「ただいまー」

学校が終わって放課後。

多少疲れたので寄り道することなく水瀬家の玄関をくぐる。

すると、玄関に入ったとき見慣れない靴があった。

・・・いや、これは見慣れたというべきか。

秋子さんより、名雪より、そして真琴よりも小さなサイズの革靴。

これに該当する人物は祐一の辞書の中では一人しかいない。

そんなことを考えていると。

「祐一くん、おかえりなさいっ♪」





やっとあゆSSが書けた(並々ならぬ達成感)・・・なSS




                  月宮あゆのお料理BURN!BURN!



                                                                 written by woody
                                                               last updated 2003.10.31





「よっ、あゆ。来てたのか」

「うんっ!えへへー」

「なに笑ってんだよ」

「だってー、『お帰りなさい』って祐一くんに言えるなんて・・・奥さんみたいだなー、って。えへへー」

「・・・そか」

もちろん祐一は悪い気はしていない。

それどころか嬉しい・・・のはやまやまだが、相沢祐一の沽券に懸けて殊勝な顔をしていた。

心の中ではにやけているのだが。

「今日はいつごろまでいられるんだ?」

「今日はずっといるよ」

「そうか」

「うんっ!よるごはん一緒に食べようね」

「そうだな」



返事をしつつもどうもイヤな予感が拭えない祐一であった。



「そういえば、今日はどうしたんだ?」

「今日はね、秋子さんに料理を習いに来たんだよ」

「・・・・・・」

「な、なんで黙っちゃうかなそこで!」

祐一はあゆの肩をぽんとたたき、

「俺、しばらく旅に出るわ」

「うぐぅ!どーして!?」

「は、離してくれ!俺はまだこの世を去りたくはないんだぁぁ!!」

「うぐぅ!?ひどいよぉっ!」

2人でバタバタやっていると。

「あら、祐一さん。お帰りなさい」

秋子の声を聞いた途端、祐一はピタリと動きを止め、

「秋子さん、ただいま帰りました」

と深々と頭を下げた。

そのとき、あゆは突然祐一の力が抜けたため、

「うぅぅぐぅぅぅ・・・」

がんっ!

玄関に激突。

「うぐぅ・・・イタイ・・・」

「あらあら」

「こらこら、月宮君。人の家を壊してはダメだよ」

祐一がなぜかたしなめるように言う。

「祐一くんのせいだよ・・・」

「あゆちゃんは元気があっていいことですね」

「今回は寛容な秋子さんによって助けられたな、あゆ。はっはっは」

「意味がわからないよ・・・」






「そうだ、そういえば俺には大切な使命があったのだ」

そういうと祐一は秋子のほうを向き、

「秋子さん、お願いがあるのですが」

「も、もしかして愛の告白ですか?やだ、祐一さんたら・・・」

「違います」

「・・・ぐすん」

祐一の言葉は妙に力強かった。

なにげにあゆは祐一の今の否定に少しほっとしていたりする。




「秋子さん、俺はしばらく旅に出ます」

「不了承」

「ど、どうしてですか?」

「じゃあどうして旅をしようと思ったんですか?」

「まだ死にたくないからです」

「不了承」

「な、なぜですか!?秋子さんは俺を殺す気ですか!?」

「あゆちゃんのお料理なら大丈夫ですよ。すごく以前より上達しましたよ」

「うぐぅ!そうだよ!」

「・・・」

どうも信憑性に欠ける、と祐一は半信半疑だった。

「そうだ!それなら今日のお夕飯はあゆちゃんに作ってもらいましょう!」

「「ええっ!」」

「そうしましょう。それでいいですね?あゆちゃん」

「うぐぅ・・・どうしようかな・・・」

そういうあゆの耳元で秋子がささやく。


「これで祐一さんに認めてもらえれば祐一さんのハートをゲットできるかもしれませんよ」


祐一にはささやきが聞こえるわけもなく首をかしげていた。

あゆはそれを聞いて少し考えた後。

「秋子さん!ボクやるよ!」

「えええっ!?」

祐一はあごをはずさんばかりの勢いで驚く。

「それでこそ女です」

秋子は妙に意気込んでいた。

「じ、じゃあボクはこりで・・・」

そろー、と水瀬家を抜け出そうとする祐一、だが。

がしっ。

「祐一さん?」

そう言う秋子が動かした手の軌跡はオレンジ色だった。

「・・・喜んでいただかせてもらいます」

「よかったですね、あゆちゃん。祐一さんも早く食べたいですって」

「うんっ、ボクがんばるよっ」

「うぅ・・・おやじ、おふくろ、先立つ不幸を許してくれ・・・」






しばらくして祐一がリビングでテレビを見ていると。

「あら、祐一さん。あゆちゃんの料理気にならないんですか?」

秋子が意外、という風に祐一に聞く。

「まぁ、とりあえず俺のために作ってくれるわけですしね」

「ふふっ、そうですか」

「ええ・・・なんというか、まあ半分ヤケですけどね」

「あら、でも本当にあゆちゃんは上達したんですよ」

「そうなんですか?」

「ええ。そっと見てみればわかりますよ」

祐一はそっと台所を覗く。

すると。

「お塩、お塩・・・と」

秋子や名雪ほどの慣れはなくとも、以前のただ人に教えられているだけ、ではない。

何から何まであゆ一人でやっていたのだ。

秋子が祐一と話しているのが何よりの証拠である。

自分でレシピを考え、一生懸命作っているというのが祐一にも感じられた。

結構いいものができるんじゃないか------。と祐一が自然に感じられたぐらいだ。

「どうです?」

「・・・まあ、味次第ってヤツです」

「あら、厳しいんですね」

「秋子さんもあゆに教えるのけっこう苦労されたでしょう」

「・・・じつは少し」

祐一と秋子は思わず苦笑した。

「・・・でもどっちにしろ楽しみなのは変わりませんから」

「そうですね」

「ここでお酒をふって・・・」

その瞬間フライパンから火柱が上がる。

「うぐぅ!熱いー!前髪ちょっと燃えたー!」

「・・・ほんと、いろんな意味で楽しみですよ」

「・・・そうですね」







その後も再び火柱に翻弄されたり・・・



ぐおお!(←火柱の音)

「うぐぅ!熱いー!火のバカー!」



なぜか爆発音がしたり・・・



どぉん!

「うぐっ、なんでバクハツするのー!?」



台所は料理ができるまで騒がしかった。









夕飯ができるころには真琴や名雪も帰ってきていて台所を見てはあゆの料理にビクビクしていた。

-----いずれ必ず自分も食べさせられるだろう、と。



そして。

「できたー!」

「できたみたいですよ、祐一さん」

部屋でくつろいでいた祐一に秋子から声がかかる。

「わかりました、今行きます」

階段を下りつつふと考える。

なぜ自分はこんなに期待しているんだろう。

以前碁石クッキーたる物を食べさせられたのにもかかわらず、だ。

恐怖どころかどこか期待している自分がいた。

それは自分を喜ばすために料理を作ってくれている、という嬉しさからだろうか。

それはその相手が好きな女の子だからだろうか。


「・・・やめた」

祐一は考えるのを止めた。

とりあえず今は料理をいただこうか、と自分に言い聞かせた。




ダイニングルームに入る前に扉の向こうで真琴と名雪が立っているのが見えた。

「おっ、名雪も真琴も帰ってたのか・・・ってあれ?」

2人はただ立っていたのではない--------正確には立ち尽くしていた、のだ。

「2人とも何見てるん・・・だ・・・」

「あ、やっと来た!祐一くん」

あゆの言葉が聞こえているのかいないのか祐一も言葉を失った。

祐一が見たのは。

「さっ、みんな食べて食べて♪」

完璧に並んだ、料理と呼べるに相応しいものがそこにあった。

先ほどの爆発音はなんだったんだろうか。

「「「・・・」」」

祐一、名雪、真琴と固まったまま動かない。

秋子はニコニコと席に着いた。

「祐一くん、なにしてんの?はやく席についてっ」

「あ、ああ」

ようやく動き出した真琴と名雪を引き連れて席に着く。

席に着いた途端、鼻に流れてくる料理の香りも上等だ。

(い、いやいや、肝心なのは味だっ!)

「い、いただきます」

おそるおそる前にあったシチューにスプーンですくい、一口。

「こ、これは!!」



「「「・・・ごくっ」」」

名雪、真琴、そして作ったあゆも固唾を飲んで祐一の様子を見守る。



「・・・うまい」

「ほ、ほんと?」

「・・・ああ、すげーうまい」

「やったぁ!」

名雪と真琴の2人も食べてみると。

「おいしいよー。あゆちゃん」

「あ、あゆにしてはやるじゃない」

「よかったー」

2人とももちろんお世辞などではなく本音の「おいしい」だった。

しばらくみんなで楽しく食べていると。

「はい、祐一くん」

「ん?」

「あーん、して」

「んぐっ!?」

「どうしたの?」

「い、いきなり何を・・・」

「だって祐一くんのためにせっかくがんばったんだから、ね」

「・・・わかったよ」

「はいっ」

ぱくっ。

「おいしい?」

「・・・おいしい」

「よかったー」

名雪と真琴の2人はニラみつつも、

「・・・今日は特別にがんばったから許してあげるよ」

「あ、あたしだって負けないんだから」

「・・・あはは」

笑うしかない祐一であった。





「「「「「ごちそうさまー」」」」」

食後、名雪は宿題をしに、真琴は漫画を読みにそれぞれの部屋に戻った。

祐一は1人、リビングでくつろいでいた。

「ふぃー、食った食った」

「祐一くん」

「おっ、あゆ。おつかれさん」

「うん」

「うまかったぞ」

「祐一くんにそういってもらえて嬉しいよ」

「おう」

「でね、祐一くん」

「?」

「・・・その、ね、よかったら・・・ごほうび、欲しいなぁ・・・なんて」

「ごほうび、か。おう、いいぞ。じゃ今度タイヤキでも・・・」

「そ、それもいいんだけどね・・・その・・・」

「なんだ、他に欲しいものがあるのか」

「えとね・・・キス、してほしいなぁ、なんて思っちゃったりして」

「・・・」

「ダメ・・・かな?」



その瞬間。

「・・・あっ」

祐一は何も言わずにあゆを抱きよせ軽くキスした。

「ダメなわけ、ないだろ」



しばらくぼーっとしていたあゆは最高の笑顔で、

「・・・うんっ!大好きだよっ!祐一くんっ♪」





そのとき、たまたま下に降りてきていた2人は、

「「そうか、あれでわたしも祐一のハートをゲーット!」」

ちゃっかり見ていた。





その後、水瀬家の台所ではしばらく戦争が勃発し、オレンジ色の停戦条約が舞うことによって見事終戦を迎えた。





    〜ムリヤリ終わらせます〜



 

〜あとがき〜
これはなにげにけっこういい出来ではないかと。
以前よりかは文がマシになったのではないかと思っちゃったりしてます。
ありがちなネタには変わりないけど。
あゆはやはり難しかったです。
とりあえず全員書き終わったので違うゲームのSSでも書こうかと。
ちなみにこの題名はフジテレビの某料理番組のパクリです。



                              祐一くんっ、お代わりは?