思い出は壊れない
そう わかっていても
まるで心の中で行われているように
建て替えのための解体が進んでいく
自分の人生の半分を費やして建てた家が消え
その空間に
あとの半分を費やして育てた子供たちが
また
その人生の半分を費やして家を建てる
折れる柱
割れる窓
舞うかのように宙を漂い
斜めに落ちていく障子
いっそ こなごなになってくれればいいのに
どれも中途半端な形を残したまま
今日の作業は終わり
陽が暮れていく
掲載 『文芸やいづ』