夏の名残りの
蝉を拾う
土の中の眠りから覚めた
蝉の七日間の生涯を
人は憐れみをこめて語る
そんな人の人生七十年も
樹齢七百年の大樹にしてみれば
あまりにせわしなく
その古木がゆったりと過ごした七百年でさえ
この星の年齢から見れば
ほんの一瞬にすぎない
時にはそれぞれ自分のものさしで
思い切り泣き
笑えばいい
時には
別のものさしをあてて
落ち着いて考えたりする
それができるから
人には
愛が生まれた
掲載 静岡新聞 99年1月3日