戦争V
   灯り一つの部屋で
 

僕は右の頬で 君の呼吸を数える

僕は睫毛で 君の産毛を数える
 

僕は固めた瞼で 君の瞬きを数える

僕は寝かせた指先で 君の鼓動を数える
 

僕は人差し指の根で 君の指の力を数える

僕は煙草の代わりの珈琲で 君の日齢を数える
 

僕は夢現の中で 君の泣き声は数えない

僕は彼女との語らいの中で 君のこれからの幸せを数える
 

そろそろ 僕は父親と呼ばれ始める

次の春 僕を君は何と呼んでいるのだろう
 

触れる前に 壊れるな

戦争という名のもとに

                    掲載 『文芸やいづ』

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