ガシャン
真っ黒い塊となったモノが馬の上から転がり落ちる。
主を失った馬は困ったように駆け出して行った。
その方角には煙に包まれているフィン城が見える。
これで三人目。
私自身も肩で息をしている。
さすがに三人の相手は厳しかった。
何とか倒しはしたが、私自身も手傷を負った。
だが・・・
ガサッ
馬につけた荷袋の中を弄る。
差し入れた右の手に触れる物は一つだけだった。
「やはり・・・か」
私はそれを袋から取り出した。
白くにごったガラスの容器に緑色の液体が入っているのが、うっすらと透けて見える。
最後のハイポーションだ。
私の傷は、すぐにどうこうというものではない。
さすがに戦うには辛いが、どちらにせよ潮時だろう。
(うまく逃げ出せていると良いが・・・)
私はフィン城を仰ぎ見た。
篭手の下、握り締めた壜に押されて食い込む指輪を感じながら。
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フィンに辿りついたとき、既に城門からパラメキアの兵が突入を始めていた。
私が連れてきた供の兵は50人程。
カシュオーン戦を何とか生き延びた者達。
残念ながら、歴戦の強者というわけではない。
彼等のほとんどは、私を城から脱出させるために自らパラメキア軍に突進していった。
「せめて、フィンは」
そう私に言い残して。
したがって、ここにいるのはほとんどが若輩の新兵。
中には16程度の歳の者もいる。
それゆえに、彼らをこの戦場に放り込むのには心が痛む。
このまったく勝ち目のない戦には、私の私情が入っていないとは言い切れないのだ。
ヒルダ。
フィンの王女にして、愛しい人。
正式ではないが結婚も約した人。
カシュオーンが滅びた今となっては、私には望むべくもない人だ。
だが、だからと言って私の想いが変わるわけではない。
散るのを黙って見ていることはできない。
いや、命を落とすことができればまだ良い。
悪くすると、パラメキア軍の慰み物にされるかもしれない。
それはなんとしても避けなければいけない。
避けて欲しい。
むろん、フィンが勝利することが最良なのは当然だ。
しかし、この状況を見る限りそれは無理というものだろう。
「それにしても、あのフィンがこうも簡単に落ちるとは・・・」
森に囲まれた田舎国のカシュオーンと違って、フィンは軍事的にも大きな力を持っていたはずだ。
だからこそ、対パラメキア同盟の盟主ともなっていたのだが・・・。
いや、ともすればフィンの国内にパラメキアの勢力が既に入っていたのかもしれない。
あるいは裏切り者がいたか。
城門にはさしたる戦いの痕も見られない。
おそらく内側から空けられたのではないだろうか。
だとすれば、なおさら猶予はない。
フィンの城中も混乱しているはずだ。
(仕方あるまい・・・)
片手とはいえ、篭手を外して着けるには半時はかかってしまうだろう。
始めから取っておくべきだったと、いまさらながらに後悔した。
瞼を閉じて、肺の底まで息を吐く。
(ヒルダ・・・)
もう一度その人のことを想う。
そして、心を決めて目を開け振り返ると、私は声を上げた。
「我々はこれよりフィン城救援に向かう!残念ながら城門は既に開け放たれ、勝利はもはや求めるべきものではない」
「しかし、盟主たるフィンの力なくしては未来永劫この地はパラメキアの手に堕ちるであろう」
「勇敢なるカシュオーンの騎士諸君、フィンのため、世界のため、
そしてわれらがカシュオーンの未来のため、これが最後の戦いと心得よ!」
私に集まる瞳には、どれも強い意志が湛えられていた。
(ありがたい)
それを心から嬉しく思う。
「デビット、マーク!」
続いて私は二人の兵の名を呼んだ。
このなかで最も若い二人のはずだ。
「我々が城門前の敵を突破する。両名は伝令として城内に突入、
フィン軍と協力し進入した敵を撃破、フィン王に撤退をお勧めし、その後王に従え」
私のその言葉に、馬上で頭を垂れていた二人が顔を上げる。
その顔には不満がありありと現れていた。
「カシュオーンの第一皇子、スコットの命令である。異を唱えるはカシュオーン王家への叛乱と心得よ」
「しかし・・・」そう言いかける二人を制して言葉をかけた。
さらに、有無を言わせない目で二人を睨みつけた。
不満に思ってくれることを、心から喜びながら。
「はっ」
短い返事とともに二人が再び頭を下げるのを確認して、私は表情を崩す。
(城内の状況次第だが、囮よりはまだ生き残ることができるだろう)
「くれぐれも足手まといにはならぬようにな」
二人の傍に馬を寄せ、肩を叩く。
ヒルダのことには触れない。
そして、右手のリングのことにも。
「スコット様もご無事に」
「ああ」
二人の言葉に笑顔で答え、再びフィンの城に馬を向ける。
そして、右の腰に下がっている鞘から剣を引き抜いた。
カシュオーンに伝わるその剣は、ぼんやりと鈍い魔法の輝きを放つ。
その剣を頭上に振り上げた。
背後からの気配は緊張をはっきりと含んでいる。
「全軍、フィン城門を囲むパラメキア軍に向かって」
そこで一度言葉を切った。
キッ
その音が聞こえそうなぐらいに前方を見据え、大きく息を吸い込んで一旦止める。
「突撃!!」
振り下ろした剣の音と共に耳に飛び込んでくる、鬨の声を聞いた。
(すまんな・・・)
心の中で詫びながら。
そして私は、馬の腹を叩いた。
一人になっていた。
共に行動していた最後の一人が倒されてから、さほど時は経っていない。
やはり多勢に無勢だった。
だが、不意打ちも功を奏したのだろう。
あの二人を城内に突入させることに成功し、敵の勢力をこちらに向けさせることもできた。
これでヒルダ達が脱出に成功していてくれれば作戦としては成功だ。
フィンの城を見る。
「ヒルダ・・・」
今度は口にも出す。
そして黒騎士たちに追われたいた、先程の若者達が倒れている方を見る。
恐らくフィンの若者達だろう。
年のころは、16といったところだろうか。
城に送った二人と同じくらいだ。
私が目にしたのは、弓を持った娘が最後に倒れるところだった。
国の者達を守れなかったばかりか死地に連れ出した王家の者として、せめてもの罪滅ぼしとなるだろうか。
その考えが、ただの感傷と自己満足にしかならないであろうことはわかっている。
こんなことで許されることでもない。
それでもやはり、助けたいと思ったのだった。
「おい!しっかりしろ!」
馬から下りた私は、彼らを一人一人診て回る。
(何とか息はある・・・だが・・・)
酷い傷だった。
意識もない。
このまま放っておけば、間違いなく死にいたるだろう。
時間を置くこともなしに。
「やはり仕方ないか・・・」
私自身、先程の黒騎士達との戦いで槍を受けていた。
幸いにも突き立てられたのではなく、横薙ぎにされただけだったため、致命的な傷にはなっていない。
だが鎧の上からとはいっても、したたかに痛打された脇腹には鈍く痛みが広がっていた。
できれば私自信に使いたかった。
しかし、彼等を助けるには致し方ない。
四人で一本でも、何とか命を繋ぐくらいはできるだろう。
それに、これ以上戦場に留まったところで、もう大勢に影響することもできないだろう。
ならば、この者達を助けるのに使った方が有効というものだ。
私はハイポーションの栓を抜いて、彼らの口に液体を注ぎ込んだ。
(一人・・・いや、二人ならば何とか馬に乗せられるが・・・)
いかにすべきか。
残念だが、私だけでは四人もの人を運ぶことはできない。
彼らを見下ろしながら、そう考えていたところだった。
フィンの方向から、かすかに叫び声が聞こえた気がした。
それと金属と金属を撃ち合わせる音。
「まだ、いたか!!」
背筋が寒くなった。
投げ捨てた壜が草叢に撥ねる。
慌てて馬に駆け寄り、鞍に手を掛け体を持ち上げようと力を入れた。
「ぐっ」
不意に奔った激痛に呻いて、蹲るように私は地に膝を突いた。
力を抜けば、そうは痛まない。
しかし、左の脇腹にはじくじくと熟れた痛みが余韻として残っている。
(くっ・・・)
傷がここまで酷い物であることは予想していなかった。
現に、馬に乗ろうとするまでは疼く程度だったのだ。
(これでは・・・)
戦うのは無理そうだった。
だからと言って、徒歩では逃げるにもことを欠く。
意を決して、私はもう一度鞍に手をかけた。
今度は痛みを覚悟して体に力を込める。
「くぁっ・・・」
呻きながらも歯を食いしばり、右の脚を何とか鞍の向こう側へ持っていく。
「はっ・・・はぁ・・・」
額から流れ落ちる脂汗を感じながら、馬上で息を整える。
無理をしたためだろうか、痛みの引きはさっきよりも鈍くなっているようだった。
(・・・すまない)
とてもではないが戦えない。
戦ったとしても、果たしてどれだけ抗えるかさえも怪しい。
戦いの音は随分と近づいてきている。
四人と、そして音の先で戦っている者に心の内で詫びて、鐙を打とうとした。
だが、木々の向こうに見え隠れする姿に、その足は止まった。
「カシュオーンの冑・・・だと・・・?」
幼い頃から毎日見つづけているものだ。
間違えようもない。
その姿は二つ。
逃げ惑っている者が一人と、その者を逃がそうと必死に敵を食い止めているものが一人。
はっきりとはしないが、敵の姿も馬に乗っていることまでは確認できる。
戦況は極めて不利、というよりも狩を楽しまれているような感がある。
それはそうだろう。
私に付き従った親衛隊以外は、とてもではないが帝国兵とまともにやりあえるレベルではない。
しかも、敵が騎馬であるということは、黒騎士である可能性が高い。
まともに黒騎士と戦えるのは、カシュオーン騎士団の中でも一目おかれる者達だけのはずだ。
(どう・・・する?)
まだ気が付かれてはいない。
このまま逃げてしまうことも可能だ。
むろんその場合、彼等を見捨てることになる。
だが正直な話、助けられるかといえば微妙なのは確かなところだ。
考えてはいけないことだということはわかっている。
そして、助けたいとも思う。
唯一かもしれない生き残りなのだ。
(だが・・・)
「デビッド!!」
「マーク、いいから逃げろ!」
鎧の下に回した意識を引き戻す声が、迷いを掻き消した。
声と同時に剣を抜き、私は弾けるように馬を走る。
木々の向こうに近づく敵は、やはり黒騎士。
「かあぁぁぁあ!」
痛みに負けないようにと気合の声を上げ、その姿に向け突き進む。
「スコット様!?」
そして、二人の驚きの声を無視して黒騎士と切り結ぶ。
相手の槍を払うたび、振るった剣を受けられるたび、相手の甲冑に剣を打ち付けるたびに脇腹に激痛が走る。
(くあっ・・・)
そのたびに意識がどこかへ行きそうになる。
それは敵にも気づかれたらしい。
次第に敵の攻撃が左側へ集まり始めた。
(駄目か?)
そう思ったときだった。
突如として、横からの一閃が黒騎士を襲った。
デビッドだった。
大してダメージを与えたようには見えない。
しかし僅かに黒騎士が怯んだ。
私はそこに渾身の力を込めた一撃を叩きこんだ。
鈍い音が響き渡るのと同時に、脇腹には激痛が走る。
あまりの痛みに、私の手は黒騎士の兜の下に食い込んだ剣の柄を離す。
鎧が大地に叩きつけられるけたたましい音とともに、黒騎士に突き刺さったまま剣は地上に落ちた。
「スコット様!ご無事で」
「ああ。助かった。礼を言う。そなた達も無事で何よりだ」
「いえ、そんなお言葉もったいなく。私達こそスコット様のお手を煩わせまして申し訳ございません」
声の方からはデビッドが近づいて来た。
剣を収めたデビッドの鎧も、あちこち傷だらけだった。
「よい。それよりも、そなた達は何故にここに?」
ヒルダ達とともに逃がしたはずの二人がいることに不安を覚える。
「はっ。申し遅れて申し訳ございません」
デビッドは畏まって頭を下げる。
「フィン王始めヒルダ王女など、フィン王国の主要な方々は城から脱出、辺境のアルテアへと落ち延びてございます」
戻ってきたマークが、肩を押さえながらそう答える。
「そうか。皆無事か?」
アルテア・・・その街はフィンから南にいくらか離れた場所にあったと記憶している。
その言葉に、ひとまず胸を撫で下ろした。
「それが・・・」
続く言葉にマークが詰まった。
(まさか・・・)
再びヒルダの身が心配になる。
「パラメキアの包囲を突破される際に、フィン王が矢を受けられまして・・・」
「重い傷か?」
「傷自体はたいしたことがないそうなのですが、激しく御気を落とされたらしく床に伏せられ・・・」
「宮廷魔導師のミンウ様も、さほどは持たないだろうと」
マークの言葉に、デビッドが重々しく付け加えた。
「そうか・・・。して?今、指揮はどなたが?」
「ヒルダ王女にございます」
デビッドのはっきりとした声が、その名を告げる。
「王女が?」
思わず私は聞き返した。
「はい。ミンウさまの補佐の元、全権を取り仕切っておられます」
「そうか・・・王女が・・・」
「申し訳ございません。我等の力が足りなかったばかりに」
マークの肩を抑えながら項垂れるその姿は痛々しい。
「いや、そなた・・・と呼ぶべきではないな。貴公らは十分に働いてくれた。礼を言う」
「とんでもございません!!」
「お顔を上げて下さいませ!スコット様!」
二人の声が重なる。
「そうはいかぬ。ここへは囮となってくれたのであろう?」
「それは・・・」
言い澱むマークが、私の言葉が正しいことを物語る。
「本来であれば十分な褒美を与え、取り立ててやりたいところなのだが、今の私にできるのはこれが精一杯なのだ」
「勿体なきお言葉、身に余る光栄にございます」
「末代までの誇りとさせていただきたく存知ます」
もう一度二人の声が重なった。
「そうか・・・。ならば、もう一つ頼まれてはくれぬか?」
「は。何なりと」
デビッドが答える。
「もう少し向こうに、4人の若者が倒れている。男が三人に女が一人だ」
「フィンの者でしょうか?」
今度は、マークが聞き返してくる。
「恐らくは。先ほど黒騎士に追われているのを助けたのだ」
「では、息は?」
「ああ。もっとも、意識がないので一人ではどうやって連れて行こうかと考えあぐねていた」
「では・・・」
「そうだ。連れて行くのを手伝って・・・」
そう言いかけたときだった。
ドスッと矢が足元に突き刺さる音と、ヒュッという風切音が同時に聞こえた。
三人の間に緊張が走る。
矢の飛んできた方向を見るが、まだ敵の姿は無い。
だが、草木を掻き分けるような音が近づいてきている。
しかも蹄の音と共にだ。
(また黒騎士・・・か?)
まずい。
私の剣は、大地に横たわる黒騎士の体に食い込んだままだ。
今から拾うのでは間に合わない。
いや、そんなこと以前に戦っても勝てるかどうか・・・。
やはり、先程から鎧の下の脇腹は鈍い痛みを湛えている。
だが、
(逃げるには近すぎる・・・か・・・)
既に矢の的になっているくらいなのだ。
逃げ出したところで、振り切れるものではないだろう。
しかも、ただでさえ私とマークは手負いだ。
馬も劣勢の戦い続きで疲れている。
逃げる間に追っ手が増えることも考えられる。
恐らくは態勢が整っていないであろうアルテアに、パラメキアの軍勢を案内するわけにはいかない。
それに、先ほどの四人のこともある。
(・・・元より覚悟の上・・・か・・・)
「マーク、デビッド!」
抑えた声で二人の名を呼ぶ。
「貴公らは四人を連れて、疾くアルテアへ」
「は?」
「私が引きつける。マーク、貴公の剣を貸せ。もう振るうことはできまい」
「し、しかし・・・」
マークが返答につまる。
「スコットさまこそ逃げ下さい!」
デビッドも異を唱えた。
「残念だが、貴公らでは役不足だ。滅びたとはいえカシュオーン皇子の私の首なれば、囮としては十分であろう」
「ですが・・・」
デビッドはそれでも納得ができないといった感じだった。
「何度言わせるか!カシュオーン第一皇子、スコットの言であるぞ!」
だから、私は二人に向けてもう一度そう言った。
そういって二人の目を見据える。
フィンの城に臨んでしたように。
ただし、今度は微笑を顔にして。
「御武運を!」
震える言葉と共に差し出された柄を、しっかりと握り締めた。
そして、私は黙って頷いた。
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気がついたときには、ベッドの上だった。
二人と別れた後、無我夢中で戦った。そして逃げた。
自分がどっちに向かっているのかもわからずに、ひたすらに馬を駆った。
足を引き擦って歩いた。
最後の記憶は、薄青色の甲冑に剣を叩きつけたこと。
それとおぼろげではあるが、何者かの背中にいたよう感覚。
しかし、今のこの状況に至るまでの状況は思い出せない。
恐らくは骨がやられたことによる熱のために、薄く開いた瞼の隙間から見える天井も白くぼやけている。
(どこ・・・だ・・・?)
しかし、はっきりとしない感覚の中にも感じられる湿気と黴臭さが、ここが地下であることを物語っていた。
体は、恐らく痛い。
いや、痛いと感じるべきなのだろう。
だが私の体は、その痛みをすっかり受け入れてしまっているようだった。
黴臭さを感じることができるのが不思議だった。
全身としての感覚は虚ろである。
しかし、どうやら武具は外されているらしかった。
もちろん誰がやったのかはわからない。
だが、何者かが私をここに連れてきたというのは確かなのだろう。
(目的・・・は?)
そんなことを考えているうちに、私の意識は再び暗転した。
そして、次に意識が戻ってきたとき。
目を開けると、そこには私を覗き込む顔があった。
(ここまでか・・・)
一瞬そうも考えたが、その三人は帝国兵のようには見えなかった。
一人は娘のように見えた。
「・・・じ。・・・スコット王子!」
そして、どちらだかはわからないが、男の声が私を呼ぶ。
だが、私は目を閉じた。
目を閉じなければならなかった。
私に残された力は、私が彼らも姿を瞳に捉えることを許さなかった。
だが、そのとき私は感じたのだ。
私に残された最後の輝きによって。
右手の薬指、金属の心地よい冷たさを。
(残っている・・・)
カシュオーンの慣わしに従って、王である父が生まれたばかりの私に贈ってくれた指輪。
いつの日か、人生を共にする人に預けるために贈られた指輪が。
理由はわからない。
なぜそれが盗られずに残っていたのか。
私に再び輝きが宿ったのか。
だが私は、瞼を持ち上げることができた。
動かなくなっていた右手から、指輪を外すことができた。
その左腕を掲げることができた。
「やはり伝えないでくれ」
その言葉を残すことができた。
そして暗闇に包まれる直前、気がつくことができた。
彼等であるということを。