冬の日曜日。

身の切れるような冷たい風が吹きつける。

一海はコートにマフラーと完全防備をしていながらこの有様だ。

それほどこの街の冬は寒いらしい。

しかし一海は夕飯の買い物をしなければならない。

「くっ、なぜこんな寒い中一人で街中歩かなきゃならんのだ・・・」

ちなみに妹である未依はまつりさんのところに朝から遊びに行っている。

未依が遊びに行くといったとき一海はまさか材料がなくなるとは思ってもみなかった為、あっさり承諾した。

「このやろっ、バツとして未依はおかず2品抜きだ・・・」

そう愚痴りながらもゆっくり一歩ずつスーパーへ向かう。

しかし。

「あ゛ーっ!!寒すぎる!」

ブチ切れるのももはや限界----------。



そのとき。

そこに現れたる一軒の喫茶店。

その名も喫茶Oasis。

一海がいつも行く喫茶店だ。

「おお!ここの存在を忘れていた!!」

一海にとってはまさにオアシス。

しかし、そのまま寒さに負けて入るのも癪なので。

「・・・知絵の足が気掛かりだな。仕方ないから入っていくか」

いったい誰に対しての強がりか。

そのわりにダッシュでオアシスの扉を開けた一海であった。






最近忙しいのよSS


                             自転車に乗って、


                                                            written by woody






ちりんちりん。

「うー、さみぃ」

「いらっしゃいませー!・・・ってなーんだ、かずちゃんかぁ」

「なーんだ、とはなんだよ」

「かずちゃんならいらっしゃいませ、なんていう必要ないでしょ」

「まぁ、そりゃそーだが」

「言い損だったなー・・・」

「そりはひどくないかい、チミ」

「で、どうしたの?」

「ああ、買い物の途中で寒かったからここに逃げさせてもらった」

「そうなの。よかったらコーヒーでも出すわよ」

「そりゃありがたい」

「前の人の飲みかけでいい?」

「いいわけねーだろ!!」






ずずーっ。

「やだ、音立てて」

「ふぃーっ、あったまるーっ」

「オヤジくさー」

「う、うるせー」

「でもそんな寒いんだぁ、雪降るかな?」

「ああ、降るかもしれないな」

「そんときは雪かきよろしく♪」

「なんでよ」

一海がドーナツをほおばりながら返事をする。

「ねぇ〜、いいでしょかずちゃぁ〜ん」

「・・・」

「おねがーいっ、ねっ」

「・・・メシぐらい出るんだろうな」

「わっ、やってくれるの?ありがとー!」

「返事に答えんかい」

「だいじょうぶ。ちゃんとごはん作ってあげるから」

「約束だぞ」

「うす」

知絵は空手のようにガッツポーズをして答えた。




「ねぇ、かずちゃん」

「ん?」

「そういえば、さ」

「なんだ?」

「2人っきりって・・・ひさしぶりだね」

「あー・・・そうかもなー」

確かにいつも一海がOasisに来るときは未依も一緒だった。

「未依にはすっごく悪いんだけど・・・」

「?」

「今、この時がいつまでも続いて欲しいなぁ・・・って」

「・・・まぁな」

「そういえば、かずちゃん」

「なんだよ」

一海はせっかくのいい雰囲気がくずれ、ちょっと残念であったりする。

「買い物。どーなったの?」

「・・・」

「かずちゃん?」

「・・・行ってねぇ」

「・・・」

「だって家の門出たら極寒の世界だぜ?んでここに直接逃げてきたっつーわけ」

「じゃあ行ってないの?」

「おう」

「じゃあさ」

「?」

「今から一緒に行かない?」

「・・・今からか?」

「うんっ!」

「でさ、お願いがあるの」

「なに」

「自転車で行こうよ。店のがあるから」

「・・・なんで?」

「ちょっと荷物が多いのよねー。お米とか」

「・・・事前に買っとけよ」

「昨日未依ちゃんと里美先生がぜんぶたいらげちゃった」

「・・・じゃあしょうがないな」

一海、妙に納得。

里美先生と未依なら十分ありえるからだ。

・・・二人ともあんな細身なのに。

「じゃ、行こ♪」

「待てぇい!こんな寒いのにか!」

「うん」

即答。

「しかも自転車でか」

「うん」

「・・・帰る」

「ちょおっとまったああ!」

「後生だ!放してくれぇ!」

「帰っていいの?」

・・・うっ。

(確かにもう一度出るのはツライな・・・)

「ねえ〜、いこうよ〜」

(最近こんなんばっかりやな)

「・・・わかったよ」

「やったぁーっ!ちゃっちゃと行こっ♪」

「はぁ・・・」

(あれ。そういえば)

「なあ、知絵」

「なに?」

「お前乗れんのか?」

「なにいってんのよ、かずちゃん」

「?」

「かずちゃんの後ろに乗るに決まってるじゃない」

「・・・さいですか」

(・・・ちょっといいかも)

一海はなにげにそんなことを思ってたりする。

「よしっ、準備おっけー」

「・・・うし、行くか」

「うんっ!」





そして。

「・・・帰る」

「ダメっ!」

「寒すぎ」

「そだね」

「ほらほら、早く乗って」

「さっきより寒くなってるじゃないか・・・」

ブツブツ言いながらも一海はサドルにまたがる。

知絵も後ろの荷台に乗る。

すると。



-------ぎゅっ。

「お、おい」

知絵は一海の背中にしっかり抱きついた。

「これであったかいでしょ?」

「ま、まぁな」

「さあ、レッツゴー!」

「へいへい」





しばらく背中に温もりを感じつつペダルをこいでいると。

「ね、あっち行こうよ」

「なんでだよ?あっち行くと商店街から遠くなるぜ」

「わからないかなぁ?」

(・・・そういうことね)

知絵の思いを理解した一海は無言で商店街とは違う方向へハンドルを向けた。







「やっぱり寒いねー」

「そうだな。運転手としては手袋がほしいところだ」

「今度編んであげようか?」

「俺にか?」

「他に誰がいるのよ」

「そっか・・・頼むな」

「うんっ」







「かずちゃんの背中、あったかいね」

「そうか?」

「うん・・・」

「おまえもあったかいぞ」

「でしょー♪」

「おまえも成長したもんだ」

「・・・ってどこのこと言ってんのよ!えっち!」

「いてて、たたくなっつの!自転車が揺れるだろうが」

「むぅー!このぉっ!」

ぎゅっ。

知絵はさらに一海に抱きついた。

「って、おいコラ!ペダルがこぎにくいだろが!」

「くふふー、照れろ照れろー」

「ば、バカっ」

「きゃっ、ちょっとあぶないでしょ!ちゃんとこぎなさいよ!」

「誰のせいだ誰のっ!」







なんだかんだ言いながらスーパーにたどり着く。

自転車から知絵を降ろし、スーパーのフロアをめざし歩いていると知絵が話しかけてきた。

「かずちゃん何買うの?」

「ああ、晩飯の材料をな」

「なんだ、じゃあうちで食べればいいじゃない」

「へっ?」

「それならそうと早くいってくれればいいじゃない」

「じゃあどうすんだよ」

「帰るわよ」

「・・・っておい!おまえの買い物はどうした!」

「・・・あるわけないでしょ」

「って・・・え?」

「だって・・・あんたといっしょに出かけたかったんだもん」

「え?え?」

「あたし、自転車に乗ったことないから・・・」

「・・・」

「ああやってあなたの背中を感じながら乗ってみたかったの・・・」

「・・・」

すると、一海は突然Uターンして、すたすたと自転車のほうへ一直線に歩いていった。

「ね、ねえ、ちょっとかずちゃん?」

知絵が不安げに一海に呼びかけると。

一海は自転車にまたがりながら。

「帰るぞ」

「・・・え?」

「どうせだからたくさん遠回りして帰るか」

知絵は顔をみるみるほころばせ、

「・・・うんっ!」

大きく頷いた。







その後ぴったりと寄り添うようにくっつきながら自転車に乗る2人を見た里美先生は、


「うー!一海さんと知絵さんがらぶらぶぅー!うるるー」


「これは一大事ね!みんなに伝えなきゃ!」


しっかりとまつりや未依に電話で報告。


次の日。


「お兄ちゃん!どうゆうこと!」


「一海くーん、どうゆうことやのー?」


「一海さん!私のことはお遊びだったのですか!?」


「一海くん、キスした?キスした?」


「一海くん、未依のこともらってくれるんじゃなかったのぉ?」


みんなから責められまくった。


・・・一部、明らかに違う目的もあるが。





とりあえず一海はどうにも居心地が悪いので。


「逃げるぞっ!知絵っ!」


「うんっ!かずちゃんっ!」




わたし、どこまでもついて行くよ。


あなたとだったら、どこまでも--------。






〜あとがき〜
なんですかぁこれわぁ。
うっでぃの悪い癖であるエンディングが弱い、というのが如実に現れてますな。
まったく成長してないってことね。うるるー。

ちなみに題名はなんか家の戸棚にあったCDのタイトルをそのままとりました。



                      Oasisへようこそっ!さっそくですがお戻りください。