ちゅんちゅん。

現在午前5時。

伊藤正樹の朝は遅い。

もちろんこんな時間に彼が起きるわけもなく無防備に寝顔をさらしている。

そしてそれを狙う人物が一人。

「お兄ちゃん・・・」





どうかうっでぃも狙ってくださいSS


                     乃絵美、史上最大の作戦


                                                                 written by woody






ひたひた。

こんな朝っぱらから廊下を歩く音がする。

しかし、どろぼーといった類の者ではない。

人気妹ランキングチャンプ(某サイト調べ)、伊藤乃絵美である。

アンダーグラウンド(爆)で絶大な人気を誇る彼女にも想い人がいる。

それが彼女の兄、伊藤正樹である。

「お兄ちゃんの寝顔、可愛いんだろうなぁ♪」

彼女は今正樹の部屋へ向かっている。

奥手な彼女にとってはむしろめずらしい行動といえた。

というのも昨日、ある人物の助言により乃絵美が行動を起こすに至ったのだ---------。




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「あらぁ、乃絵美ちゃんじゃーん」

「あ、ミャーコちゃん」

新聞部きっての諜報能力を誇る信楽美亜子の見参である。

「で、どーなのよー、最近」

「ええ、最近体の調子もいいし『ばっちぐー!!』ですよ」

「そーじゃないわよ」

「え?」

「お兄ちゃんと、進展あった?」

「・・・」

「ええええええええええええええええっっっっっっっ!!!!!!!」

「なーに驚いてんのよ。あたしにはちゃあんとわかってるんだから♪」

「はぅぅぅ・・・」

「で、どーなの?乃・絵・美・ちゃん?」

「・・・」

「・・・ふう」

「え?」

「やっぱり進展なし、か」

「ど、どうしてわかるんですかぁ!?」

「わからいでか。その様子じゃいつか真奈美ちゃんや菜織にとられちゃうわよ?」

「あぅぅぅ・・・」

「よし!!ここはオトナのミャーコ様がひとつとっておきの秘技を教えてあげようっ!!」

「みゃ、美亜子せんせーっ」





・・・・・・。

「えええっ、そんなことするんですかーっ!?」

「当たり前じゃない、お兄ちゃん取られちゃうわよ?」

「うぅぅ・・・」

「それにぃ、お兄ちゃんの寝顔♪見たくなーい?」

「・・・お兄ちゃんの寝顔・・・」

「どーよ!?」

「えへへへへ・・・」

結局『愛する人の寝顔』という誘惑には勝てなかった乃絵美であった。



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こうして1時間半にも及ぶレクチャーにより乃絵美は決心をつけ、今に至る。

「部屋でリハーサルもしたし・・・」

どんなリハーサルだったんだろうか。

「ドキドキするなぁ・・・」


そしてついに正樹の部屋のドアの前に立つ。

「よ、よし」

がちゃっ。

腹をくくり中へ。

正樹の部屋はカーテンの隙間からうっすらと外の蒼い光がもれていた。

「お、お兄ちゃんだ・・・」

当然だ。

乃絵美はゆっくりゆっくり正樹のベッドへ近づく。

そしてついに第一段階である正樹の顔を観察開始。

「か、可愛いよ・・・」

普通の人がみるとそうでもない、と思うが乃絵美にとっては天使の寝顔、とでもいったところだろう。

「ぽー・・・はっ」

どうやら軽くどこかへ飛んでいたようだ。

「じ、じゃあいよいよ作戦第二段階っ」

そういって正樹のかぶっている布団をめくり・・・。

「お、おじゃましまーす・・・」

ぱふっ。

正樹の隣にもぐりこむ。

「や、やったよミャーコちゃん!!!」

感無量、といった感じだ。

「あ、あったかいよ・・・お兄ちゃん」

そりゃ布団をかぶっているのに冷えていたらコワイ。

「ふにゃ〜、きもちいいよぉ・・・」

昇天も近いか。

「お兄ちゃんのにおいがするぅ・・・」

頭はクラクラなようだ。

「なんか気持ちよすぎて眠く・・・なってき・・・ちゃ・・・った・・・」

すーすー。

2秒で就寝。






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そして時間が経ち午前7時。

「正樹ー、もう起きなさーい」

とんとん。

幼馴染である菜織が階段を上ってきた。

「まったく・・・今日はめずらしく乃絵美も見当たらないし・・・どしたのかしら」

そして正樹の部屋の前へ。

どんどん。

「正樹ー、早く起きなさいよー」

とんとん。

「正樹君起きたー?」

真奈美も階段を上がってきた。

「もー、いいかげん起きなさいよ!!」

がちゃっ。

部屋の扉を開けると。

菜織と真奈美は驚愕した。

「くー、くー」

「すー、すー」

「な、なんで乃絵美ちゃんがここで・・・」

真奈美は混乱している。

「・・・・・・(怒)」










「正樹ー!!!!!!!!!!!!!!」

伊藤家に怒号が響く。

「・・・んだよ、朝っぱらからうっせーな・・・」

「あんたって人は・・・」

「? なに怒ってんだ?」

「正樹君・・・不潔だよ・・・」

「なんのことだ・・・?」

そのとき。

「ふあぁぁ」

「・・・え?」

正樹の中の時間が止まる。

「あ、お兄ちゃんおはよ♪」

「・・・なんで乃絵美がここにいるんだ?」

「えへっ♪」

「いや、えへっじゃなくてさ・・・はぁっ!!」

正樹は殺気を感じた。

「まーさーきー・・・!!(怒)」

「正樹君・・・」

「ち、ちょっと待てって・・・俺にもさっぱり・・・」

まずい。

正樹は訳もわからず逃げた。

「待ちなさーい!!」

ドタドタ!!

そして、一人残された乃絵美。

「えへっ、作戦かんりょおっ♪」






まだまだ正樹の苦悩は終わらない。





  〜続きません〜



〜あとがき〜

2日目、「with you 〜みつめていたい」より乃絵美SSです。
前半が「LOVER SOUL」に似ちゃいました(手屁っ♪)。
さて、明日は「恋愛chu!!」ですね。
明日がある意味一番のヤマ場です。
がんばります。


                              戻るよっ、お兄ちゃん