まった小道。
全てが遠い世界の情景にさえ思えた。
俺の頭からさっきの女の子の姿が離れなかった。
---やっぱり一目惚れだったと思う。
そしてその日から俺は偶然という奇跡を信じることにした。
そしてその次の日の夜。
俺はそのコンビニに同じ時間に通うようになった。
次の日も、次の日も。
いつも読んでいる漫画雑誌を立ち読みしてあの娘が来るのを願った。
漫画の内容はやっぱり頭に入らないばかりだった。
そうして通ってはいつも一人で歩く帰り道。
手にはブラックコーヒー。
最初に飲んだときに結構気に入った味だったので時々飲んだりしていた。
一口つけては空を仰ぐ。
どんなに愛しい気持ちを伝えたくても。
君は名前も知らない通りすがりの女の子。
でも。
「そんな恋もいいかもしれないな」
なぜだかそんな風に思える自分がここにいた。
そしてまた日は繰り返されて。
日が経つごとに思いは募る。
漫画を読む振りをしては、ドアが開く音を聞いて振り返って。
ため息をつきながら切ない気持ちになる。
使ったことも無い参考書のコピーを何枚も取ったり。
雨が降っている日は傘を持っているのに傘を買うためにコンビニに寄ったり。
俺自身なにがしたいのか。
待ってどうするのか。
全くわからないまま時は過ぎていった。
そして一月経った頃。
今日も成果のない奇跡を信じて雑誌コーナーで本を読む。
10分ぐらいして突然ドアが開いた。
期待もせずにふと見ると。
まぎれもない彼女だった。
偶然か髪型も変わらず服装も同じだった。
そして。
君は彼氏と肉まんを食べながら店を出て行った。
今日も一人で歩く帰り道。
やっぱりそれは変わらなかった。
だけどやっぱり。
「そういう恋もいいかもしれないな」
そう思える自分がいた。
いままで一目惚れというのを信じていなかった。
だけど。
こうして全てを知って。
やっぱり一人で歩く帰り道。
終わったはずなのに。
悲しいはずなのに。
気づけば笑顔さえ浮かんでいた。
わかっていたから。
会える奇跡はあってもそばにいられる奇跡なんてなかったのだから。
君が、店を出るときの幸せそうな顔を思い出して。
素直に俺は笑った。
あの娘の幸せを願って。
あの娘がずっと笑っていてくれることを願って。
今日もいつものブラックコーヒーを一気に口に含んだ。
空から街のすべてをずっと見ている月明かりも。
彼女が歩いていった道のりの先にある繁華街の眩い光も。
緑なす枝葉から漏れる柔らかい夜風も。
今日は妙に優しかった---------。
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近くのコンビニで
真夜中過ぎに出逢った
洗い髪の君に
僕は恋したのさ
名前さえ知らない
一目惚れなどしちゃって
あの日から僕は
everyday
通ってるよ
雑誌立ち読みしながら
来るのを待ったけど
今夜も一人肉まんを
食べながら帰るよ
そういう恋もいいって
なぜか思うのさ
愛しい気持ちが君に
届かなくたって
バーコードの音が
レジから聞こえる度に
僕は振り返って
切なくなるんだ
必要ないコピーを
何枚も取ったりして
コンビニの中で偶然を待ってた僕さ
そして一月経ったころ
突然 現れた
君は彼氏と肉まんを
食べながら帰った
そういう恋もいいって
マジで思うのさ
見送る夜風は
僕に優しすぎるよね
そういう恋もいいって・・・
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〜あとがき〜
ある曲をモチーフにしたイメージングSS。
19「『スピーカーの前の君へ』」「伝えたい音」に続いて今回は猿岩石の「コンビニ」です。
もともといい詞だったのでそれをSSにしてみたらどうなるんだろう、ってことでやってみました。
今回はうっでぃっぽさがなるべく出ないように作ってみました。
これもひとつの恋の物語。
なかなかこういうのもおもしろいっしょ?
ぶっちゃけ別にダ・カーポじゃなくてもよかったのですが一番合っているかなぁ、と思って。
感想等いただけるとうれしいです♪
夜を超えて、あなたの幸せを願う。