(先に「strawberry kiss」を見る事をオススメしますが、見なくてもなんとか分かります)
----------------朝。
ちゅんちゅん、といい朝を象徴するように小鳥がさえずっている。
そして日曜日。
1週間に1度、学生などに『寝坊』という権利が与えられる。
つまり、1週間で最も目覚まし時計が鳴らない日。
このことがおわかりだろうか。
要するに、水瀬家の朝が1週間で最も静かな曜日である。
というのも水瀬家の長女、名雪の部屋には無数の目覚ましがある。
平日は目覚ましの皆様は毎朝仕事に励んでいるのだが、日曜日に関しては別である。
-------もっとも、その部屋の主はそれらを活用しているわけではないのだが。
現在は主に居候、相沢祐一の朝の運動の一環として使われているに等しい。
しかし、今日はそんな事をする必要はない。
なぜなら、日曜日だから。
ああ。
なんて素晴らしい日なんだろう、日曜日。
ただ、祐一は居候という身分が故にさすがにいつまでも惰眠をむさぼるというのは気が引けるらしい。
その証拠に休日も目覚ましは欠かせない。
そして、今日も目覚ましの音が鳴るのを待ちながらレム睡眠が解けるのを待っている。
・・・・・・。
・・・・。
・・。
あれ?
何時まで経っても名雪の目覚ましボイスがしない。
・・・いや、催眠ボイスか。
いや、そんなことを言っている場合ではない。
おかしいな。
一度祐一は起きようとも思ったが、目を開けるのは止めにした。
・・・ま、たまにはいいか、とまた寝てしまおうと思った。
すると。
「朝〜・・・朝だよ〜・・・」
続いちゃいましたSS
strawberry kiss TURBO!!!
-why did you
wake up early than me?-
written
by woody
last
updated 2004/02/02
「朝〜・・・朝だよ〜・・・」
ようやく聞こえてきた。
いつも正確な時を刻んでいるはずの時計が今日に限って変な時刻に目覚ましが鳴った。
変だな、とは思いつつもそんなに意識がはっきりしているわけではないのでまた寝る。
(この目覚ましを聞きながらまどろむのがいいんだよな・・・)
とは、祐一の弁。
だが、普段とは違うセリフが聞こえたような気がした。
「祐一〜起きてよ〜」
(?・・・あれ?こんなセリフだったっけ?)
しかし、疲れていたのか祐一の目が開くことはなかった。
(・・・ま、いっか)
・・・どうやら祐一は相当疲れているようだ。
なんにも考える気がないらしい。
だが、普段の目覚ましにはないアドリブが次々と祐一の声に流れてくる。
「ねぇ・・・ゆういちぃ・・・起きてよー」
(ぬぅ・・・目覚ましも進化したもんだ・・・)
そんなわけないだろが。
「うぅ・・・せっかく私が早起きできたのに・・・」
「ねー・・・起きてよぉ・・・」
(・・・うぅ・・・)
すこしうっとうしいらしく、祐一は布団をかぶった。
「うーん・・・どうしよう・・・」
-----------読者の方はすでに分かっているだろう。
もちろん目覚まし時計ではない、ホンモノの名雪である。
祐一が本物の名雪と思わない理由。
普通なら名雪はまだ爆睡中なはずの時刻なのだが。
昨夜は祐一のベッドで寝たせいかなぜか眠気スッキリなのだ。
名雪曰く、「やっぱり祐一がそばにいるから寝られなかった」らしい。
それでも10時間近く寝ているのだが。
「祐一・・・どうやったら起きるのかな・・・」
もはやいつもと逆の立場となっている。
そのとき。
真琴が以前読んで欲しい、とせがんで読んだ恋愛漫画を思い出した。
「そういえば・・・」
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「孝之君・・・起きて・・・朝だよ・・・」
そう言って遙は孝之の唇に自分の唇を近づける。
「・・・ん・・・ちゅっ」
「んあ・・・遙、?」
「ん。おはよ、孝之君」
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「ほぇぇぇ・・・いいなぁ・・・」
名雪は横を見る。
「すぅ・・・ぐぉぉ・・・むにゃ・・・」
となりには寝ている想い人。
「・・・よしっ!」
小さくガッツポーズ。
「でも、そのまんまじゃなんか味気ないなー・・・」
しばらく考えた後、名雪は、
「・・・そーだ!!」
と祐一の部屋を走って出て行った。
(ふぅ・・・ようやく目覚ましの電池が切れたか・・・)
あいかわらず思考能力がない祐一であった。
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どどどどどどどどど。
やがて名雪が階段を駆け上がってきた、笑顔で。
そして手には何かが入っているお皿。
---ちなみにソレを取りにいったときにキッチンに立っていた秋子と遭遇。
部活のない日曜のこんな時間に名雪が笑顔で冷蔵庫を漁っている姿を見て固まる秋子。
名雪は「おはよう、お母さん」とだけ残してそのまま階段を駆け上がって行った。
「えへへ・・・」
名雪はにへら、と顔を崩す。
「一度やってみたかったんだぁ」
そうして再び祐一の横に立つ。
「んがぁ・・・」
相変わらず祐一は起きるそぶりを見せない。つーか爆睡。
「これこれ♪」
名雪は皿から赤い物を取り出す。
「おいしそうなイチゴだよー♪」
モグモグと味わいたい思いを抑えてイチゴをくわえ、手を離す。
そうして・・・。
「ゆういひ・・・」
少し口の開いた祐一の寝顔を見てニコッと頬笑んだ後、
「ん・・・」
開いた口にくわえているイチゴごと口付ける。
もが、と祐一もすこし反応を見せる。
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(んん・・・なんだ?この甘いの・・・)
口になにか入っているのがわかった。
甘くて。少し酸っぱくて。
なんとなくなつかしい味。
・・・・・・。
・・・・。
・・。
(いや、そうじゃなくて)
祐一は頭が覚醒してきたようだ。
(なんだ、これ・・・?)
虹彩をいたわってゆっくりと目を開ける。
すると。
肌色の影。
(・・・?)
ゆっくりと焦点が合ってきた。
徐々にはっきり浮かび上がる女の子の顔。
「・・・」
「ん・・・ちゅ」
(・・・えーと)
「・・・はゆひ(名雪)?」
しゃべろうとしたが口がふさがっているため息が漏れてしまった。
「ん・・・ゆういち・・・」
だんだんと事の重大さにきづく。
「・・・名雪!?」
「うんっ、おはよ!祐一」
「あ、ああ。おはよう」
「うん」
「で、なにしてたんだ?」
「キス」
「・・・」
そう恥ずかしげもなく答えられると返す言葉もない。
そして、口の中になんか入っていることに気づく。
「・・・なんだこれ?」
祐一は口の中に入っているものを指でつまみ出す。
自分の口から出てきたのは甘くて赤っぽい木の実っぽいもの。
「・・・イチゴ?」
「そうだよ」
「・・・なんで?」
「あ、そうだ」
「あん?」
「昨日は一緒に寝てくれてありがとう。祐一」
「あ、ああ、いえ、どうも」
突然話が変わってお礼を言われて戸惑う祐一。
「それでね」
「お、おう」
「・・・イチゴと祐一のキス」
「は?」
「どっちが甘いかなー?、って」
「・・・えーと」
「それで実験してみました」
「・・・で、どうだった?」
ほかに聞きたい事はいっぱいあったのだが、なぜかこのときはそれしか思い浮かばなかった。
「どっちも甘くて、おいしかった♪」
「・・・さいですか」
「うん!・・・だから」
「あ?」
「もう一回♪」
「うぷっ!」
祐一の口は再び名雪の唇によってふさがれた。
「んー・・・ぷはっ」
「ぷはっ、な、名雪!?」
祐一はあまりに積極的な名雪に戸惑う。
「祐一」
「な、なんだよ」
「大好き。絶対誰にも渡さない」
「な、名雪・・・?」
「祐一は私のこと、好き?」
「・・・好きだぞ」
「・・・嬉しいな」
そういって名雪は祐一の頬に口付けて、
「ねえ、祐一」
「もっといっぱい・・・キス、しようね♪」
〜あとがき〜
ぶっちゃけ祐一君、あんまり活躍してませんね。
最初はほのぼので、最後だけラブラブで、という構成。
つーか実はこの話は「strawberry kiss」を書いた後に思いつきました。
「どーせならこの題名を生かそう」と。
ごめんね、
蛙鳴蝉噪で。
(つーか、↑の言葉も使ってみたかっただけ。)
祐一、「とちおとめ」おいしかった?