蛍
小さな箱に閉じこめられ
点滅する光
誰かのスウィッチングで
下降し、人を壊してゆく
湾岸という水辺を舞う
無数の緑光が
電波になり 映像になって
家族の団欒の風景の一部になる
水辺の生き物を
図鑑でしか見たことのない弟は
蛍だね、と
空爆を誤認する
これは戦争だよ、と
家族が笑う
笑いに気づかず
笑い続ける
蛍が舞うためには
私たちの大量の死が必要なのだと
叫べないかわになは
テレビに映らない
平和を守るため
自然を守るため
人は
この星の生き物をデザインする
「文芸やいづ」掲載
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