-------------それはある夏休みの日だった。



水瀬家のリビングでは3人の少女が真夏の動物園のカバのようにぶったおれていた。

「う〜にゅ〜」

「う〜ぐぅ〜」

「あ〜う〜」



ご存知、水瀬家3姉妹である。

「あーづーい゛ーよぉー」

「あうー、名雪あんまり言わないで、余計暑くなるから」

「うぐふー」

この街は雪国の中でもとりわけ湿度が高いため、かなりのダメージがある。

あの不老不死ソルジャー、ビーデルさん秋子さんでさえも暑い、という。


「どっかすずしい所行きたいなぁ」

真琴がつぶやく。

「そーだねー」

あゆも同意する。

「でも、宿題もどっさりあるし・・・」

名雪はやたら現実的だ。


物語はここから始まる。



   ご都合主義ここに極まれりSS



                    爆裂!!かのん旅行記

                     「毛布なんていらねぇぜ、夏」編   第1話


                                                          written by woody




がちゃっ

「あっ、秋子さんと祐一君が帰ってきた」



どたどた

なにやら祐一がこちらへ走ってくるようだ。

「おいっ!!嬉しいお知らせがあるぞっ!!」

「えっ!?なに?嬉しいお知らせって」

「ぐふふーっ」

祐一がなにやら気味悪い笑いを浮かべる。

「なによぉーっ、もったいぶらずに教えなさいよーっ」

真琴が祐一をせかす。


{作者の都合上、こっから祐一視点です}

「じゃーん!!豪華ホテルリゾートの宿泊招待券だーっ!!」

「「「おおおおおっ!!!」」」

「お母さん、どうしたのこれ!?」

「ライバル会社潰したらもらったのよ。会社一社につき8人分だったのでくれたの」

「………」

やっぱ謎だよ、秋子さん。

「へぇー、そーなんだぁ」

ちょっとは驚けよ、名雪。


「でも8人かぁ。お母さん、香里たちも誘っていい?」

「もちろんいいわよ。」

「ここにいる5人と香里と栞ちゃんと・・・あとは?」

「美汐は一人旅に出てるわよ」

真琴が答えた。

それにしても一人旅とは・・・ジェリー藤尾かアイツは。

「じゃあ祐一、舞さんたちは?」

「なんでも佐祐理さんのグループ系列のホテルに旅行に行ったそうだ」

非常に残念だ。いつものメンバーのなかでも2人とも上位を争うナイスバディだったのに・・・

「………祐一、目がやらしい」

・・・はっ。

いかんいかん。俺のイメージが。

「うぐぅ、祐一君のすけべ」

はうっ!!

「あうー、ヘーンタイ」

はううっっ!!

「お年頃ですしね」

だぉあっ!!!

「秋子さん、フォローになってません・・・」

「あらあら、ごめんなさいね」

「さて、いじけてる祐一はほっといて。」

ひど。

「水着買いに行くぞぉーっ!!!」

「「おーっ」」

名雪に続いて後の2人も意気揚々とついていった。


「ふふっ、祐一さんもたいへんですね」

「そう言ってくれるのは秋子さんだけです」

「ゆういちーっ、おかあさーんっ、早く行くよーっ」

「へいへい。じゃあ、行きますか」

「そうですね」

こうして俺たちは2駅ばかり先のデパートへ向かった。



「しっかし、あっついなぁー。今年の東京はそんなに暑くないって聞いたぞ」

「ここは地形的に湿気が強いからね」

道の途中で名雪としゃべる。

「そういや香里に聞いとかなくていいのか?」

「さっき聞いたらおっけーだってさ」

いつの間に・・・。

こいつ普段寝てるくせにこういう時だけは早いな・・・。

「祐一、いま失礼な事考えてなかった?」

「そのような事実はございません」

・・・みょーに鋭い所とかな。



しばらく話しているうちにお目当てのデパートに到着。

真っ先にみんなは女性水着売り場へ直行。

フードマーケットのタイヤキ屋やペットショップに寄らなかった所をみると、かなり旅行に気合が入っているようだ。

「あ、あとで5階のペットショップ寄ろうね」

・・・前言撤回。

やはり忘れてはいないようだ。



「へー、いっぱいあるなぁ。男の水着売り場とは大違いだな」

「当たり前じゃない」

まこぴーにいわれちまったい・・・。ゆうちゃんちょっとショック。



「あ、これかわいー!!」

「ほんとだー、名雪さんに似合いそうだね」

「あうー、これいいなぁ」


・・・・・・。


なにげに3人ともそこらの女子よりかはレベル高いしなぁ・・・。

水着姿、楽しみかも。

「ゆーいちぃ」

水着姿という高僧な考え事をしていると真琴が俺を呼んだ。

「ん、どした?」

「じゃーん!!どう、かわいいでしょ?」

「・・・」

真琴はビキニタイプの水着をつけてポーズをとっている。

高校生にしては結構キワドイ水着だが真琴になかなか合っていた。

・・・かわいいじゃん。

「どう?もしかしてあたしにホレちゃった?」

「バカいえ」

とかいいながら俺の額は冷や汗がつゆだく状態だ。

「もーっ、ゆーいちってば素直じゃないなー、ほらぁ、これでどーだぁ」

といいながら真琴が俺に擦り寄ってくる。

こ、ここは耐えろ祐一。(自問自答)

ここはデパートだぞっ、ましてやあとで名雪たちになんていわれるか・・・

「ゆーいちくーん、ちょっときてー」

たっ、助かったっ!!

「わ、悪いな真琴。あゆがお呼びだ」

「あっ、ちょっとゆーいちっ」

俺は逃げるようにあゆのところへ向かう。





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「ちぇっ、もう少しだったのに・・・」

真琴はさぞ残念そうにつぶやく。



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ふぅ。

あゆは手に持っている2着で迷っているようだ。

「どうしたんだ、あゆ」

「あっ、祐一君あのね」

そういって2着の水着を俺に見せた。

「どっちがいいかな、って」

「俺が決めろ、ってか」

「うん・・・」

なぜか顔を赤くして言う。

「どうせならどっかのお笑い番組みたいにはっぱのみで隠したらどーだ」

「祐一君に聞いたボクがバカだったよ・・・」

そこまで言うか、オイ。

「わかったよ、マジメに決めればいいんだろ」

「うんっ!!」

左手にあるのはワンピース。まぁ、妥当だな。

右手にあるのはセパレート。フリフリがついてるやつだ。

というか、こんなことで悩んだ事ないからな・・・どうしようか。

「あゆはどっちに心を揺れ動かされてるんだ?」

「セパレートのほうがかわいいんだけど・・・」

「挑戦する勇気がない、ってか」

「うぐぅ・・・」

「一度着たんだろ?」

「うん」

「そんで可愛かったんならセパレートでいいじゃんか」

「・・・わかった。じゃあ祐一君が勧めてくれたほうで」

「いや、なにごとも挑戦、といっただけなんだが・・・」

「祐一君が勧めてくれた水着、早く着たいなー」

話聞いてねえな。


「祐一ぃーっ」

おっ、名雪だ。

「じゃ、決めたんなら買っとけよ」

「うん」




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「コレ着たところ、ちょっと見てほしかったな・・・」

どうやらあゆも祐一を虎視眈々と狙っているようだ。


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「名雪?」

名雪は試着室から顔を出していた。

「祐一、ちょっと手伝ってほしいの」

「なんだよ」

「だからちょっと入ってきて」

・・・はい?

「後ろのひも、結んでほしいの」

「んなら秋子さんとか呼べばいいだろ」

「だってお母さん水着選ぶの夢中で聞こえてないんだもん」

「おいおい・・・」

「ねぇ、だから早くぅ」

「変な声だすな」

「変な声だなんてひどいよ祐一ぃ」

動揺をさとられないよう名雪の試着室に入る。


ちなみに小声で「おじゃましまーす」と言ってしまったのは秘密だ。


「そこにひもあるでしょ、それを結んで」

「これね」

なるほど。こりゃ一人じゃむずかしいな。

「・・・変なとこさわんないでね」

「ひょっとしたら事故で触ってしまうかも・・・ぐはっ」

名雪からすかさずエルボーされた。三沢を超えたな。

「早くむすんで」

「はいはい」



・・・・・・・・・。



沈黙が流れる。紐を結ぶ音だけが試着室のなかに響く。




「あっ、んっ」

突然名雪がちょっと色っぽい声を発した。

「お、おい、変な声だすなって」

「だ、だってくすぐったいんだもん・・・」

・・・ったく。


「はいよ、終わり」

「ありがと祐一。どう?似合うかな?」

名雪はそういってこっちを向く。

名雪のは俗に言うキャミソール・トップというものだそうだ。

かわいらしい水着は名雪の整ったスタイルになにげにマッチしていた。

「・・・いいんじゃない?」

「・・・それだけ?」

「・・・かわいいよ」

「そんなぁー、かわいいだなんてぇー、祐一ったら大胆なんだから・・・」

いや、名雪さんが言わせた感があるんですが・・・



「とりあえず決めたなら買っとけよ」

「はーい」

名雪の試着室を後にした。


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「いい雰囲気だったのに・・・ちょっと押しが弱かったかな・・・」

なにげに問題発言チックな名雪さん。

祐一は間一髪だったようだ。


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あれ、秋子さんはどこ行ったのかな・・・?

「祐一さん」

秋子さんの声がした。

声の方向へ振り向くと・・・

「似合いますでしょうか・・・?」

--------天使がいた。

秋子さんは頬を赤らめながらパレオのついた水着を着て俺に披露している。


こいつぁやられたぜ。

思わずペチッと額をたたく。


「どうでしょうか・・・?」

顔を真っ赤にしながらも不安げに俺に意見を求める。

「サイッコーです!!秋子さん!!」

グッジョブ。マイエンジェル。

「そ、そうですか・・・そういってもらえてよかったです」


カーテンがしまった後の秋子さんのいる試着室に拝んでしまったのはよくある話。




「いやぁ、今日は楽しかったなぁ」

「そーだねー」

俺もトランクスの水着を買ってみんなで夕方の帰路についている。

なんだかんだいって楽しい1日だった。

いいものも見れたし。

秋子さんがさっきから顔が真っ赤でずっとうつむいているのが気になるが。

3姉妹は遊ぶ計画を立てながら帰り道を歩いている。

どんな旅行になるのか楽しみだ。


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「祐一さんに褒めてもらっちゃいました・・・うふふ・・・」

秋子さん、あなたもかああぁぁ。

「祐一さんのはーと、げっちゅ、です」

秋子さんは顔を真っ赤にして小さくガッツポーズ。

なんか一番純情だ秋子さん。萌えるぜ秋子さん。

敵は多い。頑張れ秋子さん!!!

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〜あとがき〜

新連載、スタートです。
今回は萌え中心で。
はたして誰がメインヒロインになるのか!?(たぶんもうバレてる)
乞うご期待!!

                              あははーっ、戻りますよーっ