日曜日。
冬が近づいてくるのを思わせる少し肌寒い風。
一人、祐一さんが来るのを待つ。
約束の時間までは30分近くある。
お姉ちゃんに、
「早く行って待つのもいいけど風邪ひかないでね」
と、言われた。
どうして私が早く行くってわかったんだろう。
時間を教えたわけじゃないのに。
でも、早く来てずっと待っているのは嫌じゃない。
祐一さんがもし早く来てくれたらすごく嬉しいだろうな。
祐一さんがもし遅れてきたらいろんな物をたかってやろうかな。
そんなことを考えながら待つ。
なんだかすごく幸せ。
こんな風に想われてぇ・・・SS
my sweet time
written
by woody
2003.10.25
好きな人を想いながら待つ。
そういった本を読んではヒロイックな気分になるのが私は好きだった。
そしていつか自分もそうなりたいと思っていた。
でも無理だと思った。
私は決して永らえないと自分で理解していたから。
だからこそヒロインにあこがれたのかもしれない。
でも、まさか本当に王子様が現れるなんて夢にも思っていなかった。
自殺さえ考えていた私に希望を与えてくれた。
おまけにあれだけ私を苦しめた病気まで消えた。
医者は「奇跡だ」と叫んでいた。
あの人と会った時から私の運命が大きく変わった。
あれだけ泣いていた私がたくさん笑えるようになった。
あれだけ泣いていた私が「今、幸せ」と思えるようになった。
すべてはあの人のおかげ-------------。
そう思うだけで心があったかくなる。
祐一さんのそばにいるだけですごくドキドキする。
これからもずっと祐一さんのそばでドキドキし続けていたいな---------。
「・・・おりー」
・・・え?
なんか声が聞こえる。
「栞ー、生きてるかー?」
「あ、あれ?」
思わず我に返った私の前には不思議そうな顔して私の前で手を振っている祐一さんが。
え?
ええ?
「祐一さん!?」
思わず大声を出してしまう。
「な、なんだよ。ビックリした」
「あ・・・っと、ごめんなさい」
思わず腕時計を見る。
時間ピッタリだ。
私がいろいろ考えている間に時間が経っていた事に気づかなかった。
「なんとか間に合ったみたいだな」
「あ、はい・・・」
「どしたんだ?ボーっとして」
「あ・・・えーと、ですね・・・」
さっきのことを考えるだけで顔が熱くなる。
「ま、どーせアイスかなんか考えてたんだろうけど」
「そんなこと言う人嫌いです!いつもアイスを考えているわけじゃありません!」
「へー・・・そうなの・・・」
「ゆ・う・い・ち・さん?」
「いや、悪かった」
「もう・・・」
「いやー、しかし栞に嫌われちゃったなー」
そういって祐一さんは背中を向ける。
「え?」
「『そんなこと言う人嫌いです』なんていわれちゃったもんなー」
「えっ、あの、その」
「明日からどうやって生きていけばいいんだろ、俺」
そういって祐一さんはどんどん歩いていってしまう。
「あ、あの・・・ご、ごめんなさい・・・ほ、本気で言ったんじゃあ・・・」
「はぁ・・・」
そういって祐一さんは大きなため息をつく。
わたしに背を向けたまま。
私がどんなに追いつこうとしても祐一さんの歩幅の方が大きくて追いつけない。
--------祐一さんがどこかへ行ってしまう。---------
おもわず私は足を止めてしまった。
「ご・・・ごめんなさい・・・だ、だから・・・行かないで・・・」
私の目は気づかないうちに涙でいっぱいになっていた。
「し、栞?」
振り向いた祐一さんが急いで私に駆け寄ってきた。
私は思わず祐一さんにしがみついた。
「おねがい・・・です・・・私を置いて、いかないで・・・どこにもいかないで・・・下さい・・・」
「・・・栞」
「なんでも・・・しますから・・・祐一さんが望むなら、なんでもしますから・・・」
「・・・悪い」
「え?」
「ちょっと冗談が悪かったな」
「冗談・・・だった、んですか・・・」
「当たり前だろ、俺が栞を置いていくわけないだろ」
よくよく考えると普段の私ならすぐ冗談だ、って気づいてたはずなのに。
どうしちゃってたんだろう。
--------ああ、それぐらい私はこの人が好きなんだ。
「ひど・・・すぎますよ・・・」
「ほんとにごめん・・・」
「絶対、許しませんからね・・・」
「じゃあどうしたら許してくれる?」
祐一さんはちょっと不安そうな目つきで問いかけてきた。
「じゃあ・・・」
私はひとつ息をして。
「一生、私のそばにいてください」
「・・・栞」
「どんなことがあっても私から離れないで下さい。私を離さないで下さい」
「ずっと・・・私を好きでいてください」
すると祐一さんはすごく優しい顔をして。
「栞」
「・・・はい」
「俺はずっとそばにいる。ずっと栞から離れない」
「ずっと栞を愛してるから」
ぽたっ。
私の目はまた涙でいっぱいになった。
「・・・ぐすっ」
「ったく、泣くなっつの。これからデートするんだろ?」
「うぅ・・・だって」
「そんな鼻水ベーベーたらして行く気なのか?」
「は、はなみ゛ずな゛んがたらじてまぜん゛っ」
・・・。
「わっはっはっは!!」
思わず鼻声が出てしまい笑われてしまった。
「うー・・・」
また泣きそうになってしまう。
祐一さんの前なのに。
「今日の栞は泣き虫だなー」
なんてひどいことを言う。
そのとき。
「ほら、おいで」
そういってティッシュで顔を優しく拭いてくれた。
そのときの祐一さんの顔はすごく優しくて。
すごく恥ずかしかったけどすごく嬉しかった。
「っと・・・ほれっ、終わったぞ」
「・・・ありがとうございますです」
あまりの恥ずかしさに変な言葉になってしまった。
「よしっ、いつまでもこんな所にいないでとっとと行くか」
そういえばまだここは公園だった。
「はい、行きましょう・・・」
それでも失態をみせてしまった以上どうもテンションが上がらない。
「なんだよ、いつまでも気にしてんな」
「でもぉ・・・」
そう私がつぶやいた瞬間。
そっと祐一さんの顔が私に近づいて。
キスしてくれた。
ただ唇が触れるだけの優しい、優しいキス。
それだけですごく心がすっとした。
「よし、まあこれで元気出せ!」
私はぐしぐしと目にたまっていた涙をぬぐって。
「はいっ!行きましょう祐一さん!」
やっぱり意地悪だけど。
やっぱり優しい私の王子様。
ずっと、ずっと。
この人のそばで笑っていけたらいいな。
「そういえば祐一さん」
「ん?」
「女の子を泣かせた罰として今日はたくさんおごってもらいますからねっ!」
「な、なんですとーっ!」
「それから・・・」
「え?」
「私に意地悪した罰として」
「な、なんだよ・・・まだあんのか・・・」
祐一さんはちょっと身じろぐ。
そんなあなたにとびっきりの笑顔で。
「一生、責任とって下さいね、祐一さん♪」
〜あとがき〜
甘ったるっ!
とりあえずひさしぶりのSSです。
栞はリベンジの意味も兼ねて。
ひさしぶりなんでそうとう砂吐き甘甘になっちゃいました。
それにしても
展開がムリヤリっぽすぎ。
「世界で一番大切なアナタへ」もそのうち1から手直しして復活させます。
(04/03/07 補正済み)
まずはやっぱりアイス、ですね♪