「静岡県つぼみの会」初代会長からみなさんへ

静岡県つぼみの会の役割


 先日、数年ぶりで「静岡県つぼみの会総会」に出席した。議事も進み、その他の議題で交わされる若いお母さん方のエネルギーに、ふと、つぼみの会の発足当時がオーバーラップしてしまった。

 そもそも今回の総会出席は、息子の眼底出血にともなう光凝固手術の体験を、ぜひとも会員の皆さんに伝えなければ・・・との思いがあったからだったが、わたしの生活から「静岡県つぼみの会」は永く遠ざかっていたのも事実であった。



 平成2年11月、静岡県にも「小児糖尿病患者家族の会」(静岡県つぼみの会)が発足した。

 当時ソーシャルワーカーとしてご活躍中のUさん、看護婦として医療の現場から患者会の必要性を訴えられたMさんのお二人にサポートされての出来事だったが、発足前に費やされたエネルギーは膨大な物であった。月に1回の準備会議は、静岡の西の端から東の端までに住む有志が手弁当一つで、1年の間続けられた。

 このエネルギーを支えた物は偏に当時の「小児糖尿病」を取り囲む劣悪な環境への挑戦であった。

 県内には発症例も少なく、医療関係者さえも、適切な対処に右往左往する時代であった。また、就学児童にとっても「おやつ」への偏見、「自己注射」への好奇の目、低血糖発作への対処等、不条理きわまりない環境との戦いが日々の時代であった。

 会の発足と共に、多くの親達の間を会話が渦巻いた。それは、堰を切った水の勢いで静岡県のすみずみにまで広がっていった。

 誰が云うでもなく、「静岡県つぼみの会」は、次の目標を定め行動を開始した。「小児慢性特定疾患」の受給年齢の引き下げ、また「小児糖尿病」の「特定疾患」への指定、「特別児童扶養手当」の受給へ向けての啓蒙運動等、社会制度の改善、全国つぼみの会への参加による最新情報の共有と活用等々。

 多忙ではあったが確実に「静岡県つぼみの会」の成長を感じたのもこの頃であったと思う。




 全国に「サマーキャンプ」はたくさん開催されますが、患児も、親も、栄養士も、ボランティアも、そしてお医者さんまでもが会費を払って参加してくださるキャンプは、静岡県が全国で唯一です。




 これほどの恩恵を感じてきた「静岡県つぼみの会」であったが、息子が社会へ出たのをきっかけに、いつ知れずとなく「遠い所」へおいてしまった。会長職を辞した時期とも重なったこともあるが、息子の自立にかこつけた自己責任の放棄と反省している。「小児糖尿病」と知った時点から、ある種の覚悟はしていたつもりであったが、親の方が根気がない。恥ずかしい限りだ。

 子供が社会に出ようが、自立をしようが、20歳になろうが、結婚しようが、子供ができようが、小児糖尿病に向き合う姿勢を変えてはいけない。子供は、その一生が「小児糖尿病」との付き合いなのだ。親にできる事など、根本的にはないのかもしれないが、根負けしてはいけない。

 息子が不調を訴えてきた。レーザーによる光凝固手術が知識の中にあった。実際に手術を重ねるにつれ、日を追うに連れ、、私の知識と現実が離反し始める。この原稿をしたためた日に、息子はなくした視力を回復すべく出欠の除去手術に向かった。




 会は何もしてくれないかもしれません。でも、あなたが参加し、他人の意見に耳を傾け、ある時は納得し、ある時は疑問を感じる。そして、かざらなくてもいい、小さくてもいい、意見を伝えようとした時、「静岡県つぼみの会」は確実に、あなたの中に存在するのだと思います。

        平成15年1月6日  「静岡県つぼみの会」初代会長 O


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