みさき


春の風が強すぎて

もう 振り向けなくなる

外の海の波音が

東へと流れてゆく

穏やかな入り江の青い色と

みさきは 海を二つに分ける

けれど 海は ひとつ

流れる時も ひとつ

やがて生まれる君の名前を

こうして考えていた 三月


遠く過ぎる船影が

もう 形をくずして

西の雲が知らぬ間に

夕日を隠していた

夕凪が来るはず いつもならば

遠くの声が聞こえる時間

けれど 風は やまず

流れる時も やまず

昨日の夢と 明日の間に

とどまることなどない 三月


満ちゆく海 溢れる命

君が 今 この世界のひとつになる

やがて 大きく育った君に

話そう このみさきからみえるものを



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