<前書き> 初めはギャグのつもりで書いてたんですけどなぜか脱線しました(苦笑) 栞のEDと雰囲気が似てるけど・・・気にしない(爆) これから成長します!←努力します ───神様はどんな事でも可能にする。 そんな事を思っていた時期が貴方にもありませんでしたか?「The mighty works of God〜神の偉大な業(きせき)〜」 部屋にかかっているコートを無造作に取る。 そのコートを着ながら階段を駆け下りる。 今日は栞と駅前のベンチで待ち合わせ。 待ち合わせ時間まではまだ余裕があるが、栞の事だから また待ち合わせより1時間も2時間も早く待っていそうだ。 『行ってきます』 リビングでテレビを見ていた名雪と秋子さんにそう告げると俺はまだ寒風が肌を刺す外へと飛び出した。 駅前のベンチでは案の定、待ち合わせ時間よりも早く栞が待っていた。 『やっぱりいたな・・・そんな早く来なくてもちゃんと来るのに』 『こんにちは。でも待つのは嫌いではないですから』 俺たちにとって幸せな時とはまさに今、この時なのだろう。 他愛もない会話に花を咲かせつつ俺たちは幸せな時を過ごした。 『そろそろ腹減ってきたな〜栞は何食いたい?』 ちょうど昼時らしく腹も減ってきたので俺は栞に聞いてみた。 『祐一さんにお任せします。』 半ば予想通りの答えだったのか俺は、商店街で一際目立っている黄色い建物を指差して 『・・・じゃああそこ。』 祐一が指差しているのは最近オープンしたカレー専門店だった。 『・・・・本気ですか?』 『いや、冗談だ』 前に栞が辛い食べ物が嫌いという話を聞いていたので思わずからかってみた。 『そんな事言う人嫌いです!』 ・・・怒った。 ───今、俺達は一つの大きな奇跡の中にいる。 栞は死ぬはずだった。自らの誕生日に。そして俺の前から消えて居なくなってしまうはずだった。 でも今、栞はいる。俺と同じ時間、俺と同じ世界に生きている。 それだけで俺は十分だった。また栞と一緒に居られるという現実だけで。 『ごめんごめん。』 『う〜罰としてお昼ご飯奢ってくださいね』 ───しまった。 そこまで考えていなかった! 結局、昼飯と食後のバニラアイス2個を奢らされは自分の財布の軽さを実感しながらも 栞の幸せそうにアイスを食べる仕草を見つめる俺。 そんな俺を不思議に思ったのか栞は俺に聞いてきた。 『?どうしたんですか?』 『いや、相変わらずアイスをよく食うものだな〜って。けどそんなに食ってるとプクプク丸くなるぞ』 『うぅ〜』 『ほら、丸くなった。』 嬉しそうに笑いながら祐一は言う。 『う〜・・・そんな事言う人嫌いです!』 『冗談だよ。ほら、お詫びに俺のアイスもやるから』 そう言うと祐一は自分の前にあったアイスを栞へと差し出す。 『いりません!どうせまたからかうんでしょ』 『冗談だって言ってるだろ〜それに栞は丸くても可愛いよ』 『なっ何言ってるんですか?もう祐一さん嫌いです!』 普段より大きめな声で栞が叫ぶ。 それでも栞はどこか嬉しそうだった。 『そんな事言う人嫌いです。・・・でも嬉しいです』 栞は恥ずかしそうに顔を赤らめながらアイスを頬張っている。 それにつられてか祐一も顔を赤らめている。 どうやら自分で言って照れている様だった。 ───こんな場面、知り合いにでも見られたらまずいな 祐一は心の中でそんな事を思いながらアイスを嬉しそうに食べている栞を見ていた。 とその瞬間に誰かに肩をポンっと叩かれた。 振り返ってみるとそこには名雪と香里がいた。 ───うがっ!マジですか・・・ 自分の考えてた事が現実になり祐一はかなり焦っていた。 『あついわね〜』 『うん、あついあつい』 名雪はともかく栞の姉である香里に言われるのは無性に恥ずかしい気がする。 祐一と栞はさっきより顔が赤くなっている。 『いっいつからいたんだ?』 『今来たばかりよ』 恥ずかしそうな祐一に香里はさらりと答える。 ───ふぅ、どうやらあの恥ずかしい台詞は聞かれて無いようだな。 祐一はそっと胸をなでおろした。 『あ、栞ったら、そんなにアイスばっかり食べてたら駄目でしょ。丸くなって相沢君に嫌われても知らないわよ〜』 冗談交じりに香里は妹の栞に言う。 『大丈夫よ。お姉ちゃん。だって祐一さんさっき私に言ってくれたもん』 ちょっと照れながら栞は香里に言った。 ───はっ!?何言ってるんだ!? そんな事言ったら・・・・ 『へ〜で、相沢君はなんて言ったの?』 ───ぐわっ!やっぱりか・・・ 『えっと・・・丸くなっても栞は可愛いって。・・・ぐわ〜こんな事言わせんな〜』 『あはは、二人ともあついね〜』 いつの間にか相席に座りイチゴサンデーを食べ終わっている名雪に言われる。 『ほんとね。相沢君、妹をよろしくね』 そう言うとイチゴサンデーを食べ終えた名雪とともに香里は店を出て行った。 ───名雪のイチゴサンデーの付き添いだったのか。 嫌なタイミングで来てくれて、まったく! 『ふぅ、とんだ災難だったな』 『ええ、そうですね。でも私は嬉しかったですよ』 『それだったらいいけど・・・俺は恥ずかしかったぞ』 祐一と栞はお互い恥ずかしいながらも幸せを実感しているようだった。 昼ご飯を食べた後、二人はお気に入りの公園へと向かった。 その公園ですることと言えば栞の趣味でもある『スケッチ』だ。 ───前に書いてもらった時よりもうまく描けるようになってるのか。 変にからかうとまた怒ってしまうからじっとしておくか。 栞がスケッチしている間、祐一は出来るだけ動かないようにしていた。 『出来ました』 『おっ、どれどれ』 祐一はスケッチブックを受け取ると栞が今描いてくれた自らの顔を見ていた。 ───誰だろう・・・。 って俺か!! 相変わらず香里も栞のスケッチのモデルにはなってやってないみたいだな。 『どうですか?』 栞が俺の心境など知らずに尋ねてくる。 核心を突いた質問だ。 『・・・良いんじゃないか。独創的で』 それこそ『下手』って言っているようなものだった。 『もういいです!!祐一さんはもう描きません!!』 やっぱり栞は怒っている。 今度は本気のようだ。 このままではまずいと祐一は 『気にするな。俺がいつでも練習相手になってやるから』 『・・・本当ですか?それだったら・・・許してあげます』 ───ふぅ、どうにか機嫌を直してくれたな。 『さてと、それじゃそろそろ暗くなってきたし家まで送るよ』 『え?良いんですか?』 『ああ』 そう言うと祐一は栞を家へと送っていた。 栞の家へと到着するとちょうど香里も帰宅してきたようだった。 『あら、奇遇ね。相沢君の疲れ様。栞おかえり』 『おう』 『ただいま、お姉ちゃん。それとおかえり』 ごく普通の挨拶を交わした三人。 そんな中香里が祐一に小声で話しかけてきた。 『祐一君、やっぱり栞のスケッチの相手したの?』 『ああ、したな。てか香里も栞のスケッチ相手になってやってくれよ』 『嫌よ。栞のスケッチ見ると自分自身の顔がわからなくなるのよ。だから・・・ね』 『確かにな。自分の顔ってこんなか〜ってちょっと遠くを見つめてしまうな』 『そっ、だからスケッチの相手は相沢君が適任よ』 いくら小声で話していても栞に聞こえていないわけがない。 『お姉ちゃんも祐一さんも嫌いです!』 『ごめんごめん。栞、それじゃ私はこれで。相沢君、また明日学校でね』 そう言うと足早に香里は家の中へと帰っていった。 ───全く栞のスケッチよりも先に香里の性格を更正させないとな。 と言うより今この状況からどう脱出するか。 栞は・・・やっぱり怒ってるよな。 祐一はチラッと栞を見てみる。 すると栞の目からは大粒の涙が流れている。 『え!?栞!?ごめん。悪かった。悪気があったわけじゃないんだ!』 祐一は焦って栞に謝罪している。 栞は泣きながら話し始めた。 『違いますぅ。祐一さんにもお姉ちゃんも悪気がないぐらいわかってます』 『え!?じゃあどうして?』 すると栞は多少落ち着いたらしく言葉を続ける。 『嬉しいんです。今この時が。こうやってお姉ちゃんや祐一さんと話したり出来る事が』 ───ああ、そうだな。俺も嬉しいよ。 『あの頃はお姉ちゃんには拒絶されていたし今、普通の姉妹のように過ごせる事、 それに祐一さんともずっと一緒にいられる事も』 祐一は思わず栞を抱きしめた。 『俺も栞と一緒にいられる事、嬉しいぞ』 『はい』 栞は嬉しそうにうなずく。 そんな栞に祐一はそっと優しくキスをする。 『これからはずっと一緒だ。時間もたっぷりある。 スケッチの練習も出来るしアイスもいっぱい食べられる。やりたい事が出来るんだ』 『はい、そうですね』 涙目になりながら頷く。 【やりたい事が出来る】という現実は栞にとっては幸せすぎるのだ。 『でもスケッチの練習はいっぱいやらないとな。俺が練習台になってやるから。 【自称】スケッチが得意じゃなくて【実際】にスケッチが得意にしてくれ』 祐一はそう言いながら栞の頭を優しく撫でてやる。 【自称】という祐一の言葉が気になったのか栞は複雑な心境だが何より【やりたい事が出来る】と言う事実で嬉しそうだ。 それも自分の心から愛する相手と一緒なのだから。 『はい。お願いします』 栞は照れながら嬉しそうに頷いた。 ───今、私達は一つの大きな奇跡の中にいる。 叶わないはずだった夢。 誰もが必ず見る夢。 憧れだけで終わってしまう事もある夢。 それでも私は夢を見続けました。 愛する人と一緒にいられる【二人の時間】が続く夢を。 それを叶えてくれたのは神様でしょうか。 『神の偉大な業(きせき)』何か意味ありげでカッコいいですよね。 祐一さんと私は一つの大きな奇跡の中に生きています。 今、この二人で同じ時間を過ごせるという奇跡の中に。 そしてその奇跡はこれからもずっと続くのです。 そう。永遠に・・・。 ─ Fin ─ <あとがき> 記念すべき初作品(爆) まえがきでも書いたとおり栞EDと雰囲気が似ていたけど どうか突っ込まないで下さいm(_ _)m