「ごめーん、祐一ぃ。先帰っててー」

授業も無事終わり放課後。

突然名雪が言い出した。

「え?おまえ今日部活ないんじゃないのか?」

「うん、でもこないだの大会の打ち上げだってさー」

「ふーん・・・そっか」

「ごめんねー」

「ま、楽しんでこいや」

「うんっ!じゃ、お母さんにも言っといてね」

「おう」

「じゃーねー!」

「・・・ふう」

「あらあら、奥さんが同窓会に行くようなシュチュエーションね」

「な、なんだよ香里」

突然登場、香里様。

「なんかドラマみたいなセリフだったわよ」

ドラマって・・・やっぱ栞と姉妹だな。

「なんか言った?」

「い、いえっ!!」

「じゃーね、相沢君」

「おう」

なんかひさしぶりに一人だな。

・・・ちょっと寂しいかも。

そ、そうだ!

「北川!たまにはいっしょにゲーセンでも・・・」

「北川ならもう帰ったぞ」

・・・。

あんにゃろ。

「よし!ここはおまえで妥協してやろうではないか!森山」

「俺は斎藤だっ!!」

「そうだっけ?」

「・・・一度お前を潰してみたかった」

「ふっ、お前にかまっているほど俺様はヒマではないんだよ、山藤」

「だから斎藤だ!!」

「っつーことで、じゃーな岡崎!」

「テメェいつか殺す!!」

っつーことでロンリーウルフな祐いっちゃん。

しゃぁねぇ、おとなしく帰りますか。





最近2000円札と久々にご対面SS



                 赤ちゃんと僕 (それと、まこぴー)


                                                             written by woody






がちゃっ。

「ただいまー」

玄関の扉を開けると奥から楽しそうな声がする。

ん?だれか来てるのか?

靴を脱ごうとすると。

がちゃっ。

リビングに繋がる扉が開き、出てきたのは真琴。

「あ、ゆーいちおかえりー」

「おう、ただい・・・」

真琴の腕には。

「おたーりっ」

赤ちゃん。

・・・。





「真琴」

「え?」

「いくらなんでも人の子をパクってくるのは良くないぞ」

「んなわけないでしょー!」

「じ、じゃあまさか・・・」

「いっとくけどあたしの子だ、なんて考えてないでしょーね?」

「ま、まさかぁ・・・考えるわけネーダロ、はっはっは」

「じとー」

「ちとー」

「擬音を口に出すな」

赤んぼもマネしちゃってるし。

「あら、祐一さんお帰りなさい」

「ま、まさか・・・秋子さんの・・・」

「言っておきますが私の子ではないです」

「そ、そうですか・・・ほっ」

「いくらなんでも無理ですよ」

「そ、そうですか?あんなジャムを作るんですから赤ちゃん一人ぐらいワケないと・・・」

「なにか・・・?」

「なんでもないです、ハイ」







「なるほど、1日だけ預かってくれと」

「はい、私の知り合いの鳴海さんがお葬式に出るので今日だけ水月ちゃんを預かって欲しい、とおっしゃって・・・」

なんか秋子さんの歯切れが悪いな。

「秋子さん、もしかして・・・?」

「はい・・・ちょっと急な仕事が入ってしまいまして・・・」

「やっぱりですか・・・」

「ええ・・・ちょっと過激派の排除・・・ゲフンゲフン」

・・・あえて何も言うまい。いっしょに排除されたくないから。

「だいじょぶだよー!あたしがいるもーん!」

真琴が飛び跳ねるように手を挙げアピールする。

「ええ、真琴と祐一さんがいるので安心です」

「俺は不安でいっぱいなんですが・・・」

秋子さんと同時に真琴と水月ちゃん(3歳)を見る。

「ほーら、たかいたかーい」

「きゃっきゃ♪」

「大丈夫そうですね」

「今のところは、ですけどね」

「さー、水月ちゃーん」

真琴って意外と子煩悩かもな。

「いっしょにゆーいちの部屋で花火しましょーねぇ」

「あーい!」

やっぱり不安だ・・・。









「では、いってきますね」

できるだけ早く帰ってきてくださいね」

「だーいじょうぶよぉ、真琴がいるんだからー」

「らー」

「ふふっ、帰りにおいしい肉まん買って来ますからね」

「やーったぁ♪」

「たぁ♪」

まったく・・・。

「じゃ、行ってきます」

「いってらっしゃーい」

秋子さんの早々なる帰宅を願ってできるだけ長く見送る。

さてと。

「はーい、水月ちゃーん、おうち入りましょーねー」

「あーい」

けっこう似合ってるかもな。

天野とは違ったタイプのいい母親になりそうだ。

そのとき真琴の隣にいるのは誰なんだろうな・・・。

「ゆーいちー」

俺ならいいな、ってちょっと思ったり。

「むー、ゆーいち聞いてないなー・・・よーし」

でも違ったら・・・。

「さぁゆーいちちゃーん、おうち入りましょーねー」

「のわぁっ!?」

な、な、な・・・。

「やっと気づいたよーさっきから呼んでたのにー・・・」

「にぃ」

「わ、わりぃ・・・」

ちょっとドキドキしちゃった。

ゆーいちちゃん・・・?

いやぁ、恥ぅっ!

「なに顔真っ赤にしてんのよー・・・ひょっとしてさっきのでテレちゃった?」

「バ、バカこくでねぇ!さ、れっつごーとぅざはうす!」

自分でもなにを言ってるかよくわかっていない。







「ふふっ、ゆーいちかわいっ♪」

玄関の扉を開くときそんな声が聞こえたり聞こえなかったり。







「で、なにすんだ?」

とりあえず落ち着きを取り戻しつつ問う。

「んーとねぇ・・・おままごと!」

「幼稚園児かお前は・・・」

「いいじゃなーい、この子は赤ちゃんなんだからー」

「まぁ、そうだが・・・」

なんかうまく丸め込まれた気がする。

「じゃあ配役きめまーす」

「ぱちぱち」

水月ちゃんが紅葉のような手でぎこちない拍手をする。

なかなかすごい子だな。

「真琴がお母さんでー」

親子ネタか。定番だな。

「水月ちゃんがお父さんでゆーいちが子供役にけってー!」

「てってー!」



「・・・ってちょっと待てぇぇぇぇぇ!!!

「あう?」

「異議あり!キャスティングがおかしすぎる!」

「なんでよぉ?」

本気でいってんのかコイツ・・・。

「子供なら現役バリバリの赤ちゃんがここにいるだろが!なにが悲しゅうて赤ちゃんの子供役にならんといけないんじゃ!」

「うるさい役者ねぇ・・・真琴『ぷろぢゅーさー』の言う事が聞けないの!?」

「いや、俺は常識から考えて言ってるだけなんだが・・・」

「あーわかった!」

「・・・なんだよ?」

「真琴の『だんなさん』がやりたいんでしょー!」

「なっ!ん、んなわけねーだろ!」

「そーならそーといえばいーのにぃ・・・」

「にぃ」

水月ちゃんまで・・・。

「しょーがないからゆーいちに『だんなさん』役やらせてやるわよ」

なんか始める前からすんげー疲れた・・・。







こうして「おままごと」はスタートしたのだが・・・。




「た、ただいまー」

「おかえりなさい、あなた」

なんか真琴がこんなこといってくれるとちょっと可愛いかも。

「ごはんにする?お風呂にする?それとも・・・」

そ、『それとも』!?

『それとも』ってなんだ!?

そこまでリアルに作るのか、このままごとは?

オッケー!ままごとオッケー!

「それとも・・・」

ごくっ。

「肉まん?」

・・・はぇ?

「やっぱ肉まんよねー!わかったーすぐ作るわね、あなた♪」

・・・。

ひゅー。

・・・。

「・・・風呂にする」

「え、肉まんじゃないの?」

「・・・ああ」

「ごはんやお風呂の前の肉まんはサイコーなのに・・・」

「・・・いや、風呂に入りたい」

「そう、じゃ入っちゃって」

「お、おう」

お風呂に入るフリをする。

「ざばー」なんて擬音もつけちゃったりして。

なんだかんだ言ってノリのいい俺。

「なにしてんのゆーいち?」

「なにって風呂入ってんだろが」

「ボケたの?お風呂はあっちよ」

といって水瀬家の風呂がある方向をさす真琴。

「えーと・・・」

どこからツッコんでいいのかわからない。

「あ、水張っといたから冷たいかもしんないけど温かいって演技してね」

「ムチャ言うな!!」








「あなたー、ごはんよぉー」

「おう」

返事をして水瀬家のテーブルに行くと。

「・・・つーかホンモノのごはんじゃん」

「あたりまえでしょー」

「しょー」

水月ちゃん、まこぴー化してきてる。

「今日の夜用に秋子さんが作っといてくれたの」

「ほう・・・ってオイ」

「なによ」

「おまいさんは時計の見方もわからんのか」

まだ夕方の4時じゃねーか。

「わかってるわよ、でも『りありてぃ』があったほうがいいでしょーが」

「んが!」

「この後どーすんだよ!!」

「・・・あ」

今わかったんですかい。

「ま、どっちみちお腹にはいんだから変わんないわよ」

コノヤロウ。

しらきりやがって。

ホントにおでんの鍋に放り込んでやろうか。

「てめぇ・・・いいかげ・・・」

怒り爆発しようとした瞬間。

くいくい。

誰かが足を引っ張っている。

「おこっちゃめーなの」

水月ちゃんにたしなめられてしまった。

「・・・はい」

「ねぇ、ぱぱぁ」

「「ぱ、ぱぱぁ!?」」

真琴と同時に声を上げる。

「ごはんたべさせてー」

・・・。

「あうー」

「それ、あたしのセリフ・・・」

「ねー、ぱぱぁ」

よっし!俺も男だ!

ここはひとつノッてやろーじゃねーか!

「はーい、じゃー水月ちゅわーんスープですよー、あーんしてくらっさーい」

「・・・」

真琴がちょっとひいてる。

「こ、こら真琴!おままごとはまだ続いてるんだぞ!お前もノッてこんか!」

「はっ」

真琴、ようやく始動。

「え、えーと・・・はーい水月ちゃーん。ママも食べさせてあげるからねー」

真琴も半分ヤケになったようだ。たぶんだが。





こうしてこの『やけっぱちおままごと』は秋子さんが帰ってくるまで続いたのだった。







そして・・・。

「本当に水月を預かっていただいてありがとうございました」

鳴海さん夫婦が帰ってきて遙さんと秋子さんが挨拶をしている。

「いえいえ、お礼ならこの二人に言ってください」

「そうですか、ありがとうね、祐一君、真琴ちゃん」

「い、いえいえ」

「あうー・・・」

俺も真琴もなんかお礼をいわれるのが恥ずかしくて顔を上げられなかった。

「水月を見ていられるんだからきっと2人はいい夫婦になるわ」

「「!?」」

「ふふっ、二人とも照れちゃって・・・」

秋子さぁん、フォローになってないっす・・・。

真琴は真っ赤になっている。

珍しいな、こんな真琴は。

ちょっとかわいく見えたりして・・・。

「おやおや、2人ともまんざらでもないようだね」

げはぁ。孝之さん、シャレになってないっす・・・。





「じゃーね、水月ちゃん」

真琴が水月ちゃんとの別れを惜しんで半泣きになっている。

「ばいばい、まま」

「「「ままぁ!?」」」

鳴海さん夫婦と秋子さんは奇声を上げる。

「あ、あははー」

「ぱぱもばいばい」

「ああ、また会おうな」

「うんっ!」

「じゃ、私達はこれで」

鳴海さんファミリーを乗せた車が走り出す。

「みつきちゃぁん!ばいばーい!」

車の中の水月ちゃんに大きく手を振る真琴の目からは大粒の涙がこぼれていた。





夜遅く。

俺は自分の部屋に戻りベッドに横になる。

ちなみに、いまだ名雪は帰ってきてないので秋子さんはリビングにいる。

真琴も自分の部屋に戻ったらしい。




「なーんかいろいろあったよなぁ、今日は・・・」

「今日はいろんな真琴が見れたし・・・」

思い出に浸りつつ少しまどろんでいると。

こんこん。

扉をノックする音が。

「どーぞ」

「ゆーいち」

「おっ、真琴か」

「今日は迷惑かけちゃってゴメンね・・・」

「どした?急に」

「あのね、ゆーいちと赤ちゃんとあたしと3人で遊んでてなんだかすごく幸せだったの・・・」

「真琴・・・」

「こんな時がずっと・・・ずっと続けばいいなって・・・」

「そうだな・・・2人で作っていこうな・・・ママ」

「バカ・・・」

そして真琴との距離が縮まり------------------。




「ゆ・う・い・ち?」

俺と真琴が同時に声のする方を向く。

「な、名雪・・・」

「名雪おねーちゃん・・・」

名雪はにまーっ、と笑った後、

「祐一?真琴に向かってママってどういうこと?それと真琴となにしようとしてたのかなぁ?」

「うぅ・・・」

俺が返答に困っていると・・・。

「ゆーいち」

「ん?」

真琴が俺を呼んだので振り向く。

その瞬間---------。




ちゅっ。





「あああー!!!!!」

名雪の絶叫が水瀬家にこだまする。

「ゆーいちっ!これからも一緒にいよーねっ」

「・・・そうだな、一緒にいような」



「ゆーうーいーちー(激怒)」




さて、これからいろいろ忙しくなりそうだ。






〜あとがき〜
オチが弱いっすね。(←自覚)
でもうっでぃの構成力ではたぶんこれが限界です・・・。
絶対いつか加筆して満足できるぐらいに仕上げたいと思います。
感想、よろしく。



                              ぱぱっ、もどるのー♪