きーんこーんかーんこーん・・・
「んーっ、午前中の授業は終わり、っと・・・」
ぐーっ、と背伸びをする。
首を廻せば音が鳴る。
・・・なんか日課になってる気がする。
思えば午後の授業の後にもやっているかも。
ということは1日2回背伸びをしている、ということになる。
・・・そんなに疲れてるのかな、俺。
「ねえね、恭介くん。早く行こう!」
後ろから千尋が俺の肩を持って揺らしてきた。
「あん?」
「あん?じゃないよ。外だよ、そ・と」
「おお、そうだな」
「もうあたしゃお腹すきすぎてサンデーにかじりつきそうな勢いだよー」
「いや、お前が言うとシャレになってないから」
「んにゃ?」
千尋のジョーク?を知ってか知らずか、サンデーは怯えるように軽く震えていた。
あなたが選ぶゲーム投票10月度SS
桐敷学園日常模様
-Hey,Tom!!What's the she's "Tsukkomi"!!!.-
written
by woody
last
updated 2004/10/01
「はやくはやくー」
「ちと待ってろ。靴履き替えるの早すぎだ、お前は」
「普通だよー」
「普通の人は2秒で履き替えないっつの」
「えー、そうかなぁ?家出るときはもっと早いよ」
「日本の家は履き替える以前に靴脱ぐだろうが」
「あ、そか」
「・・・もちろんジョークだよな?」
「え?あ、あははー。もっちろんだよー」
外は少し肌寒くこないだまでの暴力的暑さは影を潜め、季節は秋の準備をしているようだった。
「そろそろ衣替えの時期かな・・・」
「あ、そっか。そんな時期なんだ」
「・・・ってお前はどーすんだよ。その制服で」
「もちろんこれの冬服ヴァージョンだよ」
なんで発音いいんじゃ。
「そういやここに来た時冬服の時だったもんな、お前」
「うん。よく覚えてるね。記憶力上がったんじゃない?」
「まあな。俺は日々進化を続ける新人類
「あ、桐李ちゃーん、絵麻ちゃーん」って聞いてないのかよ」
「やっほー。2人とも」
「・・・」
桃李と絵麻はすでにベンチを確保していた。
お弁当箱が包まれているのを見ると、どうやらまだ食べずに待っていてくれたようだ。
「なんだ、桐李も絵麻も先に食べててよかったんだぞ?」
「それは違うでしょ」
「え・・・?」
突然桐李にたしなめられた。
ふと考える。
思ってみれば、ある意味実に桐李らしい反応ではあった。
家庭の事情がうまくいってないだけに一緒に御飯を食べるのは大事。
楽しく御飯を食べる、という幸せが家で感じられないこその愛あるダメ出しなのだよ。
言いたいのはそんな感じなのであろう。
「もう、前から言ってるでしょ」
「・・・(こくこく)」
絵麻も軽く首を振って同意・・・してるようだ。
「桐李お姉ちゃん、でしょ」
「いや、そっちかよ」
なぜか絵麻がツッコんだ。
「え?なんか違った?・・・あ、桐李お姉さまがいい?」
なんかもう実に桐李らしかった。
閑話休題。
「ねえね、今日放課後恭介くんも図書室来るでしょ?」
「あ、なんで?」
「なんで、って図書委員でしょ?しっかりお勤めしなきゃ」
「いやお前はお勤めしてるのか、と問いたい」
「失礼ねー、本とカバーが入れ替わってないかしっかりチェックする係だってば」
そんな役職聞いたことないが。
「んで、1冊のチェックに何分ぐらいかかるのかな?」
「・・・食べ物の本なら1時間はくだらないかもね」
絵麻のクールで辛辣なお一言。
「ぎくっ」
「・・・今千尋の頭の中全て理解できた気がするわ」
わが妹はどこまでも冷たかった。
再び閑話休題。
「あれ、そういえばさ。一葉は?」
「・・・なんか新作のレシピを考えるから今日は行かないって」
絵麻が答える。
「ああ、ケーキね」
KIKiのケーキは一葉が考案したレシピのおかげで昼間にはもうなくなるぐらいの人気を誇っている。
以前俺が食べたときもそんじょそこらの味ではなかった。
それだけに店としてはこのエースストライカーを野放しにはできないらしく、いつも一葉に新作の考案を依頼しているらしい。
もちろん、一葉はバイトなので学校に持ち込むほどのハードワークは自主的に避ける権利はあるのだが、
本人曰く『今欲しい物があるから抜け出せないかも・・・』とのこと。
まあ、一葉としてもオリジナルケーキを作る事にアイデンティティを感じているのだから双方に利益があるという訳だ。
「また食べたいなぁ」
御多分にもれず、この一言を発したのは言うまでもなく千尋だ。
「・・・そうね」
絵麻も一葉のケーキには降参のようだ。
「そーねぇ、私も食べたいなぁ」
「じゃあ今度またみんなでKIKiに行くか。今考えてるであろう新作を食べにな」
「さんせー!」
「うん、行こうね」
ちらっと絵麻を伺うと。
俺とアイコンタクトを交わした後、「・・・そうね」と一言だけ言った。
「お代は上様でよろしくぅ!」
「ってコラ、なぜ俺を指す」
「いやだってホラ、レディーファースト?みたいな?慎ましげなる乙女?みたいな?」
「君は食うケーキの数も慎みたまえ」
「・・・ちょっと千尋、うちの財政難を助長するような事言わないで」
「あちゃ、絵麻財政奉行様にゃかなわないや・・・」
あはは、と力なく笑いながら千尋が下がる。
やはり絵麻、お前だけは俺の気持ちを理解してくれるのだな。
お兄ちゃん感激。
「・・・私の分でお兄ちゃんは精一杯なんだから」
も、もしもし絵麻サン?
「・・・(ニヤリ)」
-------------------------------------------------------------------
「あ、もうそろそろチャイム鳴るね」
「ん、じゃあ今日の昼御飯の会は御開きだな」
「また授業かぁ・・・ほぇぇ」
「うふふ、千尋ちゃん寝たらダメだよ」
「え、や、ヤダなぁ桐李ちゃんは・・・あはは」
「目が笑ってないわよ、千尋」
絵麻は弁当箱を片付けながら言う。
「・・・絵麻ちゃんだんだん私に冷たくなってない?」
「あら、そんなことないわよ?」
絵麻は千尋に薄く頬笑みかける。
「そ、そうよね・・・思い過ごしよね・・・」
「・・・(ニヤリ)」
「え、絵麻ちゃん!?今の口元の歪みはなに!?」
「さ、早く行かないと怒られるわよお兄ちゃん」
絵麻は俺の背中を押す。
「ん、あ、ああ」
俺の背中を押しながら「くすっ」、と絵麻が突然笑った。
「ん、どうした?」
「・・・こういう生活、悪くないわね」
「ん、ああ。そうだな」
「ええ・・・」
「やっぱり笑い方忘れてないじゃないか、絵麻」
「え?」
「今みたいにさ、笑えるじゃんか」
「・・・そうかもね。私にもまだ救いがあるって事かしら」
「ん?」
「なんでもないわ。行きましょう」
後ろから千尋の「ちょっと待ってよー」と言う声が聞こえる。
こんな生活がいつまで続くかわからない。
突然また俺たちが日常という言葉をいつ失うのか。
だけどその時が来るまで。
頑張って生きてみるのも悪くない、そう思った。
「あ」
「どうしたの?桐李ちゃん」
千尋が桃李の声に疑問を投げかける。
「あ、私話を聞くのに夢中でお弁当食べるの忘れてたよー」
「食べてないのかよ」
いつまでも妹のツッコミはおもしろかった。
〜あとがき〜
はぃー。どもー。
つーわけで「何処あの」より、ほのぼのモノでした。
票数の割に圧倒的にコメント数が多かったので選ばせていただきました。
シリアスでダークチックな作品にしてはキャラが立っていて書きやすくはあったです。
ただ、やっぱり誰かのアフターストーリーとなると難しいものがありますね。
つーわけで絵麻や恭介などのキャラをさらにくずしてギャグ化してしまいました。
エンド後のストーリーを期待した方、スミマセン。
だってこのストーリーの元となった投票コメントが私のツボにきたからです。
結局そのまんまになりました。
「絵麻様のツッコミ人生。」
♪私のハートをうちぬいた〜♪
そんな感じ。
戻りまーす