「おーい、香里」

「何よ」

長かった期末テストが終わり、その日の放課後。

「今日でテスト終わったから打ち上げやろうぜ!!」

「は?」

相沢祐一が美坂香里に唐突を運んできだ。

「なんだ、なんか用事でもあるのか?」

「いや、ないけど・・・」

「じゃあなんだよ」

「どうしていきなり?」

「いや、なんとなくだが」

「・・・そういえば相沢君はそういう人だったわね」

「なんかひどい事言ってないか?」

「言葉通りよ」

すると、

「相沢!!」

突然北川が飛び出してきた。

「俺も行くぞ!!」

「お前今日姉貴とサッカー見にいくっつってたじゃん」

ちなみに北川の姉はかなりのサッカーマニアだ。

「知らん!!そんなもの!!」

「・・・サボって大丈夫なのか?」

「・・・・・・・・殺されるかも」

「また今度な」

「くっそおおおぉぉぉぉおぉおぉぉおお!!!」








あの人気ネタをリバイバルSS



              お酒は20歳になってからっ!りろーでっど

                              -Love laughs at lock-smiths.-


                                                          written by woody
                                                             last updated 2004/03/17







「どこでやるのよ?」

「とりあえず水瀬家なんだがいいよな?」

「名雪は?」

「もちろん来るぞ。一度部室に寄ってから遅れて来るそうだ」

「・・・ていうか来るっていうより名雪の家なのよね」

「おう」

「・・・わかったわ。参加させてもらうわよ」

「そうか!じゃ、行くぞー」

祐一は香里の腕をつかみ教室を出る。

香里はいきなり腕を引っ張られうろたえる。

「えっ?もう?ちょっと・・・」

「ごーごー!!」

「ちょっ、相沢君・・・」

(クラスのみんなが見てるじゃないのよ・・・)

「なんだ、香里。顔赤いぞ?風邪か?」

「ち、違うわよ!!」

「そうか?季節の変わり目は気を付けろよ」

「あ、ありがとう・・・」

(なんか違うような・・・)

頭のどこかに違和感を感じつつ祐一に引きずられていく香里であった。






そして、しばらく歩いて。

「ちょっと、相沢君」

「ん?」

「い、いつまで腕組んでんのよ・・・」

「お、おお、わりぃ」

顔を赤らめながら香里は、

(まったくもう・・・)

自分でも無意識に笑顔で歩いていた。






「ただいま帰りましたー」

祐一が水瀬家の玄関で声を上げると、

「あら、おかえりなさい祐一さん・・・あら」

「お邪魔します」

「あら、香里さんいらっしゃい」

秋子が笑顔で迎えてくれた。

(ああ、やっぱなんかいいわね、こういうの・・・)

香里は思う。

(それにひきかえ・・・うちときたら)



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がちゃ。

「ただいまー」

「あらー♪香里ちゃん、祐一くんいないのー?」

「ちょっと・・・お母さん」

テスト勉強のために相沢君が来た時以来、お母さんは相沢君を気に入ってしまったようだった。

「さびしいわねー、テストのときじゃなくてもうちに呼んじゃいなさいよ♪」

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(これだもんなー・・・)

「ん?どうした香里?そんなところで固まって」

思えばまだ玄関にいた。

「あ、と、えーと、うん。なんでもないの、ちょっと考え事してただけなの」

「んー、そうか?」

「まあ、リビングで待っててくれ。俺は着替えてくるから」

「うん」

香里は言われたとおり、リビングに入る。

「香里さん、ごめんなさいね」

「え?」

リビングに入るなり、秋子が話しかけてきた。

「名雪と祐一さんのわがままに付き合わせちゃって」

「ああ、いえいえ、むしろ誘ってくれて嬉しかったですから」

「あら、優しいんですね」

この物腰の良さ。

これが秋子たる所以なのだろう。

やっぱり秋子さんには一生勝てそうにないな、と香里は改めて感じた。






「おまたせー」

「あら、早かったわね」

黒のロングTシャツにインディゴブルーのストレートジーンズ。

そしてアクセサリーにシルバーのロザリオ形のネックレス。

シンプルながら祐一の少し幼げな顔と長目の髪とのアクセントになっていて祐一の魅力を引き立てていた。

(やっぱ、スタイルいいわね、相沢君・・・)

「ん?どした?」

香里が祐一をずっと見ていたので祐一が視線に気づく。

「え、な、なんでもないわよ!」

「・・・?変な香里だな」

「い、いいでしょべつに」

「それよりさ・・・」






「夜からやるの?」

「ああ、名雪がちょっと遅くなるらしいんでな」

「そう」

そう香里に話しかけながら、祐一は缶やボトルをテーブルにどんどん置いていく。

「・・・相沢君?」

「なんだ質問か?」

「これ、『お酒』って書いてあるんだけど・・・」

「俺にもそう読めるな」

「見る限りお酒ばっかりなんだけど」

「おう、香里の目はまだまだ現役だな」

「当たり前よ・・・ってそーじゃなくて」

「まだ質問か?」

「なんなのよこれ!宴会にする気!?」

「いいじゃんか、どうせ明日から学校休みだし」

「まあ、そうだけど・・・」

「・・・ひょっとして香里って」

「な、なによ」

「飲めない?」

「の、飲めるわよ!!」

「ふむ・・・」

祐一は少し考えるとおもむろに一つの缶に手を伸ばし、

「ちょっと飲んでみ」

「え?」

「大丈夫だって。チューハイだし今は少しでいいからさ」

「・・・」

香里は缶を手に、考え込む。

「やっぱり香里・・・」

「わかったわよ!!飲めばいいんでしょ!!!」

そういうと、

ぱきゃっ。

ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ。

「お、おい、一気かよ・・・」

「ぷはー」

「か、香里?」

「これ、おいしいわね」

「え?」

「もっとちょーだい」






10分後。

「あ、あの・・・祐一・・・くん?」

「・・・」

「あの、えーと・・・」

「・・・」

「ゆ、祐一くんも・・・その、一緒に・・・飲もうよ」

はにかみながら上目遣いでおねだりする香里。

ぶっちゃけ萌え。

「ね・・・祐一、くん?」

「お、おう・・・」

香里が飲んでいた缶を渡される。

(・・・こ、こりは間接チッスですか!?)

「うふふー・・・祐一くーん、はやく飲んで♪」

猫のように祐一になすり寄ってじゃれる香里。

(し、しかし・・・いいのか!?)

「・・・祐一くん?」

(の、飲みたい・・・!!香里との間接キスしたいっすよー!!)

「・・・うぅ、祐一くん」

(これを飲んで・・・香里のコークスクリューパンチを喰らいやしないか!?)

「・・・ふぇぇ」

「・・・あ、か、香里?」

「祐一君・・・あたしと・・・飲んでくれない・・・の?」

香里の目が潤み始める。

「ああ!!飲む飲む!!いやぁ香里と飲めてうれしいなぁ!!」

「・・・ほんと?」

「ホントホント」

「ぐすっ・・・良かった♪」

ぐはっ。

やっぱ萌えすぎ。

香里はじっと祐一をみつめている。

(そんな罪悪感を満載に感じさせる目は止めてくれ・・・)

・・・。

(ええい!!ゴメンよ素面の香里!!)

ぐびぐび。

「にゃはー♪」

飲み始めた瞬間に香里が飛びついてきた。

「祐一くんと間接きすー♪」

(ぐはっ)

酒が軽く鼻に入った。

(気づいていたか・・・)

すると、香里がずっと祐一をみつめている。

「か、香里・・・?」

「祐一くん・・・」

香里の顔が祐一の顔に近づいてくる。

祐一はビックリしておもいっきり目をつぶる。

・・・・・・。

しかし、何も起こらない。

祐一がゆっくりと片目を開ける。

その刹那。



「んー♪」

「んむっ!!」

ちゅー。

「んっ・・・んー」

祐一が目を開けるのを待っていたかのように香里が強く口付けてきた。

・・・とはいってもただ口を付け合うだけの子供みたいなキス。

「ぷはっ」

しばらくして香里がゆっくりと唇を離した。

「えへへ・・・祐一くんときすぅ♪」

「・・・」

祐一は未だ呆然としている。

「ずーっと、ずーっとしたかったんだぁ・・・」

「・・・」

「しあわせー♪」

「・・・」

ぎゅっと祐一の裾をつかんだまま祐一によりかかる。

「なんか・・・眠く、なって・・・きちゃっ、た・・・」

祐一が香里の顔を覗くと、すーすーと寝息が聞こえてきた。

「まったく、こいつは・・・」

祐一は自分によりかかり眠っている香里を軽く片手で抱きながらもう片方の手で自分の唇をなぞった。






「いろいろとお邪魔しましたー」

もう外は真っ暗である。

「ごめんね名雪、つい寝ちゃって・・・」

「ううん、私こそ早く帰れなくてごめんねー」

とんとん、と祐一がスニーカーを履く。

「んじゃ、香里そこまで送ってくわ」

「うん、気を付けて」

「うん、ありがと名雪」

祐一と香里が玄関のドアを開けようとすると、

「あ、そうだ祐一」

名雪が祐一を呼んだ。

「ん?」

名雪は小声で、

「送りオオカミになっちゃダメだよ」

「・・・」

なにもいわずに祐一は玄関を出て行く。

「え?ちょっと、なんで何も言わないのー!?」






「大丈夫か?」

「ええ、なんとかね」

「・・・悪かったな」

「もちろん許さない♪」

「・・・」

「ふんふーん♪」

「・・・やけに機嫌がいいじゃねーか」

「あ、わかる?」

「どうしたんだ?」

「ん、別に?」

そういってお互いは頬笑んだ。



果たして香里が本当に酔っていたのか。



それは本人しかわからない。



だけどなぜか香里の家へ向かう帰り道。



ずっと二人は寄り添い手を繋いで歩いていった。



離れないように。離さないように--------。








〜あとがき〜
つーことで反響が多かった作品の第2弾。ついに公開。
北川の姉はそのうち登場させます!!
ヒロインとなるかチョイ役になるかはお楽しみ。


                              祐一くん、一生離さないでね!