いつもの帰り道。
「なあ、みなも」
「なに?」
突然まこちゃんが提案したこと。
これが私の幸せな時間の始まりだった。
「お前このあいだ誕生日だったよな」
「あ、うん。ネックレスくれてありがとね」
「ああ、うん。いや、そういうことを言いたいんじゃなくて」
「え?」
「どうせだからどっか遊びに行くか」
突然まこちゃんが止まってこんな事を言い出した。
「え?」
「どうせなら王道に遊園地とか行ってみるか」
「ね、ねえ・・・まこちゃん」
「ん?」
「それって・・・デート、なのかな?」
「え?」
「あ、あの、私の思い込みならいいよ、まこちゃんと出かけられるだけで嬉しいから・・・」
「バカ」
「いたっ」
まこちゃんが私の額をつつく。
私がうー、とおでこを抑えていると、
「デートに決まってる、だろ」
ウインクをしてまこちゃんは私に頬笑んでくれた。
あなたが選ぶゲーム投票8月度SS
あなたと握手
-This story is not
immitation of D.C.!(爆)-
written
by woody
last
updated 2004/08/01
「まこちゃーん!早くー!」
「はいはい」
そして約束の日。
この日が来るのを楽しみにしていた。
あまりに待ち遠しくて昨夜は寝られなかったのはまこちゃんには内緒。
目にクマができていないかちょっと心配。
でも、そんな心配もまこちゃんに会ったらすぐ吹き飛んだ。
「ねえ、コーヒーカップ乗ろうよ!」
「ま、マジか!?恥ずかしいぞ・・・」
「えー、乗ろうよー」
「イヤ」
「じゃあメリーゴーラウンド」
「は!?」
「もちろん相乗りで。ツーリング気分だね♪」
「そ、それだけはカンベンしてくれって!」
「えー、じゃあメリーゴーラウンドとコーヒーカップどっちがいいの?」
「まだコーヒーカップの方が・・・」
「やったー、まこちゃんとコーヒーカップだー」
「・・・あれ?」
「オナカすいたなー」
「まこちゃん、なに食べる?」
「みなも、今日はおごってやるよ」
「ホントにいいの?」
「ああ、もちろん」
「・・・ふふ、ありがと」
「さてどうすっかなー、塩バターコーンラーメンとかいいな・・・暑いけど」
「ねえ、まこちゃん」
「ん?」
「たこやき、頼んでいい?」
「おお、いいぞ」
「すみませーん、たこやき6パックくださーい」
「・・・なぬ?」
「まこちゃんも食べるでしょ?」
「あ、ああ。もちろん。
ああ、そうだよな・・・俺の分も入ってるんだよな」
「すみませーん。たこやき2パック追加でー」
「俺の分は別かよ!?」
「あ、ジェットコースター乗ろうよ」
「お、いいな」
「まこちゃん悲鳴あげたらダメだよ」
「それは俺のセリフだ」
安全ベルトが降りる。
「ワクワクするね」
「だな」
上がるときのベルトコンベアーがはずれ一気にスピードが上がる。
「おー、けっこうスピード出るな」
「まこちゃん悲鳴あげたいんじゃないのぉ?」
「バカ言うな。お、そろそろ洞窟に入るぞ」
ぽたっ
「いやー!!なんなの今のー!?水が滴れてきたー!」
「お前が叫ぶのかよ!?」
たのしいことはすぐに過ぎていって。
空の色が赤く変わり始めたころ。
私は思い切って言ってみた。
「ねえ、まこちゃん」
「ん?」
「あれ、乗らない?」
私はゆっくり天にそびえ立つアトラクションを指差す。
「観覧車か・・・そうだな、乗るか」
「うん!」
夏休みのわりには人があんまり並んでなくてすんなり乗ることができた。
「おー、上がる上がる」
「・・・うん」
だんだんと観覧車が上がっていく。
空の向こうで陽が地平線の向こうに沈んでいく。
そして、私たちののゴンドラがてっぺんに近づいていった。
「おー、いい景色だなー」
「うん・・・」
「ここに来れてよかったな」
「・・・え?」
「こうして一緒に見れて、さ」
「・・・うんっ」
まこちゃんがこう言ってくれたから。
なんか勇気がわいた気がする。
今まで、言ってたようで言ってなかった言葉。
「ねえ、まこちゃん」
「ん?」
「今日はありがとう」
「ん?ああ、たまにはな」
「誘ってくれたときすごく嬉しかったよ」
「ん、そ、そっか」
まこちゃんはなんだか照れくさそうに頬をかいている。
「まこちゃん・・・好きだよ」
「みなも・・・」
まこちゃんの顔が赤いのは落陽のせいなのか、それとも照れてるのか。
それは私にはわからない。
だけどまこちゃんが今、私だけをまっすぐ見つめてくれている。
そしてゆっくりと私たちの顔が近づき------------
ガタン
と、大きな音とともに弱まった日の光が木に隠れる。
それはもうすぐゴンドラが終わりを告げるしるし。
扉を開けようとする従業員の姿が見えたとき、私たちは顔を見合わせて笑った。
結局キスはおあずけ。
だけど、言いたいことが言えたからいいか、と誰に言い訳するわけでもなく苦笑い。
「そろそろ暗くなってきたな。帰るか」
「うん・・・」
観覧車を降りてからまこちゃんは顔を合わせてくれない。
しきりに頬をかくまこちゃんを見ておもわず笑ってしまう。
そんな優しくて照れ屋なまこちゃんにちょっといじわるをすることにした。
「手、繋いでもいい?」
「は?」
「腕、組んでもいい?」
「って、どっちだよ」
「両方」
「わがままだな」
「だってどっちもしたいんだもん」
「・・・子供か?お前は」
「私はいいよ、それでも」
「えっ?」
「子供って思われてもいいよ。まこちゃんの隣にいられるなら」
「・・・」
「あはは。なんか私ちょっと変だね。ごめんね、変なこと言って」
ちょっと寂しいけどムリにでも笑いかける。
すると。
まこちゃんは私のほうを向かないまま、
「あっ・・・」
手を取ってくれた。
「ほら、行くぞ」
「えっ・・・でも」
「俺たちは恋人、なんだろ?」
「・・・うん」
今日は「好き」って言えた。
だから次はキスができるようになりたいな。
今日は手を繋げた。
だから次は腕を組めるようになりたいな。
そうして一歩ずつ。
ゆっくりでいいから、まこちゃんと前に進んでいきたい。
私たちにはまだこれからたくさんの時間が待っているんだから。
〜あとがき〜
さて、第2回。
今回は「wind -the breath of heart-」から、鳴風みなもSSです。
今回みなものキャラが保てていません。
ゴメンナサイ。
もっとみなもはおしとやかだっつの。
個人的に昔から好きでSS作ってみたいな、と思ってたんですけど。
今回、急遽windにした理由。
それは投票のあるひとつのコメントでした。
「D.C.のパクリなんて言わせないよ!!!」
ごもっとも。
でも結局ありがちなネタになってしまった罠。
想いは遠く離れてても届くんだよ、そしてそれを無くさない限りまた会えるの。