何でも願いを叶えてくれる「銀糸」というものがありました。それは吉備氏の一族に伝えられていました。あるとき、都は大変な日照りに襲われました。時の領主である久世氏は、ある家臣より「銀糸」の噂を耳にします。都を救うために、久世氏は吉備氏の一族の大井跡に「銀糸」の製作を依頼します。しかしながら、「銀糸」が願いをかなえる力を持つには、代償を要求するものでした。久世氏はそれを知りません。それでも、大井跡は民のためを思いあえて製作します。そして、大井跡は「銀糸」に力を与えます。自らの命を代償として。その力により雨を降らせることに成功し、都は救われました。しかし、「銀糸」は残りました。久世氏に「銀糸」を教えた家臣は「銀糸」の力を狙います。久世氏もまた、「銀糸」の人智を超える力を悪しき物と考え、秘密裏に自らの一族縁の神社へと奉納することにしました。が、預けた使者は何者かに襲われます。そして「銀糸」は行方不明に。
と、ここまでが銀色完全版の物語の始まりです。その後、久世氏自ら捜索に出ます。大井跡の姪である石切姫とともに。そして、「銀糸」は何とか見つかりました。しかし、直後刺客に襲われます。石切姫は切られ、致命傷を負います。久世氏は「銀糸」の力によって、姫を助けます。が、やはり代償は必要でした。久世氏は自らの命を失います。そして、石切の手によって「銀糸」は目的の神社に奉納されたのです。ただし、その正体が分からぬように、一本の弦として琴にして。
時代は移って、久世氏の子孫である頼人は神社に逗留することになります。「銀糸」などというものはすっかり忘れ去られています。かろうじて御伽噺として残るのみです。神社の琴がそうだということなど誰が知る由もありません。その神社には身寄りのない娘がいました。いまでは巫女として神社に暮らしています。名を狭霧といいました。その神社のある村は、なぜだか水害が絶えません。狭霧自身も水害によって両親を無くしています。狭霧の両親は、狭霧が幼いころに上流にある踏鞴場に取り残された人々を水害から助け出すのと引き換えに命を落とします。そして、今、狭霧は村のために大きな仕事をしようとしています。村の皆のために役に立つこと。それは狭霧の夢でありました。狭霧はそれを琴を弾きながら願っていました。そして、狭霧に与えられた仕事。それは、新しく作られた堤防の人柱。それを狭霧は全うします。頼人の目の前で。これが二章として語られます。
その後も「銀糸」はさまざまな時代を渡り歩きます。そして、知らずに願いをかけた人の願いを叶えてゆきます。が、かなう願いは非常にねじれた形で叶ってしまいます。そういった沢山の想いを銀色および銀色完全版は綴っています。
が、考えてみてください。「銀糸」は願いをねじれさせる事なしに、雨を降らせたのでしょうか?もしかしたら水害の原因となっている大雨は・・・。