ジリリリリリ。
「ふわぁ・・・なんだ、こんな時間に」
クリスマスイブの夜11時半。
相沢祐一は1本の電話によって眠い目をこすりつつ目を開けることとなった。
「ふぁい・・・もしもし」
「祐一さん?寝てたんですか?」
「・・・美汐!?」
「はい。美汐です」
「どした?今年のクリスマスは家族で北海道にいくんじゃなかったのか?」
北海道にいる美汐の親戚がクリスマスイブにパーティーを開く、ということで祐一と美汐は会えない寂しさにがっかりしながらも、
翌日のクリスマスは1日デート、ということでしぶしぶ承諾していた。
祐一は翌日のデートに備え、ぐっすり就寝していた矢先の電話だった。
「・・・ええと。たしかにそのはずでした」
「・・・そのはず?」
「パーティーには参加しました。ただ・・・」
「どした」
「少ししてあなたに会いたくなって・・・」
「まさか・・・」
「抜け出して帰ってきちゃいました」
「ちょっと待て。いますぐ駅に行く」
祐一は急いで着替えてあわただしく玄関を出て行った。
クリスマス美汐SS
クリスマスには花束を
-give me your love for christmas- 〜クリスマス特別SS〜
written
by woody
last
updated 2003/12/25
「はあ、はあ・・・」
空からは雪が降っていた。
雪が降りやすいこの地域でもなかなかクリスマスに雪は降ってくれないものだ。
だが、今年はどんな音も消してしまうほどの雪が街を覆って行く。
そんな中、祐一は傘も差さず、駅に向かってとにかく走った。
「まったく・・・何考えてんだか」
美汐らしくない突飛な行動に呆れつつも、にやけ顔をおさえられないまま、最後の角を曲がる。
ようやく駅の入り口がはっきり見えるぐらい近づいたとき。
駅の前で1人立っているのが見えた。
まわりの白に同化するように光って見える白いダッフルコート。
雪がついていても色が変わることなく映える赤いマフラー。
そして、端正な顔立ちだがどこか寂しそうな表情。
祐一は、そんな少女に向かって叫ぶ。
「美汐!!」
少女も答える。
「祐一さん!!」
そして、二人はゆっくりと抱きしめあった。
お互いのぬくもりを感じ取れるように。
そばにいることを確かめるように。
「どうしたんだ?いきなり」
しばらくして、ようやく祐一が口を開いた。
「パーティーが始まって少ししたら、なんか会いたくなっただけです」
「もう何時間後には会えるのに?」
「女の子は1秒でも早く好きな人に会いたいものなんですっ」
「まあ、男もそうなんだけどな」
「そう言ってくれると嬉しいです」
美汐は笑顔で答えた。
「ところでパーティーが始まって少ししたらの『少し』ってどれくらいだ?」
「・・・
10分ぐらい」
「ひょっとしてその後すぐこっちにきたのか?」
「はい」
「・・・」
祐一は言葉も出なかった。
「いいじゃないですか、べつに」
美汐はすねた顔で赤いマフラーの中に顔を隠した。
「・・・美汐」
「・・・なんですか?」
赤いマフラーからひょこっと澄んだ2つの眼だけが顔を出した。
「ありがとうな、来てくれて」
「・・・はい」
「俺も会いたい、とは思っていたけど。まさか帰ってきてくれるとは思わなかったよ」
「祐一さんをびっくりさせられるかな、と思って。いつもの逆襲の意味を込めました」
「・・・このやろっ」
ちゅっ。
「ひあっ!」
祐一は美汐の隙をついて頬にキスをした。
「逆襲の逆襲の意味を込めました」
「祐一さんっ!!」
「それと」
「え?」
「おかえり、の意味も込めた」
「あ・・・」
「おかえり、美汐」
「ただいま、祐一さん」
そのとき。
ごーん、ごーん。
駅のそばにある教会の鐘の音が響いた。
「25日になっちまったな」
「祐一さん」
「ん?」
「私、帰ってきてよかったです」
「なんで?」
「だってクリスマスの日に1番最初に祐一さんに会うことができましたから」
「そっか」
そうして2人は空を見上げた。
鐘の音が鳴り響く空に2人へ降り注ぐ白いプレゼント。
ふわりと落ちる雪とともに2人はもう一度お互いをみつめて、
「メリークリスマス、美汐」
「メリークリスマス、祐一さん」
クリスマスの日で最初のキスをした----。
〜あとがき〜
いやぁ!!短ぁっ!!!
ま、いっか。
ってことでクリスマスイブぐらいSS書いておこうと思い、かきあげたSSです。
イブに更新するはずが1日遅れてしまいました。
今日からはなんとか更新再開できそうですので。
祐一さん、メリクリですっ♪