五時五分と五時六分の間 



東の空を見れば

紺が紫に

紫が藤色に

そして一瞬橙色に光り

穏やかな青が

天上から侵食してくる

デジタル時計は一瞬にして

一分を進めてしまうが

目の前の朝は

連綿と連なる時の粒子に乗って

穏やかにやってくる



西の空を見れば

ゆるくなった青に浮かぶ雲が

黄金の光を反射する仕事を終え

薄茜色を楽しむ間もなく

群青のカーテンは

せっかちな星を一つ二つ抱いてゆく

家族の帰りを待つ食卓の

デジタル時計の数字は

微動だにしないが

家路をたどる人は

連綿と連なる時の粒子に乗って

確実に玄関に近づいてくれている



当たり前の幸せは

デジタル時計のように

突然にやってくるのではなく

時の流れと同様に

連綿と連なる時の粒子に乗って

薄いベールを繰り返し積み重ねた

温かな毛布のように

そっと肩に降りかかる


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