『今日は肉じゃがを作りたいと思います。・・・』

小鳥もさえずり飽きる朝の10時。

「ふああ」

日曜日なので、学校はない。

ふとスイッチをつけたまま垂れ流しっぱのテレビではありがちな料理教室をやっている。

『ですが、今日のだしはしょう油ベースではなく、コーラをベースにしたいと思います!』

失礼、ありがちではなかった。

ふむぅ、この舞人様のクラプトン電球のように煌々と輝くハートを射止めるとはなかなかやるな。

どれ、見てやろう。

『なぜコーラなのかって?色が似てるからで・・・』

ぷちっ。

電源を切る。

そのまんますぎる展開が審査員舞人の機嫌を損ねた原因だ。

ふっ、マス=コミュニケーションもすっかり堕落したものだ。

ちなみに「コミュニケーション」を「コミニュケーション」と言ってしまってはいけない。

2000年の伝統を誇る日本語を守る為にも正しい言葉を使うべきだ。

・・・というより「コミニュケーション」って日本語じゃねーな。






芹沢かぐら誕生日記念にして初それ散るSS



                         ふぇぶらりーぱにっく!

                          〜Phrase one of Kagura's birthday.〜


                                                                written by woody
                                                             last updated 2004/02/15





さて、朝飯どうしよう。

いろいろやってるうちに11時か。

ここまでくると昼飯兼用だな。

食費の節約に勤しむエコノミック・アニマル舞人くん。

よし、21世紀も生きて行けるな。

・・・やべぇ、腹へった。

そうしていると。

コンコン。

「・・・ん?」

誰かがドアをノックしている。

ふん、どーせ雪んこであろう。

生憎だが、クリーニング屋にかまっているほど暇ではないのだよ。

「そこで扉を破壊活動中の雪村よ、テロ活動防止法で俺様に訴えられる前にその手を抑えなさい」

「・・・お兄ちゃん?」

「え?」

ゆっくりとした口調で雪村が反応してくれた。

・・・お兄ちゃん、だと?

俺をそう呼ぶ人物というと・・・。

「・・・青葉ちゃん?」

「うん、おはようお兄ちゃん」

急いで扉を開け、街に出ようものなら逆ナンパはまぬがれられないほどの笑顔で、

「おはよう、青葉ちゃん」

しかし、なんの反応もなく、

「うん、ごめんね」

「え、ごめんねってなにが?」

「お姉ちゃんじゃなくて」

「バ、バカ言ってるんじゃありません」

くそ、なかなかやりやがる。

俺は笑顔を作り直す。

「それよりどうしたの?」

「うん、お兄ちゃん朝食べてないんじゃないかなー、と思って」

「エスパーッ!?」

「ち、違うよぉ」

「そ、それで?」

期待に胸を膨らませ次の言葉を待つ。

「うん、一緒に食べない?」

来ましたーっ!!

地域交流バンザーイ!!

「えー、でも俺もいろいろ忙しいからなー・・・」

ちょっと強がりを言ってみる。

「そ、そうだよね、私となんてイヤだよね・・・」

ちょっと青葉ちゃんが涙ぐむ。

「ち、違うって・・・ほんの桜坂ingジョークだから!!喜んで誘われちゃうから、ね?」

「もー、お兄ちゃんたら・・・」

青葉ちゃんに笑顔が戻った。

ふぃー、あぶねぇ・・・。

「よかったよ、お兄ちゃんに嫌われてるんじゃないかと思ったよー」

「そんなわけないって」

「うん、ありがと」

「じゃあついてきて」

「あいよ」


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「あー、うまいねぇ」

「あはは、そう言ってもらえると嬉しいなー」

青葉ちゃんの手料理に舌鼓を打つ。

「このニンニクもおいしいねぇ」

「朝ニンニク食べると一日ずっと元気でいられるよ」

「知ってるかい?ニンニクに入ってるスコルジニンという成分って精力増強作用があるんだよ」

さあ森青葉よ、えっちに乱れたまへ!!

「せいりょくぞーきょー?」

「・・・いや、なんでもないです」

・・・どうやら青葉嬢にはレベルが高すぎたか。

しばらくして、最後のみそ汁をすすっていると、

「あ、そうだ」

「どうしたの青葉ちゃん?」

「今日ね、かぐらちゃんの誕生日なの」

「ほー、ガリレオと同じ誕生日とは・・・将来が楽しみだな」

「それでねー、うちで誕生パーティーやるんだけど」

マメ知識は無視かよ。

「お兄ちゃんも一緒に来ない?」

「え?俺?」

「うん、かぐらちゃんきっと喜ぶと思うよ」

「そ、そうかな」

歓迎される、と聞いて悪い気がするわけがない。

「じゃあ今夜はこのぱーてぃ会場に舞人旋風を巻き起こしちゃおうかなっ」

「うん!」

冷静になって考える。

「あ、でもプレゼントどうしようかな・・・?」

「じゃあ後で一緒に買いにいこうよ」

「青葉ちゃんも買ってないんだ?」

「うん、どれにしようかいろいろ悩んじゃって・・・」

「そういうのってあるよね」

「お兄ちゃんがいれば決まるかなーって」

「はっはっは、そうかそうか!!よし、ハンニバルも真っ青の決断力を持つ舞人あにぃに任せなさい!!」

「そ、そうだね・・・」

青葉ちゃんはちょっと吃る。

「ところで、お兄ちゃん」

「ん?」

「『あにぃ』って、なに?」

「・・・そういうところは聞かないように」




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「えーと・・・」

森宅で団欒を済ませ、桜坂で最大のデパートに来ている。

「んで、青葉ちゃんは何にするの?」

「うーんと、ね・・・って、あれ?」

青葉ちゃんがずっとある方向を見ている。

俺もそっちを向いてみる、と。

「えーっと・・・」

「かぐらちゃんだ」

「うん・・・」

ぬいぐるみ売り場でウロウロしているかぐらちゃんをマイトスコープで確認。

「何やってるんだろう??」

「いや、俺に聞かれても・・・」

「だね」

じゃあ聞かないでほしい・・・。

「とりあえず呼んでみようか」

「だな」

「おーい、かぐらちゃーん」

青葉ちゃんが大声を出す。

つーかこっから呼ぶのかよ。

ここデパートの中なんですが、青葉サン。

「あ、青葉ちゃん」

かぐらちゃんがこっちに来る。

「青葉ちゃんどうし・・・」

かぐらちゃんがこっちに気づいたので挨拶をする。

「こんにちは、かぐらちゃん」

「むぁいとさん!?」

いや、むぁいとって・・・。

そんな悟空のおじいちゃんじゃあるまいし。

まぁ、いいけど。

「ほ、本日は、非常にお日柄も良く・・・デパートの雰囲気もよくてなによりです・・・」

「そ、そうだね」

「はいっ!」

「それより、かぐらちゃんは何を見てたの?」

青葉ちゃんが聞く。

「えっ、あっ、なんでもないです・・・」

とかなんとかいいつつしっかり売り物のぬいぐるみを抱きしめている。

「それがほしいの?」

「えっ!?そ、そんなことないですよ?」

抱きしめる力が強まる。

ちょっぴりぬいぐるみがうらやまし・・・もとい。

「かぐらちゃん、買ってあげようか?」

「ええっっっ!?」

「だ、だって今日誕生日なんでしょ?」

「そ、そうなんですけど・・・」

「ちょうどよかったよ、今日はかぐらちゃんの誕生日プレゼントを買いに来たし」

「えええっっ!!?そうなんですか!?」

「そうなの」

青葉ちゃんも同調。

「じ、じゃあ・・・」

かぐらちゃんがこっちを覗くように見ている。

何かを期待しているように。

「今日の誕生パーティーin森家に参加させてもらってもいいかな?」

「も、モチでロンですー!!」

「そ、そう?」

「はい!!舞人さんに祝っていただけるなんてサラダ記念日よりもきっと嬉しいに違いありません!!」

「か、かぐらちゃん・・・」

青葉ちゃんが不安そうに声を上げる。

「じゃあそれは俺が買ってあげるよ」

「ありがとうございます!!舞人さんのプレゼントなので耐火金庫にでも入れておきたいぐらい大事にします!!」

「そう、じゃ買ってくるよ」

「はい!お待ちしてます!」

そういってかぐらちゃんが抱いていたぬいぐるみをカウンターに持っていく。

しかし・・・。

ボウシテナガザルのぬいぐるみとは・・・。

芹沢かぐら、存外やるな。

・・・ひょっとして希少動物マニア?




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会計を済ませた後、かぐらちゃんに「おめでとう」といって渡したらかぐらちゃんは思ったより喜んでくれた。

その後もジュースなどいろいろとかぐらちゃんを接待しまくった。

そしてパーティーの材料などを買って帰る途中。

「私、今日はすごく幸せな一日になりました」

かぐらちゃんが青葉ちゃんの家に向かうときにつぶやく。

「え?」

「青葉ちゃんがいて、舞人さんがいて・・・」

「私の誕生日を一緒に祝ってくれて・・・」

「私はきっと今日の日を忘れません♪」

「・・・」

なかなか照れることをいう。

「か、かぐらちゃんたら・・・」

青葉ちゃんも少し顔が赤い。

「今日からはボウシテナガザルのシュナイダーちゃんもいるのでぐっすり眠れそうです」

「シュナイダー!?」

「いい名前だね、かぐらちゃん」

青葉ちゃん・・・。

「夜のパーティーが楽しみです♪」

そうだな。

「よーし!!舞人にぃやは気分がいい!!今日は飲みまくるぞー!!」

「おー!!」

かぐらちゃんはノリノリ。

「それ・・・お酒?」

青葉ちゃんは辟易。

「酒なくしてぱーちぃなど存在しないぞ!!よーし、青葉ちゃんにはラッパ飲みの極意を伝授しよう!!」

「もう・・・今日だけだよ?」



「ところでお兄ちゃん、『にぃや』ってなーに?」

「・・・そういうところは聞いてなくていい」

「萌えちゃいます〜」





その夜、森家でパーティーが始まったがその30分後にはすでに宴会に変わっていた。

その様子は「阿鼻叫喚」の四文字がふさわしい。

俺もそうとう飲んだらしく、あまりそのときの事は覚えていない。




そして次の日。

「いてて・・・」

頭がイタイ。

でも学校に行かなきゃな・・・。

こんこん。

「せんぱーい?朝ですよー」

・・・雪村か。

「今日はこの雪村が先輩を自らお迎えにあがりました!!さあ、このまま誰も手の届かない二人だけのサンクチュアリへ!!」

・・・ウルサイ。頭に響く。

「先輩?早く行かないと遅刻しちゃいますよ?はっ!!このまま二人で遅刻して勘違いされたりして・・・」

雪村の扉越しの言葉を無視して、ゆっくりと制服に着替える。

「『どうして二人して遅刻したんだ!?』『先輩が寝かせてくれなくてぇ・・・』きゃーっ!!今日はうれしはずかしですね!!」

「あ゛ーっ!!うるさい!!用意できたから大声出すな!!」

学校の用意が出来たのでドアを開けて叫ぶ。

「あ、先輩おはようございます。早速ですが走らないと先ほどのシチュエーションになりかねませんので」

「そうか、なら先に行け」

「そうはいきません!!旦那様をおいていくなんて幼馴染として致命的ですよ!!」

「なんか・・・もういいや」

「あれ・・・テンション低いですね」

「ちょっと、な」

「あーっ!!気になるじゃないですか!!教えてくださいよー!!」

そのとき。

「舞人さん!」

「おう、かぐらちゃん」

「はい、おはようございます!」

「むぅー・・・」

雪村はむくれっつら。

「あの・・・舞人さん・・・」

「ん?」

「昨日は・・・本当にありがとうございました・・・」

なぜか顔を赤らめていう。

「!」

雪村が固まる。

「あんなにいい気分になったのは初めてです・・・」

「いい気分・・・」

雪村がブツブツいっている。

「し、しかし昨日あれだけ飲んで元気だね」

「はい」

「舞人さんのおかげで・・・昨日はよく眠れましたから・・・」

「おかげ・・・?」

「あ、もう行かなきゃ!じ、じゃあ舞人さんアデューです!!」

それはキャラが違うぞ・・・。

「せ〜ん〜ぱ〜い?」

「あん?」

ゴゴゴゴゴゴ。

「ゆ、雪村・・・?」

「昨日の事、す・べ・て話してもらいますからね!!」

「ど、どうしたんだ雪村・・・?」

「さっさと言わないと先輩の家の調味料全てにトウガラシ混ぜますからねー!!!」

「だからなんでお前が怒ってるんだよー!!」






桜井舞人、今日も生きてます。






〜あとがき〜
・・・ホントにかぐらSS?
青葉ちゃん色強いっすね。
つーか全然「それ散る」じゃないっすね、コレ。
後半もそれ散るじゃないみたいだし。
ギャグになりきれず、やっぱりほのぼのがついてきてしまうのはうっでぃの悪い癖。
善処します。


                         「青葉ちゃんっ、せめて『にぃに』と呼んでくれっ!!」