もう少し生きてから
 

ほどけない

昨日みつけた小さな箱

ほこりをふいたら

見おぼえのある くり返しの模様

かたくしばった ひも
 

ほどけない

何を入れたのだったっけ

頭も心も応えない

たしか ちょっとつらくて

でも 捨てられなくて
 

ほどけない

自分が傷ついたのかしら

誰かを傷つけたのかしら

どちらにしても その人と

多分 それから 会ってはいない
 

ほどけない

いつか この箱をあけても

心の耐えられる日が来ると

きっと そう思って

この箱に入れたのだろう
 

ほどけない

その時から 自分はどれだけ

強くなったというのだろう

強くなる、というのは この箱のように

汚れることかもしれない

切ってしまえば それですむ

はさみがあるから かんたんに

きっと そう思って

何度切ろうとしたのだろう
 

ほどけない

まだ もう少し生きてから
 

ほどけない

もう少し生きてから

                    掲載 『文芸やいづ』

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