詩が死んでしまう前に


詩が死んでしまう前に

あなたに問う

誰が言葉を殺そうとするのか



どんな言葉も流れてゆく

香りを持って生まれ出たものが

やがて匂いを以って駆逐され

文字の牢の中

紙の風化と共に消えてゆく



唇から発する

フェロモンを伴った言葉だけが

生き物としての人に入り

生き逝く道を豊かにした頃を

あなたは知っているか



鼓動の何万倍もの速さで震え

耳から頭蓋に達する言葉だけが

真理として人に入り

生き逝く道を支えていた頃を

あなたは知っているか



詩が死んでしまう前に

あなたに問う

なぜ言葉を選ぶ自信を失ったのか

誰が言葉を殺そうとするのか


         「文芸やいづ」掲載

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