このレースには、勝ちも負けもない
そう気づいてから
沿道の人たちの顔が見えてきた
声ばかりでなく言葉も聞こえてきた
一期一会にすらならない人が私に
がんばってと声をかける
踵と膝の痛みは引かない
呼吸のリズムがずれていき
また、二つ吐くところからやりなおす
快汗と冷汗が混じって
顔にへばりつき、耳の後ろを落ちる
こんな状態なのに
なんてことだろう
もう私はレースを楽しんでいる
このレースには、勝ちも負けもない
そう気づいてから
先に行こうとするライバルの背中さえ
頼もしく見えたりする
このレースには、勝ちも負けもない
そう気づいたのが
人生の折り返し付近で
よかった