「ふぅ〜・・・疲れた」

有希が転校してきた次の日の放課後。とはいってもすでにとっぷりと日は暮れている。

副学級委員である相沢祐一は美坂香里とともにプリントなどの整理でいつもより帰りが遅くなり、そして今帰宅の途についている。

「やれやれ・・・香里め・・・力仕事ばっかりまかせやがって・・・」

今日の祐一はプリント類を職員室へ運んだり教室へ運んだり・・・という力仕事ばかりだった。

もうヘトヘトで少しでいいから持つの手伝ってくれ、と祐一が懇願しても、

香里曰く、「男の子でしょ?しっかりしなさいよ」などうまくかわされ、結局全部自分でやったのである。

というのも、これも香里の「結局夜までかかって相沢君とレストランでお夕飯♪大作戦」の一環であったことは祐一は知らない。

しかし、祐一の力をあなどっていたのか結局夜になる前に終わってしまい、香里の計画は失敗に終わった。

しかも机に隠しておいた作戦の計画書が栞に見つかり、踏んだり蹴ったりな香里であった。



そんなことはちーとも知らない祐一は、

「腰がいてぇ・・・○レキバンと湿布どっちのが効くかな・・・?」


年に似合わない発言をしながら家に向かう祐一であった。







長くなりそうだ・・・SS



                               Love Capriccio

                         -A good medicine tastes bitter.- 〜第4話〜


                                                                written by woody
                                                             last updated 2004/01/11




「はぁ〜、やっと着いた・・・」

やっとの思いで水瀬家の玄関前にたどり着いた祐一はおもわずため息をついた。

「とっとと寝てこの痛みを緩和したい・・・」

仕事疲れの旦那のような顔で玄関の扉を開ける。

すると、

「おっかえり〜〜!!!」


大きな声と共に何かがぶつかってきた。

がしぃ!!

「のわぁ!?」

しかも、抱きついてきた。

「真琴、突然突っ込んでくるのはやめろよ・・・」

そこに階段から声が。

「あー!!ちょっと何してんのよー!!ゆういちー!!」

「あれ?真琴?なんで階段にいるんだ?」

「何いってんのよ。ボケたんじゃないの?」

「じゃあこれは・・・?」

「遅いよぉ〜、さびしかったよぉ〜」

そういって祐一の胸の中にいる人物は顔をあげた。

「おかえりー、ゆうちゃん」

「・・・って、有希!?」

「うん、そだよ」

なぜか有希が水瀬家で祐一を迎えた。

「そだよ、じゃなくて何してんだここで」

「秋子さんがごはんをごちそうしてくれるって言うから」

「そうなんです」

「うわぁ!?秋子さん、いつのまに・・・」

「有希ちゃんとすっかり気が合ってしまって・・・」

「って秋子さん、有希のこと知ってたんですか?」

「ええ、名雪から聞いていましたので」

「・・・そうですか」

「あらあら、お鍋がふいちゃう」

そういって、秋子さんはキッチンにぱたぱたと駆けていった。

「ちょっとー!!アンタ祐一とどういうカンケイなのよー!!」

「ただの幼馴染だってば・・・」

そのとき、敬語での返事が真琴から聞こえた。

「ホントですか?」

「え?」

失礼。正確には、真琴の後ろから、だった。

「相沢さん、お邪魔しています」

「あれ、天野。来てたのか?」

「ええ・・・それで」

「?」

「その方との事、いろいろとお聞かせ願いたいものですね」

「ぶるーたす、お前もか・・・」






「とまぁ・・・こんなわけだ」

「まぁ・・・幼馴染というのは理解できました」

「そうか、わかってくれて嬉しいぞ天野」

「ですが、その・・・抱きついたり・・・するのは理解できません」

「そーよー!抱きつくのはあたしの特権よー!!」

「・・・真琴?どういうこと?」

「あ、あうー・・・美汐、こわい・・・」

「・・・まあいいです、真琴には後でいろいろ聞かせていただきます」

「あうー・・・」

まさに墓穴を掘った、というような真琴の顔。

「えーと、悪いが先に御飯食べたいんだが・・・」

「駄目です、逃がしません」

「頼むよ・・・今日は疲れてるんだよ・・・」

「そういえばお帰りが遅かったですね。何をなさってたんですか?」

「委員会の書類整理だよ。プリント運びしまくって疲れたんだよ・・・」

「・・・美坂先輩も学級委員でしたね。一緒に作業なされてたんですか?」

「ああ。もう少しで晩飯はレストランになりそうだったよ」

「・・・そうですか。そういうことですか」

「なにが?」

「ああ、いえ。やはりあなどれませんね、美坂先輩。

「どした?」

「なんでもありません。それよりお夕飯にいたしましょう」

「おう、もうペコペコで・・・」






「おお!これは!俺の好物ばかりじゃないか!!」

今日の夕飯はピンポイントに祐一の好みを取り揃えていた。

「なぜこんなに好物ばかり・・・」

「はーい!私が秋子さんと一緒に御飯作ったからでーす!」

「有希か。しかしよく俺の好物覚えていたな」

「ゆうちゃんの好物だもん。当たり前だよ」

「くっ・・・やはり有希さんもあなどれませんね・・・」

「あうー、私だって負けないんだから・・・たぶん」

「祐一さん、せっかくですからたくさん召し上がってくださいね」

「ありがとうございます、秋子さん」

「あたしは?あたしは?ゆうちゃん」

「ああ、ありがとな」

そういって有希の頭を撫でる。

「えへへー♪」

「う、うらやましいです・・・」

「あうー、いいなぁ・・・」


「祐一さん、私にはないんですか?」

「あ、秋子さん?」

「冗談です」

「あ、あはは・・・」

-注-ちなみに今回は秋子さんはヒロイン候補ではありません。(残念です・・・by秋子)

「さーて、いただきまーす!」

重労働でお腹がすいていた祐一はすごいペースで食べ始めた。

「もう・・・ゆうちゃんたら・・・口のまわり、すごいよ」

「ん?」

そこに。

「相沢さん、私が取ってあげます」

そういって美汐は祐一の口のまわりをティッシュで拭う。

「お、さんきゅ。天野」

笑顔で祐一が礼を言う。

「い、いえ・・・とんでもないです」

祐一の笑顔と普段の自分なら絶対出来ないような自分自身の行動に照れる美汐。

「そういえば、名雪は?」

「今日は部活が遅くなるそうですよ」

「そうなんですか?」

「ええ、なんでも昨日抜け出した罰だとかで」

「・・・」

なんともいえない祐一。

「名雪ちゃん遅いのかぁ・・・一緒に食べたかったなー」

「じゃあ今度は名雪もいるときに食べにきてくださいね」

「ホントですか!?ありがとうございます秋子さん!」

ほのぼのした雰囲気にひたりつつ祐一は御飯に箸を伸ばそうとすると、

「祐一ぃ、あたしがたべさせてあげる」

真琴が祐一の箸を奪う。

「うぉい!?なにするんだ!?」

「だから、あたしが食べさせてあげるって。はい、あーんして」

「・・・あーん」

「うん、いい子いい子」

そういって真琴は祐一の口に唐揚げをほおり込んだ。

「おいしい?」

「・・・おいしい」

「よかったー♪」

「お前が作ったのか?コレ」

「ううん、秋子さん」

「違うのかよ・・・」

「いいじゃない、気持ちの問題よ」

「あー、私もー♪」

「私も・・・よろしいでしょうか」

有希と美汐も参戦。

「ちょっとー、2人とも!!あたしが最初に言い出したんだからね!?」

「フツーに食べさせてくれぃ・・・」

その中で、

「あらあら」

秋子さんは頬笑みながらその様子を見ていた。






「ふぃー、食った食った」

食事もなんとか終わり、みんなリビングでくつろいでいる。

「あー、ホントに腰痛いな・・・」

「ねー、大丈夫?」

有希がねそべっている祐一に問いかける。

「正直ちょっときついかも・・・」

予想以上に祐一の体にこたえたようだ、寝そべった途端に腰の痛みが再発した。

「・・・」

有希は少し考えた後。

「ね♪私がマッサージしてあげよっか。」

「マッサージ?」

「うん!」

正直、このままでは明日の学校に響くと思ったので、

「じゃあお願いするか」

「やった♪」

そういってうつぶせの祐一の背中にまたがる。

「おっ客さーん、こってますねー」

有希の細い指が祐一の背中を指圧する。

「おお、意外とうまいじゃんか」

「へへー、そうでしょ」

「ああ、気持ちいいな・・・」

「寝てもいいよ。終わったら起こすから」

「ああ・・・」

すでに祐一の目はうつろだ。



祐一の意識がだんだん夢の中へ・・・。



「あー!!ちょっと有希!!なにやってんのよ!!」

行かなかった。



「なにって、ゆうちゃんが疲れたって言うからマッサージしてるの」

「うー、あたしもやるー」

「私も癒し系ヒロインとして相沢さんの疲れを癒してさしあげます」

(どんなヒロインだ、天野よ・・・)

そう心でツッコミながらも6本に増えた親指の指圧が祐一の眠気を再び誘っていた。

「ねぇ、ゆうちゃん、気持ちいい?」

「祐一の(肩)堅いねー」

「相沢さん(の背中)、立派ですねー」

(な、なんか会話だけ聞いてるとスゴイ危ないんですけど・・・)

そう考えながらもうつろうつろとしてきた祐一。

(ああ、このまま寝ちまおうかな・・・)



こんどこそ意識が夢の中へ・・・。


「・・・3人ともなにやってるの?」


「「「え?」」」

と3人は声がしたほうを見ると。

「なにやってるのかなぁ?3人とも・・・?」

かなり恐ろしい声を出す名雪が。

「なにってマッサー・・・」

美汐が答えようとして止まった。

有希は肩を揉んでいて、

真琴は左の足をかかえ、

美汐は腰のところにまたがって指圧している。

名雪から見るとその様子はさながら祐一たちが情事しているとしか見えない情景だった。

美汐が必死に弁解を試みる。

「あ、あの・・・名雪先輩・・・これは・・・マッサージしてただけで・・・あの、名雪先輩?」

名雪はフルフル震えている。

「祐一の・・・」


「えっちぃぃぃぃぃぃ!!!!!」



(やっぱり俺に平穏の日々ってないみたいだ・・・)


その後、名雪の誤解を解くのに多くのお金と3日ほどかかった。



〜あとがき〜
遅くなってごめんねぇ。
新年になってらぶかぷの更新頻度は多少上がるかと思います。
つーかいまが遅すぎなだけなんですが。
らぶかぷは毎週1〜2話更新に、短編は不定期更新にします。
まあ、こちらとしてもいろいろとありますので。
ただ、メールだけは毎日チェックしてますのでよろしく。


                              ゆうちゃん、戻るよおーっ