「
〈 -そばにいれるなら- 〉
『わたしはかぜになりたい』
いつもあなたとふれあっていられるから。
『わたしはみずになりたい』
あなたがいつも必要としてくれるから。
『わたしはきになりたい』
いつもあなたを上から見ていることができるから。
わたしがあなたをいつも必要としているように。
あなたにとっていつも必要である存在になりたい。
あなたのココロの真横にいるのは。
いつでもわたしであってほしい。
でも。
あなたをいつも必要としているのはわたしだけじゃない。
たくさんの人があなたを慕っている----------愛している。
何年かしたら・・・あなたの隣にいるのはわたしじゃない別の誰かかもしれない。
わたしはあなたの隣でずっと・・・ずっと笑っていたい。
でも、もしあなたが他の誰かを愛してしまったら。
あなたにとっていつも必要である存在がわたしじゃなかったら------------。
でも。もしそうなったとしても。
わたしはあなたの選んだ幸せを祝福するでしょう。
あなたの選んだ幸せを邪魔する気になんてなれない。
「愛してる」なんて言ってくれなくてもいい。
「ずっとそばにいる」なんて言ってくれなくてもいい。
たとえあなたの笑顔がわたしに向けられたものでなかったとしても。
あなたが幸せでいられるなら。あなたがいつも笑っていてくれるなら。
わたしは『きっと笑って』あなたが選んだ幸せを祝福するでしょう。
風や木や水はどんな時でもあなたが必要としてくれる。
たとえあなたのココロの中にわたしじゃない誰かの姿があったとしても。
だから。
わたしはあなたの風に。木に。水になりたい。
あなただけをみつめていたい-----------。
」
「よお、天野」
「きゃっ!!」
美汐がおもわず振り向いた先には。
「なーにやってんだ?」
更新再開1発目からこれですかいSS
そばにいれるなら
written
by woody
「もう、祐一さん!!おどかさないでくださいっ!!」
「ははっ、わるいわるい。で、なにやってたんだ?こんな暑い中で」
ここは公園。
最高気温33℃という炎天下の中、天野美汐は木陰に座って何かを書いていた。
「俳句か?」
「ちがいますよ・・・なんですかその意外そうな顔は」
「ソンナコトナイゾ」
「まったく・・・ちょっと詩を書きたくなって書いてたんですっ」
「ほほう、歴史に名を残すべく吟詩を書くことにしたのか」
「そんなこという人嫌いですっ!!!」
「それは栞の口ぐせなんだが・・・ふむ、愛の詩か・・・どれ、見せてくれよ」
「えっ、あっ、ちょっと・・・あまり見ないでください・・・恥ずかしいじゃないですか・・・」
「ふむふむ・・・ほほう・・・なかなか面白い詩じゃないか」
「ホントですか?」
「なんだ、やけに疑うじゃねーか」
「だって相沢さんが素直に褒める、というフラグがわたしの辞書に存在していませんでしたから」
「・・・なにげにひどいこと言っている気がするんだが」
「そうですね」
「・・・だがこの間みせてもらった天野の作った壷もどうかと思うぞ」
「・・・そんなにひどかったですか?」
美汐は軽く泣きそうである。
「い、いやっ・・・玄人好みだと思うぞ、独創性に満ち溢れているしな」
「なにげに『よかった』と言ってくれないところがカチンときます」
「ゴメンナサイ」
「・・・まあ、詩は褒めてくれたから特別に許します」
「そ、そうか」
「今度じっくりお話を聞かせていただきます」
「・・・はい」
「まあ、それはおいといて・・・詩、ホントによかったですか?」
「ああ、その『あなた』っつーのを好きなんだな、ってのはよくわかる」
「・・・そうですか」
「ふむぅ・・・ちょっとありがちだな」
「・・・ほっといてください」
「それにしても、これってどーやって書いたんだ?」
「どういうことでしょうか?」
「うーん・・・」
「・・・なにか言ってください。ますます気になります」
「天野」
「はい?」
「これって天野の好きな人にあてた詩か?」
「ええええっっっ!?」
「だってあまりにもリアルなもんでちょっと気になってな」
「えと、あの、そのぉ・・・」
「そーなんだろ?」
「・・・・・はい」
「ほほぉ、やはり」
「・・・知り合ったのはついこの間なのに私にとってはなにより大切な存在なんです」
「そうかぁ、天野がねぇ・・・うんうん、いやぁ青春だ」
「・・・(赤面)」
「で、誰だ?俺の知ってるやつか?」
「・・・は?」
「ここまで知ってしまった以上はひじょーに気になるもんで」
「・・・これは鈍感を通り越してヴァカですね」
「なーなー、誰なんだよー」
「そんなこと言ってる人には一生教えません」
「えー・・・」
「私、そろそろ帰ります」
「お、そうか。じゃあ送るよ」
「・・・はい」
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「そうかぁ、天野がねぇ・・・」
「もう先ほどのことは全て忘れてください」
「でももし天野の恋が実ったら寂しくなるな」
「・・・え?」
「俺と遊んだりする事もなくなるだろ?けっこう一緒にいて俺は楽しいのにな」
「・・・私もとっても楽しいです」
「そか。まあがんばれ」
そのとき、一陣の風が私たちの元に吹きました。
「
ダメだったら俺が天野をもらってやるから」
そんな小さな小さな言葉と共に。
「なにかいいましたか?相沢さん」
私は聞こえたのにもかかわらず意地悪く聞き返してしまいました。
相沢さんはなんでもねーよ、といって先に行ってしまいました。
わたしの詩に綴った切ない想い。
風や水や木にならなくても『あなた』の隣を歩く。
そんな日が来るのもそう遠くはないかもしれない--------。
そう思うと嬉しい気持ちが溢れて止まらない。
わたしにとってすばらしい収穫のあった夏の日でした。
〜あとがき〜
なんじゃこりゃ。
のっけからこれですかい。的な感じです。
終わりかたがむずかしいですねぇ、こういった類のものは。
ちなみに詩のモチーフはコブクロの「そばにいれるなら」です。
インディーズ時代の曲なのでそう簡単には手に入らないかもしれませんが
持ってる方が近くにいたらぜひ聞いてみてください。
ゆーいちーっ、戻るから肉まん買ってーっ