上り坂を
息がきれる
汗がしたたる
膝があがらない
何度も躓きかけて
足下ばかりを見ては
歩く理由を探している
どこまでも
続く上り坂は
苦しみばかりを
自分に用意し続け
あきらめてしまえと
時には甘く語りかける
がんばれと
呼びかける声
ふと横を見れば
汗にまみれた顔で
それでも笑いながら
友が傍らに立っている
振り向けば
人生の風景が
思わぬ美しさで
確かな道だったと
無言のメッセージを
送り続けてくれていた
見上げれば
青空が広がる
頂は見えないが
確かにそこにある
息を深く吸い込めば
緑の追い風が体を押す
息を整えた
汗は止まった
膝をあげて見る
何度か屈伸をして
足下の確かさを感じ
歩く理由を心に奏でた
掲載 『文芸やいづ』
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