薫る
木も草も
太陽に精一杯自己主張し
他を押しのけたものだけが生き残る
心なごませる花さえも
何の迷いもなく
そうして生きている
同じ星に生きて
同じ営みに命を預けているはずなのに
生きることとやさしさの間で
人だけが躊躇しながら今日を送る
でも
せっかく人に生まれてきたのだから
一度くらいは主役になりたいと思うにしても
やさしさの方に命を傾け
風に薫るくらいに
雨に薫るくらいに
そっと
けれど持てる力のすべてで
誰かの笑顔のために
生きていたい
掲載『文芸やいづ』第8号
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