「お、おーい・・・」
ごそごそ。
「あんまり動かないでください、兄さま。耳が血まみれになってもいいのですか?」
「そ、それは困るかな・・・」
ごそごそ。
「へぅ」
「あは♪兄さまの声かわいいですっ」
「嬉しくないかも・・・」
ごそごそ。
「兄さま、石鹸のいいにおいですね」
「まあ、風呂上がりだしね」
「でも兄さまのにおいはいつも好きですけどねっ!」
「あ、あはは・・・そりゃどーも」
ごそごそ。
「ふわぁ」
「兄さま、気持ちいいですか?」
「うん・・・」
「あは!兄さまこんな大きな耳かすが取れましたよ!」
「み、見せなくていいっての」
なちゅ2は初SS
the solid dream -前編-
-please don't break my ear!-
written by woody
last updated 2004/10/17
と、いうわけで突然ですが只今耳かかれ中。
いつものように夕飯も食べ終わった後。
風呂から出てテレビを見ていたところ、次に風呂に入っていた千紗都が
「兄さまー!耳かきしてあげますです!」
「・・・なぜ?」
「洗面台を開けたら綿棒が出てきたからです」
「・・・それで?」
「突然兄さまに耳かきしてあげたくなったからです」
「・・・なんで俺なの?」
「ちょっとした兄妹のスキンシップです♪」
「あ、そうなの」
そう言われてしまっては反論もない。(←ないのか?)
「んー、でもなぁ・・・まだ汚くないと思うんだけどなぁ・・・」
「毎日するものなのですっ!」
「・・・そなの?」
「たぶん」
「でもなぁ・・・」
「ぶー、千紗都に耳かきされるのイヤなのですか・・・?」
うるっ、と千紗都が目を潤ませる。
「いやっ!そんなことないよ!」
ただ、その笑顔がコワイのよ・・・。
「大丈夫・・・?」
「なーにをそんな心配してるんですか?大丈夫ですよ!」
いつもの展開だとあまり安心できないのですけど・・・。
「や、やっぱり自分でする・・・」
「兄さま、早くここにきてくださいな♪」
「おおっ!?」
そういって千紗都は女の子座りになって自分のももをぽん、と叩く。
長く綺麗な洗い髪。風呂上がりで少し赤くなった顔。
なんつーか、その仕草ひとつだけなのにかわいかった。
いつもの展開では入院。
だが目の前にはかわいいお誘い。
さあ、どっちだ。
ここは、とりあえず。
「いらっしゃい、兄さま♪」
やってもらお。
そして、今。
「はい、右耳終わりました。逆向いてください」
「あいよ」
顔を千紗都のお腹方面に向ける。
「おぉ」
「?どうしたのですか兄さま?」
「い、いやなんでもないよ」
いいにおい。
ふと考える。
・・・そうだよな。
いつもいつもはちゃめちゃな展開があるわけないよな。
ああ、このまま眠ってしまいたい・・・。
「ああー!!!」
突然の誰かの叫び。
びくぅっ!!!
「ひゃあ!に、兄さま動かないでください」
「兄貴なにやってるんだよう!」
千紗都のお腹から顔を起こし後ろを見ると。
「空か・・・」
「ボクに内緒でなにイチャついてるんだよ!」
「いや、イチャついてるんでなくて・・・」
「ボクもやるんだよ!」
「いや、もういいよ・・・」
「ひどいよ!ボクにはやらせてくれないの・・・」
「一日に二回も耳かきしないだろ普通!?」
「だったら明日!明日だよ!?」
「明日も!?」
「じゃあ千紗都はその次の日ですー」
「その次!?」
「じ、じゃあボクはその次だもん!」
「ローテーション!?」
「むー、くーちゃん意地っ張りですー」
「ちーちゃんに言われたくないね」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「あ、あはは・・・お先にもう寝まーす」
ただならぬ雰囲気覚めやらぬうちにリビングを去ることにした。
とりあえず今日はいつもみたいな展開は辛うじてなかった。
明日の朝には二人が忘れていますように・・・。
切実よ。
***次の日***
夜。
「ふはー、いい湯だったー」
「ね、兄貴」
「あん?」
空はにっこりと俺に笑顔を向けた。
「昨日のこと、覚えてるよね?」
この瞬間、顔から血の気が失せる感覚がした。
このときばかりはドタバタが避けられないような気がしてならなかった。
〜あとがき〜
昔から作りたかったなちゅ2のSSです。
徐々に時間もなくなってきた中、なちゅ2SSを強行製作。
前編後編に別れています。
すぐに作って行きますよー。、
(追記:10/25 ホームページビルダーどころかパソコン自体動かなかったので
後編も完成。同時公開しますた。)
兄さまー、戻るのですー。