1年間の経過その2 いよいよ大根作り
◎土づくりをしよう
・たい肥、化学肥料、苦土石灰を手に入れよう(20分)
子どもたちからは「全部ホームアシストに行けば売っている」という声が出た。
確かにそれが一番簡単な入手方法である。
しかし、今回はあえて『全部錦田でそろえる』という条件を付けた。
子どもたちは必死になって自分たちの家の周りの店を思い浮かべていた。
「そうだ。M君の家の近くで売っていたよ。」
「お店じゃないけど、お金を入れて買えるところがあった。」
「一袋300円ぐらいだったかな。」
「あの袋なら3人ぐらいで買いに行けば持ってこれる。」
教師「農家の人もあそこの無人販売で買っているのかな?」
「そうだ。近くの農協でも売っているかもしれない。」
「農家の人が買うんだから、安くて良いのかもしれないよ。」
「堆肥だけじゃなくて、化学肥料や苦土石灰も売っているかもしれない。」
「私が帰りに聞いてきてあげる。」
「種はこの前ひのやに売っていたから買ってくるね。」
その日の帰りに早速農協へ行き調べてきた。
堆肥はちょうど良い大きさがあったが、化学肥料が20kg入りで多すぎた。
すると、「隣のおじいちゃんが少しぐらいなら分けてくれるって言っていた。」という子がいた。
これまで何度も話を聞きに行く中で、おじいさんが声を掛けてくれたらしい。
地域の人たちに気にも掛けてもらっていることに気づき、いっそう意識が高まった。
※教師に頼らず自分たちでやろうという意欲が見られるようになってきた
・話が進んでいくにつれて、子どもたちの夢はどんどん広がっていった。
「先生、たくあんを漬けるときには、高畑さんの大根と一緒に漬けて、味比べをしようよ。」
「おいしいたくあんができたら、お母さん達に売っちゃおう。」
「そのお金でまた種とか、肥料とか買ったら、たくさんできるね。」
「校長先生達にも食べさせたいね。」
「おじいちゃん達なら喜んでくれるかな。」
これらの反応を見ると、『大根・たくあん』をテーマにすることで、様々な活動の広がりができると感じた。
・土作り
本来ならば畑を借りて栽培すればいいのだが、今回は堆肥のビニール袋を使って栽培することにした。
広い畑でできれば立派な大根ができるかも知れないが、あえてビニール袋を利用したのは、大根を身近な物にしたかったからである。
ビニール袋で栽培をすれば、ベランダに置くことができ、そうすることで毎日に世話や観察が容易になるからである。
環境が整うならば、子どもたちの生活の範囲の中で畑が確保できればと思う。
20キロの土を運動場から運ぶのは子どもたちにとって困難なため、教室での作業になった。
教室にグランドシートを敷いて、班ごとで土作りを行った。
細かな指示はせずに、班ごとで手順を確認させてから始めた。
多目的室に行き確かめたり、ノートを見直したりしながら、段取りをくんでいた。
自然と堆肥を紙コップで計り、6つの班に分ける子が出てきたり、進んで片付けの掃除を始める子が出てきたりした。
本来外でやるべき作業を教室内でやったため、予想以上に汚れてしまい、片付けに時間がかかってしまった。
◎種をまこう(15分 理科)
◎大根の世話をする。
・数日で芽が出た。子ども達は毎日うれしそうに水をやったり、観察をしたりしていた。
とはいえ、茎はまだ細く、今にも折れそうな感じだった。
3連休の間、水やりもしなかったので心配だったが、わずか3日の間でぐっと成長をした様子に感動の声が挙がっていた。
・給食中にベランダにモンシロチョウが飛んできた。
「すごい。こんな所まで飛んでくるんだ。」
「ここに大根があるのってどうしてわかったのかなぁ。」
「チョウっておいしい野菜に集まってくるんだよね。僕らの大根がおいしいのかなぁ。」
「チョウが卵を産んじゃったら食べられちゃうね。」
と話していた。
子ども達の大根への思い入れが感じられた。
また、理科の学習「モンシロチョウを育てよう」との関連が見られた。
・秋の嵐の日、子どもたちはベランダの窓から大根の様子を心配そうに見ていた。
次の日の日記には
「今日はすごい雨と風でした。せっかく大きくなった大根がとばされないかと心配でした。大根ってすごく強いんだぁと思った。農家の人たちはもっと心配だろうなぁ。」と書かれていた。
子どもたちは子どもたちなりに、大根に愛着を持っているようである。
植物の生長を通して、生命の大切さを感じることが出来た。
また、自分たちの心配や苦労から、農家の人の大変さに気づくことができた。