俺は北川を連れて(ひきずって)陸上部へ。

「さて・・・名雪はどこかな、と」

そこに。

「あれ?相沢先輩?」

「お、恵ちゃん」

「おい・・・あれ?」

俺に引きずられていたはずの北川がいつのまにかいない。

「どうしたんですか?相沢先輩」

「いや、なんでもないよ・・・そうだ、名雪は?」

「名雪先輩ですか?」

そういうと恵ちゃんはトラックを指差す。

トラックを見ると疲れた顔で走る名雪がいた。

「なにしてんだ?あいつ」

「サボりまくっていたので罰としてトラック50周です」

「・・・大丈夫なのか?」

「私たちはこれでも陸上部ですよ?当たり前じゃないですか!!」

たしかこの学校のトラックって普通より広くて400メートルあったような・・・。

・・・ま、いっか。









ダラダラスペクタクル長編SS



                             Love Capriccio

                       -What do you want to do? Mr.Kitagawa.-  〜第9話〜


                                                                written by woody
                                                             last updated 2004/05/02








名雪ってあとどれくらいで終わるかな?

「今名雪何周走ったの?」

「えーと・・・10周ぐらいですかね」

けっこうなペースなんだけどな、あいつ。

なんか待つのめんどくさいな。

「じゃあいいや」

「あ、そうですか」

あれ?

そういえば、と思い恵ちゃんを見る。

「なんですか?」

そういえば俺が聞きにきたのは恵ちゃんのことじゃないか。

そして目の前にはその本人。

「こうなりゃ一気に」

「え?」

「恵ちゃん、いくつか質問していい?」

「え?」

ガサガサッ!!

突然揺れる大きな木。

よく見るとそこから俺たちの様子を見ている北川の姿が。


(何してるんだ!!早く降りて来い!!)

(恥ずかしいだろうが!!頼む!お前が聞いてくれ!)

(なんでだよ!!アタックしないと進展ないぞ!!)

(俺はスロースターターなんだよ)

(ワケわからん・・・)


以上、アイコンタクト。

「なにしてるんですか?相沢先輩」

「い、いや・・・なんでもない」

「?」

恵ちゃんは首をかしげたまま。

「じゃあ質問ターイム」

「ど、どうぞ」

「恵ちゃん、好きな人は?」

ガサガサガサガサ!!!

木がうるさいぐらいに騒いでいる。

俺は再び北川のほうを向く。


(なんだ!!うるさい!!)

(いきなりすぎないか!?)

(うるせぃ!!恋は唐突なんだよ!!)

(そ・・・そうなのか?)

(ああ、だまって聞いてろ)


「っと、ああごめんね恵ちゃん」

しかし恵ちゃんは下を向いたままだった。

「恵ちゃん?」

「・・・ます」

「え?」

「好きな人・・・います」

「おお!誰なの?」

「そ、それは言えません」

「まぁ、そうだよね・・・それって俺が知ってる人?」

「は、はい。すごく仲がいいと思います」

「ほえー、誰だろ」

ま、まさかなゆ・・・。

「いっときますけど私はノーマルです」

「だ、だよね」

ほっとした・・・。

じゃあ誰だろ。

「はい・・・私はその人を一目見たときから・・・ずっと忘れられなくて・・・」

おお。それはすごい。

「うーん・・・誰だろ」

「こんど相談したときは私にいろいろ情報教えてくださいね、先輩」

「おー、わかった」

「あ、私もそろそろ練習に戻らなきゃ」

「あ、ごめんね呼び止めちゃって」

「あ、いえ」

そして恵ちゃんが立ち去る際に、

「先輩」

「ん?」

「今度先輩にその人のこと相談したときは応援してくれませんか?」

「うん、いいよ」

「ありがとうございます!」

恵ちゃんは笑顔で答えた。




「北川、もういいぞ」

「お、そうか」

北川は木から器用に降りてきた。

「・・・で、どうだった?」

「うむ」

しばらく俺は時間を置いた後、

「あきらめれ」

がっ!!

「おい!第一声がそれか!?」

「ま、待て!胸倉を掴むな!説明するから!!」

「・・・よし」

すっ、と北川が手を離す。

「どうやら恵ちゃんには好きな人がいるらしいんだ」

「そ・・・そうか」

北川はうつむいて何かを考えだした。

もっと落ち込むかと思ったのに。

「・・・でもまだ可能性はゼロじゃないんだろ?」

「ん?ま、まあな」

「だったら頑張るぜ、俺」

「え?」

「どうせフラれるんなら精一杯努力してフラれたいよ」

いままで見せた事ないような北川の表情。

それだけ北川が本気な証拠なのだ、と改めて知った。

「・・・そうか」

「ああ、これじゃ終われない」

「よし、俺も応援するよ、北川」

「ああ・・・さんきゅ」

「友達だからな」

そういって俺と北川は拳を作り、お互いの拳に軽く当てた。

一人の親友にエールを送る意味で。



「やるからにはがんばれよ、北川」

「ああ、やってやるぜ!」



家に帰ってからふと思った。

「あれ、そういえば・・・」

最後に恵ちゃんになにか言われたような・・・。



『今度先輩にその人のこと相談したときは応援してくれませんか?』



・・・。

どっちを応援すればいいんだ?


どちらにしろ北川の目指す道のりは遠く険しい。






〜あとがき〜
らぶかぷ番外編、北川の恋物語第2話。
全然有希がでてこないのはご愛嬌。
北川の運命やいかに?



                                 相沢っ、戻るぞ!